雨と甘やかし
ざあざあと雨が降り注ぐ。空から降ってくる雫が傘に当たる。審神者はようやく本丸の玄関に辿り着いて、傘を閉じた。
荷物を濡らさないようにと気をつけていたせいで、自分の肩が少し濡れてしまっている。
「あ、主、おかえり」
「ただいま後家」
「雨ひどかったでしょ。濡れなかった?」
「ちょっとだけ。夏なのに今日は寒いよね……くしゅっ」
寒さのせいでひとつくしゃみをしてしまう。早く着替えた方がいいかもしれない。
そう思っていると、後家が近づいてきて、審神者を抱え上げた。
「わっ!? ちょっと、後家!?」
「舌噛むから、口閉じて!」
後家はありえないくらいの早さで廊下を駆ける。どうしてそんなに急ぐのだろうか。というより、何故急にお姫様抱っこをしてきたのかがわからない。
「後家! 廊下を走るな……なぜ主を抱えている!?」
「緊急事態だから、ごめんね!」
廊下ですれ違った長谷部が驚いているのが一瞬見えた。後家は審神者の部屋に辿り着くと、ようやっと審神者を降ろしてくれた。
「早く着替えて! 今お茶持ってくる!」
「……へ?」
後家はまた走ってどこかへ行ってしまった。まさか、くしゃみをしたから身体が冷えていると思って急いで審神者を運んだのだろうか。
「か、過保護……」
審神者は言われた通りに着替えに手を伸ばしながら、恋刀の心配性にどうしたものかと思ってしまった。
「主、入ってだいじょーぶ?」
「うん、もう着替えたよ」
数分して後家は部屋に戻ってきた。茶を乗せた盆と、腕にはブランケットがかかっていた。彼は審神者の隣に座る。
「はい、じゃあここに来て?」
ここ、と指し示されたのは後家の膝の上。
「え、えっ」
「いーから、ほら」
遠慮がちに膝の上に座ると、ブランケットでくるまれる。そして後ろからぎゅうと抱き締められて、彼の体温が伝わってきた。
「寒くない?」
「う、うん。でもあの、ちょっと恥ずかしい……」
「なして? ぎゅーってされるの、嫌?」
「嫌……じゃないけどっ……」
「じゃーこのまま。はい、お茶」
後家は片手でお茶を取って審神者に持たせる。湯気の立つほうじ茶をひと口飲むと、身体の内側がじんわりと温まった。
「あったかい……」
「ん、よかった」
「……後家、少し過保護じゃない? 私そこまで身体弱くないよ」
くしゃみひとつでここまで構い倒すのだから、風邪なんて引いた日にはどうなってしまうのだろう。
「好きな子大事にするの、駄目?」
甘い顔で首をかしげながら言うものだから、思わず見惚れてしまった。
「……駄目、ではない……大事にされるのは、嬉しいよ…………」
素直な思いを言葉にすると、後家はじゃあもっと大事にするね、と審神者の頭を撫でる。
「主は自分に無頓着になりがちだから、ボクが過保護なくらいがちょうどいーんじゃない?」
後家はふっと笑みをこぼして、審神者の頬に口づけを落とす。
「わっ……。きゅ、急にキスしないで……」
「かわいくてつい、ね? あとでお汁粉でも作ろっか。お餅何個がいい?」
「……お夕飯近いし、一個かな」
「ほんとうに? それで足りる?」
雨がぱちぱちと屋根を叩く音を聞きながら、審神者は優しい体温に溺れた。
荷物を濡らさないようにと気をつけていたせいで、自分の肩が少し濡れてしまっている。
「あ、主、おかえり」
「ただいま後家」
「雨ひどかったでしょ。濡れなかった?」
「ちょっとだけ。夏なのに今日は寒いよね……くしゅっ」
寒さのせいでひとつくしゃみをしてしまう。早く着替えた方がいいかもしれない。
そう思っていると、後家が近づいてきて、審神者を抱え上げた。
「わっ!? ちょっと、後家!?」
「舌噛むから、口閉じて!」
後家はありえないくらいの早さで廊下を駆ける。どうしてそんなに急ぐのだろうか。というより、何故急にお姫様抱っこをしてきたのかがわからない。
「後家! 廊下を走るな……なぜ主を抱えている!?」
「緊急事態だから、ごめんね!」
廊下ですれ違った長谷部が驚いているのが一瞬見えた。後家は審神者の部屋に辿り着くと、ようやっと審神者を降ろしてくれた。
「早く着替えて! 今お茶持ってくる!」
「……へ?」
後家はまた走ってどこかへ行ってしまった。まさか、くしゃみをしたから身体が冷えていると思って急いで審神者を運んだのだろうか。
「か、過保護……」
審神者は言われた通りに着替えに手を伸ばしながら、恋刀の心配性にどうしたものかと思ってしまった。
「主、入ってだいじょーぶ?」
「うん、もう着替えたよ」
数分して後家は部屋に戻ってきた。茶を乗せた盆と、腕にはブランケットがかかっていた。彼は審神者の隣に座る。
「はい、じゃあここに来て?」
ここ、と指し示されたのは後家の膝の上。
「え、えっ」
「いーから、ほら」
遠慮がちに膝の上に座ると、ブランケットでくるまれる。そして後ろからぎゅうと抱き締められて、彼の体温が伝わってきた。
「寒くない?」
「う、うん。でもあの、ちょっと恥ずかしい……」
「なして? ぎゅーってされるの、嫌?」
「嫌……じゃないけどっ……」
「じゃーこのまま。はい、お茶」
後家は片手でお茶を取って審神者に持たせる。湯気の立つほうじ茶をひと口飲むと、身体の内側がじんわりと温まった。
「あったかい……」
「ん、よかった」
「……後家、少し過保護じゃない? 私そこまで身体弱くないよ」
くしゃみひとつでここまで構い倒すのだから、風邪なんて引いた日にはどうなってしまうのだろう。
「好きな子大事にするの、駄目?」
甘い顔で首をかしげながら言うものだから、思わず見惚れてしまった。
「……駄目、ではない……大事にされるのは、嬉しいよ…………」
素直な思いを言葉にすると、後家はじゃあもっと大事にするね、と審神者の頭を撫でる。
「主は自分に無頓着になりがちだから、ボクが過保護なくらいがちょうどいーんじゃない?」
後家はふっと笑みをこぼして、審神者の頬に口づけを落とす。
「わっ……。きゅ、急にキスしないで……」
「かわいくてつい、ね? あとでお汁粉でも作ろっか。お餅何個がいい?」
「……お夕飯近いし、一個かな」
「ほんとうに? それで足りる?」
雨がぱちぱちと屋根を叩く音を聞きながら、審神者は優しい体温に溺れた。