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ネオンライトがひしめき合う夜の繁華街。看板の群れは、我こそが、と主張を止めない。街を歩く人々は、少しだけ疲れた顔をして、目当ての看板の元へと歩みを進める。
私もまた、そのひとりだ。
「おっ、いらっしゃい」
「マスター…… 私、もう疲れたよぉ…… 」
繁華街の片隅に立つ3 階建てのビル。その2 階部分に私の行きつけのお店がある。
OPEN と札がかかった黒いドアを押して入ると、入店を知らせるチャイムが控えめに鳴った。
倒れ込むようにカウンターに突っ伏して、椅子に座ると、上から呆れたような笑い声。もう、顔どころか名前も覚えられてしまった、このお店のマスター。音がカッコいいでしょ?とドヤ顔で、源氏名を名乗られた時は、本当に反応に困った。
「随分と疲れてるみたいだけど。どうしたの、ちひろさん」
「どうしたも何も…… 。お客様からひどいクレームを受けたんですよ…… 」
「それはお疲れ様」
グラスを拭きながら、ふと思い出したようにマスターが呟く。
「そうだ、今日、新しい子入ったんだよ」
「どんな人ですか紹介してくださいさあ早く」
マスターの言葉に、突っ伏していた体が自然に起き上がる。くたびれたスーツやシャツの襟元を気休め程度に整える。
「お、落ち着いて。あんまりがっついたら、新しい子だって逃げちゃうじゃないか」
「それは嫌です。…… あ、今日はカルーアミルクで」
「珍しいね。コーラハイじゃなくていいの?」
「新しい人の前くらい、女の子らしいとこ見せたいじゃないですか!!」
「どうせ、剥がれ落ちるんだから、猫被らなくてもいいと思うけどね」
「そ、それはそうかもしれないですけど…… 」
マスターの言う通りかもしれない。私は結構な頻度でこのお店に来ている。新しい人とも、これから何度も顔を合わせるだろうし…… いや、でも初対面の印象って大事だと思う。
そう考えていた私の後ろから、
「マスター、下げたグラスってどこに置けばいいですか?」
聞き慣れない声。おそるおそる振り向く。
「ああ、それは向こうのシンクに置いてくれる?…… そうだ。彼が新しい子だよ」
マスターの声もどこか遠くに聞こえる。振り返った私の目の前に立っていたのは、このお店では見た事のない男性。
無造作に遊ぶ髪は紺色で、身長は170cm台と見た。顔立ちは男前な中に可愛らしさがあり、それでいて金色の瞳はやや鋭い。その反する印象が強く残り、視線が縫い付けられたように彼から離れない。
「ほら、ジュンくん。挨拶して」
「…… 先週からこの店に入りました。ジュンです」
「ありがとうございます私の推しですあなたこそが私の推しですありがとうございます幸い収入は多いのでこれからはあなたに貢いでいこうと思っていますとりあえずチェキお願いしていいですか!!!!!」
彼の言葉を遮って、口をついて出た欲望は、私の本心に違いなくて。
「落ち着いて!!」
マスターの制止の声も、彼を、ジュンくんを見つめる私には届かない。
こうして、私は3 次元における、私の推しと出会った。
──Bar Hottie.
ここは、日々の出来事に疲れた貴女を癒すバー。
なお店員は、全員が顔面偏差値高めの男性だらけ。
カウンター越しのイケメンによる接客で、少しだけ、疲れを癒していかれませんか?
私もまた、そのひとりだ。
「おっ、いらっしゃい」
「マスター…… 私、もう疲れたよぉ…… 」
繁華街の片隅に立つ3 階建てのビル。その2 階部分に私の行きつけのお店がある。
OPEN と札がかかった黒いドアを押して入ると、入店を知らせるチャイムが控えめに鳴った。
倒れ込むようにカウンターに突っ伏して、椅子に座ると、上から呆れたような笑い声。もう、顔どころか名前も覚えられてしまった、このお店のマスター。音がカッコいいでしょ?とドヤ顔で、源氏名を名乗られた時は、本当に反応に困った。
「随分と疲れてるみたいだけど。どうしたの、ちひろさん」
「どうしたも何も…… 。お客様からひどいクレームを受けたんですよ…… 」
「それはお疲れ様」
グラスを拭きながら、ふと思い出したようにマスターが呟く。
「そうだ、今日、新しい子入ったんだよ」
「どんな人ですか紹介してくださいさあ早く」
マスターの言葉に、突っ伏していた体が自然に起き上がる。くたびれたスーツやシャツの襟元を気休め程度に整える。
「お、落ち着いて。あんまりがっついたら、新しい子だって逃げちゃうじゃないか」
「それは嫌です。…… あ、今日はカルーアミルクで」
「珍しいね。コーラハイじゃなくていいの?」
「新しい人の前くらい、女の子らしいとこ見せたいじゃないですか!!」
「どうせ、剥がれ落ちるんだから、猫被らなくてもいいと思うけどね」
「そ、それはそうかもしれないですけど…… 」
マスターの言う通りかもしれない。私は結構な頻度でこのお店に来ている。新しい人とも、これから何度も顔を合わせるだろうし…… いや、でも初対面の印象って大事だと思う。
そう考えていた私の後ろから、
「マスター、下げたグラスってどこに置けばいいですか?」
聞き慣れない声。おそるおそる振り向く。
「ああ、それは向こうのシンクに置いてくれる?…… そうだ。彼が新しい子だよ」
マスターの声もどこか遠くに聞こえる。振り返った私の目の前に立っていたのは、このお店では見た事のない男性。
無造作に遊ぶ髪は紺色で、身長は170cm台と見た。顔立ちは男前な中に可愛らしさがあり、それでいて金色の瞳はやや鋭い。その反する印象が強く残り、視線が縫い付けられたように彼から離れない。
「ほら、ジュンくん。挨拶して」
「…… 先週からこの店に入りました。ジュンです」
「ありがとうございます私の推しですあなたこそが私の推しですありがとうございます幸い収入は多いのでこれからはあなたに貢いでいこうと思っていますとりあえずチェキお願いしていいですか!!!!!」
彼の言葉を遮って、口をついて出た欲望は、私の本心に違いなくて。
「落ち着いて!!」
マスターの制止の声も、彼を、ジュンくんを見つめる私には届かない。
こうして、私は3 次元における、私の推しと出会った。
──Bar Hottie.
ここは、日々の出来事に疲れた貴女を癒すバー。
なお店員は、全員が顔面偏差値高めの男性だらけ。
カウンター越しのイケメンによる接客で、少しだけ、疲れを癒していかれませんか?