幻想水滸伝
早く行かなくちゃ。
Orizzonte
早く行かなくちゃ。
早く行かなくちゃ。
早く行かなくちゃ。
早く行かなくちゃ。
「早く行かなくちゃ」
澄んだ青空の下、遥か彼方の地平線まで続く大地を、ただ駆け抜ける。
「早く行かなくちゃ!」
朝も昼も夜も、時間も場所も何もかもを忘れて、ただ走る。
「早く行かなくちゃ!」
だって、王子が待っているから。
あぁ、愛しい俺の王子。
その陶磁器のような白い肌が、果物のように熟れた赤い唇が、絹糸のような銀色の髪が、サファイアのように輝く青い瞳が、俺以外の誰かに汚されてしまう前に、早く行かなくちゃ。
あの小さな細い体を、俺の腕の中に納めたい。あの誘惑的な唇を貪り尽くしたい。細い銀糸に指を絡ませて、その瞳に俺だけを写すように。
独り占めしたい。
愛してるから、あの体を味わいたい。
愛したいから、他の誰かを愛さないで。
愛して欲しいから、どうか俺以外を見ないで。
心も全部欲しいから。
「早く行かなくちゃ」
王子が汚されてしまう。
「早く行かなくちゃ」
王子が俺以外を見てしまう。
「早く行かなくちゃ」
王子が誰かを愛してしまう。
「あぁ、王子王子!!」
譫言のように呟きながら、目の前に浮かぶ王子の幻影を、全速力で追い掛ける。
息が切れて、視界が揺れる。膝が震えて、速度が落ちる。眠気に襲われ、思考が歪む。空腹の飢餓感に、本能が覚醒する。
「早く行かなくちゃ」
地平線の向こう、レインウォールへと。
「早く行かなくちゃ」
王子を俺だけのものにしたいから。
「早く行かなくちゃ」
愛しい王子の、その側へ。
そして、この腕の中に閉じ込めてしまおう。
・END・
☆お粗末さまでした☆
下心丸出しで忠犬。でもヘタレな、カイルでした。カイルは多分、誰よりも王子が好きなんだと思います。←妄想。
5/5ページ