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喧しく鳴り響くアラーム音で、目が覚めた。……今日は休みなのに。アラームを解除し忘れていた。朝5時。夏場のこの時間、既に外は明るい。カーテンで遮られた陽の光、薄ぼんやりと照らされたジュンくんの顔。相変わらず格好いいなあ、なんて思う。
「……おはよう、ございます」
「おはよう」
見つめていると、そのシトリンが薄く開いた。寝起き特有の少しだけかさついた声が挨拶を告げる。
「ごめんね、起こしちゃった?」
見た目よりも柔らかな紺色の髪をゆっくりと撫でながら問う。普段は、私の方が遅く起きるため、まだ寝ぼけている様子のジュンくんに愛らしさが込み上げる。
「だいじょうぶ、すけど……いま何時ですか……?」
「いま? ……7時だよ」
「ありがとうございます……」
言って、ジュンくんは、ふあ、と大きめの欠伸をしてから、ぐーっと伸びをする。しばらく微睡みに揺蕩ったあと、こちらを見た。
「朝飯、どうします?」
「昨日何も仕込んでないし……あ。パンならある」
「ああ……この間、買ってたやつ」
「それ、食べようか」
今日は休みだから、もう少しだけゆっくりとしていたいが、ジュンくんは仕事がある。そろそろ起きないと間に合わなくなるな、と思い、ベッドから降りようとした。
「あの」
「ん? どうし」
声に反応して振り向くと、大きな手が私の両頬を優しく包み込む。耳の形を確かめるように長い指が動いてこそばゆい。唇同士が重なり触れては、離れる。何度か啄むような口付けを落とされたあと、ゼロの距離でシトリンが悪戯に微笑んだ。
「おはようのキス、もらってなかったんで」
「……もう。どうぞ、ご勝手に」
朝からすっかり、彼のペースに持っていかれてしまい、悪態を吐くようにわざとそんな事を言って笑った。
食パンが焼ける香ばしい匂いと、コーヒーの苦い香りが混ざりあう。焼けたパンにバター入りマーガリンを手早く塗り、白のプレートに乗せる。
「ごめん、コーヒー持ってきてもらってもいい?」
「はい」
小さなテーブルに焼き目のついたパンと、コーヒー。ここまで来て、彩りが足りないことに気づいた。キッチンに戻り、冷蔵庫を開ける。あ、レタスがある。キュウリも。ふたつともさっと水に晒して、レタスは手で乱雑にちぎる。キュウリは千切りに。深めの大皿にレタスを敷いてから、キュウリを乗せれば、ひとまずのサラダが完成。ドレッシングはお好みで。
テーブルの上が少し彩り豊かになったところで二人とも椅子に座った。
「よし。じゃあ、食べようか」
手を、声を合わせて。
「いただきます」
「今日は少し遅くなると思うんで、先、寝てていいっすよ」
午後からの仕事に向かうジュンくんを、玄関まで見送る。
「そう? ……でも、待ってるかも」
「じゃあ、なるべく早めに帰れるようにします」
「いいよ、いいよ。私が勝手に待つだけだし。……それに」
「……?」
「早く帰ってきたのに、私、居眠りしてるかもよ?」
わざとそう言ってみせると、ジュンくんは困ったように笑った。
しばらくの沈黙が流れて、どちらからとは言わずに、唇を重ねる。触れるだけの、軽めの口付けは少しだけ名残惜しく離れた。
「行ってらっしゃい」
「行ってきます」
お互い照れくさそうに笑って、いま、玄関のドアが閉まった。
「……おはよう、ございます」
「おはよう」
見つめていると、そのシトリンが薄く開いた。寝起き特有の少しだけかさついた声が挨拶を告げる。
「ごめんね、起こしちゃった?」
見た目よりも柔らかな紺色の髪をゆっくりと撫でながら問う。普段は、私の方が遅く起きるため、まだ寝ぼけている様子のジュンくんに愛らしさが込み上げる。
「だいじょうぶ、すけど……いま何時ですか……?」
「いま? ……7時だよ」
「ありがとうございます……」
言って、ジュンくんは、ふあ、と大きめの欠伸をしてから、ぐーっと伸びをする。しばらく微睡みに揺蕩ったあと、こちらを見た。
「朝飯、どうします?」
「昨日何も仕込んでないし……あ。パンならある」
「ああ……この間、買ってたやつ」
「それ、食べようか」
今日は休みだから、もう少しだけゆっくりとしていたいが、ジュンくんは仕事がある。そろそろ起きないと間に合わなくなるな、と思い、ベッドから降りようとした。
「あの」
「ん? どうし」
声に反応して振り向くと、大きな手が私の両頬を優しく包み込む。耳の形を確かめるように長い指が動いてこそばゆい。唇同士が重なり触れては、離れる。何度か啄むような口付けを落とされたあと、ゼロの距離でシトリンが悪戯に微笑んだ。
「おはようのキス、もらってなかったんで」
「……もう。どうぞ、ご勝手に」
朝からすっかり、彼のペースに持っていかれてしまい、悪態を吐くようにわざとそんな事を言って笑った。
食パンが焼ける香ばしい匂いと、コーヒーの苦い香りが混ざりあう。焼けたパンにバター入りマーガリンを手早く塗り、白のプレートに乗せる。
「ごめん、コーヒー持ってきてもらってもいい?」
「はい」
小さなテーブルに焼き目のついたパンと、コーヒー。ここまで来て、彩りが足りないことに気づいた。キッチンに戻り、冷蔵庫を開ける。あ、レタスがある。キュウリも。ふたつともさっと水に晒して、レタスは手で乱雑にちぎる。キュウリは千切りに。深めの大皿にレタスを敷いてから、キュウリを乗せれば、ひとまずのサラダが完成。ドレッシングはお好みで。
テーブルの上が少し彩り豊かになったところで二人とも椅子に座った。
「よし。じゃあ、食べようか」
手を、声を合わせて。
「いただきます」
「今日は少し遅くなると思うんで、先、寝てていいっすよ」
午後からの仕事に向かうジュンくんを、玄関まで見送る。
「そう? ……でも、待ってるかも」
「じゃあ、なるべく早めに帰れるようにします」
「いいよ、いいよ。私が勝手に待つだけだし。……それに」
「……?」
「早く帰ってきたのに、私、居眠りしてるかもよ?」
わざとそう言ってみせると、ジュンくんは困ったように笑った。
しばらくの沈黙が流れて、どちらからとは言わずに、唇を重ねる。触れるだけの、軽めの口付けは少しだけ名残惜しく離れた。
「行ってらっしゃい」
「行ってきます」
お互い照れくさそうに笑って、いま、玄関のドアが閉まった。
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