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 どれを行くかが、運命の別れ道





 ROUTE 666 ―困惑―





「はぁ……」
 復興作業の続くアレクサンドリアの片隅、建物と建物の間にある暗くて細い路地で俺はため息を吐き出した。

 クジャを追う旅の途中、アレクサンドリアで問題が発生したらしく、急遽引き返して来たのだ。まぁ、その問題とやらも俺たち一般人には理解しがたい事柄らしく、ダガーやスタイナー、ベアトリクスなどから一切説明はない。ただ、処理し切るまでアレクサンドリアで待機して欲しいとのことだ。
 俺はもちろん、それで納得した。国政には些かの興味もないし、首を突っ込んだところで俺の得になるようなことは一つもない。ならば、聞くだけ無駄だと言うものだ。
 ジタンとエーコは一切説明がないことに納得がいかなかったらしく、ここ数日ベアトリクスからわかりやすくかみ砕いた詳細も聞いては目を回していた。
 ビビやフライヤ、クイナは俺と同様に考えたらしく、この数日間、大人しくアレクサンドリア城で厄介になっている。
 しかし、いくら復興途中とはいえ、アレクサンドリアは大国だ、豪勢な城で寝泊まりするのは俺には窮屈で堪らない。出来れば街中の宿、しかも安宿でも取ってくれた方が個人的にはありがたいのだが。

 しかし、俺を悩ませているのはそんなことではない。
 問題はジタンだ。
 数週間ほど前に俺に告白してきて以来、奴の猛アタックに怯える俺とは裏腹に一切何のアプローチもないのだ。
 俺がこんなに胃を痛くしているというのに、対照的にジタンの奴は飄々としていやがる。何もかもいつも通りで、あの告白が俺の夢か何かではないかと思えてしまうほどだ。
 何かあっても迷惑この上ないが、何もないのは逆に恐怖を生む。一体やつはどういうつもりなんだ、この俺をこんなに狼狽させやがって。
 つきたくもないため息が、思わず口から流れ出てしまう。

「なんじゃ、悩み事でもあるのか?」
 暗い路地に揶揄するような女の声が響いた。路地に声の主の姿は見えないが、こんな登場慣れたものだ。
「フライヤか……」
 ため息混じりに呟くと、スタンッと軽い音を立てて、目の前に細身な銀髪の女が降り立った。
 ジタンと行動を共するメンバーの一人で、ブルメシアの女竜騎士フライヤだ。
 三階建ての屋根から飛び降りて来たフライヤは、何でもない様子で風に煽られ歪んだ帽子を左手で軽く直す。
 全く、お節介な女だ。年が近いせいか、この女は何かと俺に構ってくる。好意があるならまだしも、悪意があるから尚更質が悪い。俺を笑い者にして退屈を凌ごうとしていやがるのだ。
 思わず、さらにため息を吐いてしまう。

「仮にあったとして、貴様なんぞに言う気はないな」
 こんな所で奴のオモチャになるつもりはない。この場所から離れようと踵を返して路地を出て行こうとする俺の背中に、フライヤの微かな笑い声が届いた。
「ふん、言わんでもお見通しじゃ。どうせジタンに告白でもされたんじゃろう?」
「なっ……!?」
 何を言われても振り返る気などなかったというのに、フライヤの口から何気なく流れ出た言葉に、思わず振り返ってしまった。
 視線の先でフライヤは口端を吊り上げる。

「フフッ、なぜ知っている……そう言いたげな顔じゃな」
 そのフライヤの様子に、俺の中にある懸念が湧く。
「ちっ……」
 最悪だ。
「……お前がジタンを焚き付けたのか?」
 苦々しく吐き捨てる。まさか、こいつが他人まで巻き込んで俺をかわかう道具に使うとは、さすがに思いもしなかったのだ。
 これはもう質が悪いとかそういう問題ではない、常識的にどうかしている。
「焚き付けた? それは勘違いもいいとこじゃな。
 私はただ、ジタンに相談されたまでじゃよ。お主に告白しろとは、一言も言っておらん」
 思わず眉間にシワが寄る。
 確かに、人を巻き込むなどフライヤらしいやり方ではない。迷惑な女だが、年相応の常識や節度、限度などは弁えていた。
 とすると、あのジタンの告白にフライヤは関わっていないということか?
 俺のその考えを後押しするように、フライヤは口を開く。

「大体、私はジタンとお主にはくっついて欲しくない。どころか、ジタンにはダガーの支えになって欲しいとさえ思っておる。
 だから相談された時、反対したのじゃ。奴は相手の名を明かさなかったが、そんなものすぐに知れる。
 しかし、ジタンは反対を押し切って、お主に告白してしまったようじゃな」
 そこでフライヤはふうと息を吐き、話しは終わりだと言わんばかりに俺に背中を向けた。
「おい……っ!」
 去ろうとする背中に声をかけるが、フライヤは俺を一瞥だけすると、路地の向こうの人込みに消えてしまった。
「ちっ、なんなんだ一体ッ!」
 憤りや困惑を拭い去るように、ただ毒づく。


 全く、なぜ俺の回りにはこんなわけのわからない連中だらけなんだ。惚れただの腫れただの、そんな不必要な感情に振り回されるなんて、面倒なだけだろう。
 もう一度、路地の向こうに視線をやり、俺はただため息を吐き出した。







――to be continue.




 ☆お粗末さまでした☆


 二話目です。なくても良いような気もしますが……わ、ワンクッションってやつですよ(汗)



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