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ハリー・ポッターとアズカバンの囚人

クィデッチの観戦中。天候は最悪。雷雨の中、選手達は大接戦を繰り広げる。ハリーの姿が見えないことに[#dn=2#]は胸騒ぎを覚える。シーカーは縦横無尽に飛び回るスニッチを捕まえるために遠くまで行ってしまうことはよくある。しかし[#dn=2#]の嫌な予感は当たってしまった。

重く垂れ込めた雷雲の中から小さな影が落ちて来た。

「ハリー!!!」

他の生徒達も気づいたようで悲鳴が上がる。

「菊!」

[#dn=2#]に呼び出された菊は一直線にハリーを受け止めるために飛ぶ。間に合うかどうかという時に、ハリーの落下速度が急激に低下した。菊を追うように箒で飛び出していた[#dn=2#]には立ち上がっているダンブルドアが見えた。

[#dn=2#]はハリーを菊の背中に乗せる。

「菊、ハリーを下までお願い」

菊は小さく了解の意味でキュッと鳴いた。[#dn=2#]はそのまま上空の様子を見に行く。雷雲の中に入ると、ほどほどの高さで箒がパキパキと音を立てて凍り始めた。

「……っ!」

恐ろしい、おぞましい気配を孕んだ冷気をそこら中から感じる。

「ディメンターか……!」

この量は流石に相手にはできない。[#dn=2#]は憤りを覚えながら踵を返した。

医務室へ行くと、1つのベッドを数人の生徒達が囲んでいた。[#dn=2#]は早足で近づくと声をかける。

「ハリー君は?」

「大きな怪我はないみたい。[#dn=2#]、あなたも顔色が良くないわ。大丈夫?」

「私は大丈夫。少しコートの周りを見てきたんだけど、ディメンターが城の敷地内にまで入って来てた。多分ハリー君を襲ったのはアレだよ」

「ディメンター……!?」

「吸魂鬼……いくらアズカバンの脱獄者を捕まえるためだからって生徒達に危険が及ぶのは看過できない。先生にも言ってみるけど、魔法省は頭が硬いから……私はしばらく警備に当たることにするよ。ディメンターから生徒を守るためのね」



グリフィンドールの寮の入り口。絵画の中の太ったレディが消えたと大騒ぎに。見つかったレディの一言が生徒達を怯えさせた。
全員大広間で寝袋に寝ることに。先生方は見回りだ。そんな中、ダンブルドアとスネイプが[#dn=2#]に声をかけた。

「[#dn=2#]、ちょっといいかね」

「はい」

「シリウス・ブラックのことじゃ。」

「はい」

「[#dn=2#]から見て、彼はどうじゃった。学生の時、その後も」

「……シリウスは学生の時と少しも変わっていませんでした。ハリーが生まれた時も名付け親になった時も嬉しそうに、自分の甥のように溺愛していました。彼がリリーとジェームズを裏切るわけがない」

「しかし奴は、ピーター・ペティグリューを路上で木っ端微塵に吹き飛ばした」

「残ったのは小指一本。ピーターが指だけ切って死んだように偽装することなんて容易い。あの臆病者はそれくらいする。シリウスがハリーを狙っているなんて馬鹿な話です。シリウスが追っているとしたらピーターの方。

「2人とも、静かに。眠った子が起きてしまう」

ダンブルドアは愛おしそうに、眠る子供達を見る。

「ルーピン先生も、[#dn=2#]も、彼の居場所は知らんのじゃな?」

「えぇ、彼をホグワーツに引き入れる事、それは誓ってありません。リーマスも。第一、見つけたらそれこそいの一番に捕まえに行きますよ。シリウスがピーターを殺してしまう前に。ピーターさえいればポッター夫妻の仇も、シリウスの冤罪も解決する。もし、ピーターが本当にヴォルデモート手下なら、あんなに使いやすい手駒はありませんよ。切り落とされる尻尾だとしても、あいつさえ捕まえれば状況は逆転するはず」

「そうじゃな。[#dn=2#]、君はしばらく城の敷地内を巡回してくれ。生徒がディメンターに襲われないように」

「吾輩も同行しよう。万が一奴が見つかった場合捕らえねばならん」

「だからわざわざ逃したりしないってば」

「セブルス、君には授業や校内の生徒達をしっかり見てやってほしいのじゃ。」

「ブラックを探さなくてよいのですか?」

「生徒の安全が第一じゃよ」

ダンブルドアもシリウス・ブラックが生徒を襲うとは考えていないようだ。
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