うさぎのような彼女
ぎゅうううう、と強く身体を抱き締められる。拘束されている後家は、どうしたものかと思いながらそっと審神者の頭を撫でた。
「だいじょーぶ?」
「無理……」
審神者はぐずぐずと鼻を啜っている。彼女が泣いている原因は、夕食後に他の刀たちが見ていたテレビ番組だった。
有名なホラー映画の放送があったそうで、審神者はちょうど一番怖いシーンにたまたま出くわしてしまったらしい。
涙目で部屋に来たときは、何かあったのかとひどく心配をした。
「すごく怖かった……」
「作り物なのに?」
「作り物だから、すっごく怖くできちゃうじゃない!」
審神者はふるふると震えて後家から離れようとしない。その姿は、まるでうさぎのようだった。
怯えている姿にこんなことを思ってしまうのは申し訳ない気持ちがあるが、ひどく可愛らしい。普段冷静な顔をしている彼女が、こんなにも後家を頼りにしてくれるのが嬉しくて仕方がない。
「今日絶対寝れない……夢に出てくる……」
「じゃあ一緒に寝る?」
「……お願い…………」
審神者がこんなに甘えてくるのは珍しい。いつもは後家が触れただけで顔を真っ赤にして慌てたり怒ったりするのに、今は後家を強く抱き締めて離そうとしない。
「怖かったね、よしよし」
ゆっくりと髪を撫でて、彼女を落ち着かせる。ホラーが苦手なんて、可愛くて仕方がない。
そも審神者は何もなくても魅力的なのに、後家に甘える姿なんてものを見せられたら、なおのこと彼女に惹かれてしまう。
小さな手で後家の服を掴んで、小さな身体を隠れるように後家に預けている。庇護欲がわかないはずがなかった。
「後家は怖くないの……? その、ホラー映画……」
「うーん、普段血も肉も見慣れてるし、ボク自身付喪神だから、霊的なものって言ったらそうじゃない? だからオバケも怖くないなあ」
「すごいね……」
「主はボクのこと怖くないの?」
「……後家を怖いなんて思ったこと、ないよ。いつも優しくしてくれるじゃない」
「へへ、そっか」
夜に部屋に来て抱きついて、一緒に寝て欲しいと恋仲の男に頼むなど──あまりにも警戒心が無さすぎる。よく言えば信頼されているのだが、悪く言えば一切そういう風に見られてないということだ。
「……ボクも男なんだけどなあ…………」
だが、審神者に軽率に手を出して怯えさせたくない。彼女の心は硝子のように繊細なのだ。壊れ物のように扱って、大切に大切にしなければ。
「? なにか言った?」
「んーん、気にしないで。そろそろ布団敷こっか」
純粋無垢な彼女の額に口づけを落として、後家は自分の浅ましい欲に苦笑した。その夜、審神者はついぞ後家の欲に気づくことなく、無警戒で布団の中で眠った。
「だいじょーぶ?」
「無理……」
審神者はぐずぐずと鼻を啜っている。彼女が泣いている原因は、夕食後に他の刀たちが見ていたテレビ番組だった。
有名なホラー映画の放送があったそうで、審神者はちょうど一番怖いシーンにたまたま出くわしてしまったらしい。
涙目で部屋に来たときは、何かあったのかとひどく心配をした。
「すごく怖かった……」
「作り物なのに?」
「作り物だから、すっごく怖くできちゃうじゃない!」
審神者はふるふると震えて後家から離れようとしない。その姿は、まるでうさぎのようだった。
怯えている姿にこんなことを思ってしまうのは申し訳ない気持ちがあるが、ひどく可愛らしい。普段冷静な顔をしている彼女が、こんなにも後家を頼りにしてくれるのが嬉しくて仕方がない。
「今日絶対寝れない……夢に出てくる……」
「じゃあ一緒に寝る?」
「……お願い…………」
審神者がこんなに甘えてくるのは珍しい。いつもは後家が触れただけで顔を真っ赤にして慌てたり怒ったりするのに、今は後家を強く抱き締めて離そうとしない。
「怖かったね、よしよし」
ゆっくりと髪を撫でて、彼女を落ち着かせる。ホラーが苦手なんて、可愛くて仕方がない。
そも審神者は何もなくても魅力的なのに、後家に甘える姿なんてものを見せられたら、なおのこと彼女に惹かれてしまう。
小さな手で後家の服を掴んで、小さな身体を隠れるように後家に預けている。庇護欲がわかないはずがなかった。
「後家は怖くないの……? その、ホラー映画……」
「うーん、普段血も肉も見慣れてるし、ボク自身付喪神だから、霊的なものって言ったらそうじゃない? だからオバケも怖くないなあ」
「すごいね……」
「主はボクのこと怖くないの?」
「……後家を怖いなんて思ったこと、ないよ。いつも優しくしてくれるじゃない」
「へへ、そっか」
夜に部屋に来て抱きついて、一緒に寝て欲しいと恋仲の男に頼むなど──あまりにも警戒心が無さすぎる。よく言えば信頼されているのだが、悪く言えば一切そういう風に見られてないということだ。
「……ボクも男なんだけどなあ…………」
だが、審神者に軽率に手を出して怯えさせたくない。彼女の心は硝子のように繊細なのだ。壊れ物のように扱って、大切に大切にしなければ。
「? なにか言った?」
「んーん、気にしないで。そろそろ布団敷こっか」
純粋無垢な彼女の額に口づけを落として、後家は自分の浅ましい欲に苦笑した。その夜、審神者はついぞ後家の欲に気づくことなく、無警戒で布団の中で眠った。