寒い日と笑顔

 寒さが本格的になってきたころ、審神者は盆にふたり分の飲み物を乗せて、鶴丸の部屋をおとずれた。
「鶴丸、いますか?」
「お、姫さんか?」
 部屋に入ると、鶴丸がひとりで本を読んでいた。審神者は隣に座って、マグカップをひとつ差し出す。
「あたたかい飲み物を作ったんです。よければどうぞ」
「おお、こいつはありがたい!」
 鶴丸はマグカップを受け取って、こくりとひと口飲んだ。
「これは……卵酒か? けど酒の匂いがしないな」
「ええ、エッグノックっていう、お酒の入っていない卵酒です」
 審神者もエッグノックをひと口飲んで、ほっと息をつく。
「こいつはうまいな……どうやって作るんだ? 」
「卵と砂糖を混ぜて、牛乳で伸ばしてから鍋で温めるんです。その後に、スパイスを入れて完成です」
「手が込んでるな! わざわざ作ってくれたのか」
「貴方と一緒に飲みたくて。おばあちゃんがクリスマスによく作ってくれたんですよ」
 エッグノックを飲むと、とろりとした優しい味わいにスパイスの香りが鼻を刺激する。
 鶴丸に寄りかかってそれを楽しんでいると、彼がそっと肩を抱き寄せてきた。
「姫さん、寒くないか?」
「今はあたたかいですよ。鶴丸もいますし」
「身体を冷やすのはよくないからな。ちゃんと厚着して、あったかくしてくれよ」
「ふふ、ありがとうございます。鶴丸も、風邪を引かないでくださいね?」
「俺はいつだって元気いっぱいだからな、風邪とは無縁だぜ」
「でもこんな寒い中で、お庭に穴を掘っていたら流石に風邪を引きますよ?」
「うっ……まあ、確かに昨日は少し熱中しすぎたところはあるが……」
「悪戯はほどほどにしてくださいね?」
「姫さん、驚きがない日常なんてつまらないだろう? 悪戯じゃない、驚きを提供してるのさ」
「山姥切の布と長義のストールをこっそり交換して、この前とても怒られていましたよね?」
「あれはな……本当に長義が怖かった……」
 遠い目をする鶴丸に、思わず笑みが零れる。困ったところではあるけれども、悪戯好きも彼の愛おしい一面に他ならない。
「ふふ、鶴丸は本当に面白いですね」
「おう、姫さんを毎日笑わせるのが俺の目標だからな!」
「そうなんですか?」
「きみの笑顔は毎日見たって飽きないさ」
「私も、鶴丸の笑顔は毎日見たいです」
「なら、お互いに笑わせあっていこうぜ、姫さん」
 鶴丸は微笑んで、そっと審神者の頬を撫でる。芸術作品のような笑みに魅せられて、審神者は微笑んで彼に寄り添った。
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