【中編】あなたとこれからを
「……はあ…………」
審神者は実の父からのメッセージに、ひとつため息を吐いた。
父と母は、最近審神者を辞めて家に帰ってこいと言うのだ。
だが、彼らは審神者を心配してそう言っているのではない。また審神者を理想の婿と結婚させたいのだ。
「……悲しいな……」
父と母は本当は息子が欲しかった。だから、審神者を社会的地位の高い男に嫁がせ、息子を得ようという算段だ。
両親が自分をそういった道具としてしか扱っていないことにはもう慣れてしまった。けれど──それでも寂しいし、悲しい。
「おばあちゃん……」
きっと祖母が生きてくれていたら、審神者の味方になってくれたのに。
「よう姫さん、どうかしたか?」
「きゃあっ!? 鶴丸!?」
振り返ると、そこには鶴丸がいた。
「今は驚かせるつもりなかったんだが……」
「ご、ごめんなさい。少し考え事をしていて……」
「……嫌なことか?」
「……ええ。わかりますか? よければあなたに相談したいのですが、本丸では話しづらくて……」
審神者を辞めるかもしれない、なんて誰か聞かれたら大変だ。
「……そうだ鶴丸、お墓参りに付き合ってくれませんか?」
「ん、きみのおばあさまのか?」
「はい。おばあちゃんに会いたくなったので」
「もちろんいいぜ。着替えるから少し待っててくれ」
今日も空は澄み渡っている。けれど──胸の内は曇りのままだった。
「おばあちゃん、来ましたよ」
墓石に水をかけながら語りかける。両親はあまり祖母の墓に来ていないようだった。
「それで姫さん、考えごとってなんだ?」
「……実は、両親から審神者を辞めるようにと言われているんです」
「……は?」
「あの人たちは──きっと、私を再婚させようとしています。自分の理想の婿を手に入れるために」
「…………」
「鶴丸には前に言いましたよね、元夫とは見合い結婚だったと。あれは両親の希望だったんです」
祖母はこの話を聞いてどう思うだろうか。きっと憤慨したに違いない。可愛い孫をなんだと思っているのだ──と。
「今は断り続けているのですが、そのうち本丸に乗り込んできそうで……悩んでるのはそれだったんです」
「……嫌、だな」
鶴丸は審神者を抱き寄せ、腕の中に閉じ込めた。
「俺の姫さんが他の誰かと結婚するなんて、考えただけではらわた煮えくり返る」
鶴丸の瞳は──怒りに染まっていた。
「きみはあんな手酷い目にあったんだぞ。夜も眠れないくらい怖い思いをしたんだ。それを……理想の婿が欲しいだって? ふざけているにも程がある」
鶴丸は審神者が心の傷を抱えていた時、傍で見守ってくれていた。審神者の苦しみを──一番近くで見てきたのだ。
「……鶴丸、私を守ってくれますか? 私、あなたと生きたいんです……」
「もちろん。姫さんを守るのは俺の役目だ」
そっと、唇が重なる。風がさわりと凪いで、祖母の負けないで、という声が聞こえた気がした。
審神者は実の父からのメッセージに、ひとつため息を吐いた。
父と母は、最近審神者を辞めて家に帰ってこいと言うのだ。
だが、彼らは審神者を心配してそう言っているのではない。また審神者を理想の婿と結婚させたいのだ。
「……悲しいな……」
父と母は本当は息子が欲しかった。だから、審神者を社会的地位の高い男に嫁がせ、息子を得ようという算段だ。
両親が自分をそういった道具としてしか扱っていないことにはもう慣れてしまった。けれど──それでも寂しいし、悲しい。
「おばあちゃん……」
きっと祖母が生きてくれていたら、審神者の味方になってくれたのに。
「よう姫さん、どうかしたか?」
「きゃあっ!? 鶴丸!?」
振り返ると、そこには鶴丸がいた。
「今は驚かせるつもりなかったんだが……」
「ご、ごめんなさい。少し考え事をしていて……」
「……嫌なことか?」
「……ええ。わかりますか? よければあなたに相談したいのですが、本丸では話しづらくて……」
審神者を辞めるかもしれない、なんて誰か聞かれたら大変だ。
「……そうだ鶴丸、お墓参りに付き合ってくれませんか?」
「ん、きみのおばあさまのか?」
「はい。おばあちゃんに会いたくなったので」
「もちろんいいぜ。着替えるから少し待っててくれ」
今日も空は澄み渡っている。けれど──胸の内は曇りのままだった。
「おばあちゃん、来ましたよ」
墓石に水をかけながら語りかける。両親はあまり祖母の墓に来ていないようだった。
「それで姫さん、考えごとってなんだ?」
「……実は、両親から審神者を辞めるようにと言われているんです」
「……は?」
「あの人たちは──きっと、私を再婚させようとしています。自分の理想の婿を手に入れるために」
「…………」
「鶴丸には前に言いましたよね、元夫とは見合い結婚だったと。あれは両親の希望だったんです」
祖母はこの話を聞いてどう思うだろうか。きっと憤慨したに違いない。可愛い孫をなんだと思っているのだ──と。
「今は断り続けているのですが、そのうち本丸に乗り込んできそうで……悩んでるのはそれだったんです」
「……嫌、だな」
鶴丸は審神者を抱き寄せ、腕の中に閉じ込めた。
「俺の姫さんが他の誰かと結婚するなんて、考えただけではらわた煮えくり返る」
鶴丸の瞳は──怒りに染まっていた。
「きみはあんな手酷い目にあったんだぞ。夜も眠れないくらい怖い思いをしたんだ。それを……理想の婿が欲しいだって? ふざけているにも程がある」
鶴丸は審神者が心の傷を抱えていた時、傍で見守ってくれていた。審神者の苦しみを──一番近くで見てきたのだ。
「……鶴丸、私を守ってくれますか? 私、あなたと生きたいんです……」
「もちろん。姫さんを守るのは俺の役目だ」
そっと、唇が重なる。風がさわりと凪いで、祖母の負けないで、という声が聞こえた気がした。
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