出逢いと再会
夢小説設定
夢主 基本設定名前:榛(デフォルト)
容姿:外見年齢は18歳前後。一般的な黒髪、黒瞳の日本人。
性格:かなりのビビり。たまに年齢に見合わない幼さが見える時がある。
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朝目が覚めると、まずは身支度。
顔を洗って、髭を剃って髪を結う。着物と袴、三角巾をキュッと締めればようやくシャキッと背筋を伸ばす。
今日もいい天気だ。当たり前だけど。
自室から出ると、ごっちゃごちゃに積み上げられた酒瓶や器を片付ける。
「あのろくでな師、また夜遊びしてたな?」
呆れながらも、いつもの事だからとテキパキこなしていく。家の中のことが一通り終わったところで、竹籠を背負った。未だ起きてこない上司兼師匠に、一応声をかける。
「仙桃取ってきますねー」
外に出るとうさぎたちが薬草を収穫している。ぴょこぴょこと一見遊んでいるように見えて微笑ましいが、彼らもれっきとした従業員だ。「おはよう」と声をかけ、仙桃のなる木へ向かった。
仙桃でいっぱいの籠を背負った帰り道の事だった。いつも小川のそばを通る。そこに、人が倒れているのが見えた。
「えっ?!だ、大丈夫ですか?!」
慌てて駆け寄ったが、声をかけても返答がない。倒れていたのはまだあどけない顔の少女だった。素足と白い浴衣……?は、所々土で汚れていた。見たところ大きな怪我はないようだったので、仙桃の籠は置いたまま少女を抱えて帰路を急いだ。
「白澤様!!大変です!!そこの小川に女の子が倒れてて!!」
「え?!何?!空から女の子?!」
何嬉しそうに飛び上がってんだ。違うわ。何だ空からって。お前もジ○リマニアか。鬼灯さんの事言えないだろ。
「あんたも○ブリマニアか!!じゃなくて、女の子が倒れていたんです!」
寝ぼけ眼だった白澤様も、真剣な表情に変わった。普段はろくでな師だけど、こういう時の白澤様は頼もしい。
「……とりあえず大きな怪我もしてないようだし、病気でもなさそうだ。」
カチャカチャと薬器を取り出しながら続ける。
「でも、あまり様子は良くないね。僕のベッドに寝かせてあげて。ゆっくり休ませて、目を覚ましたら話を聞こう」
「わかりました。でもあんたのベッドじゃなくて奥にあった布団引っ張りだしてきますね」
「え、なんでさ」
「いや、あんたの部屋女性の匂いプンプンするし、いろいろ心配だし」
「失敬な!」
結局、しまいこんであった布団はカビだらけで使い物にならなかったので白澤様のベッドに寝かせることになった。もちろん十分換気し、様々な匂いを消してから。
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部屋で女の子の看病をしていると店のほうが騒がしくなった。
「極楽蜻蛉!」「朴念仁!」
どうやら鬼灯さんが来たようだ。いつもの事だが、言い争いが終わらない。仕方なく止めに入ろうと、部屋から顔をのぞかせた。
「白澤様、うるさいですよ。あの子まだ寝てるんですから」
「あ、そっかごめん」
頭を掻きながら白澤様は騒ぐのをやめた。鬼灯さんの表情から察するに勘違いされてそうだから弁明はしとく。全く、どんだけ信用ないんだ、俺の師匠は。
「今朝、女の子が川辺に倒れていたんです」
「あぁ、私はてっきりまた女性を連れ込んでいたのかと。…亡者ですか?」
地獄のトップの補佐官だからいろいろ気になるのだろう。そっと女の子の様子を見せた。僅かに鬼灯さんの表情…唇が動いた気がしたのは気のせいだろうか。この人のポーカーフェイスを見破るのは容易でない。
「…亡者では…ないようですね」
「…ん……」
人が増えて騒がしかったのだろうか。女の子が目を覚ました。目をこすりながら半身を起こしたが状況が飲み込めていないようで俺たち三人を順番に見て、こてん、と首を傾げた。
「……あれ?……えっと……?」
「大丈夫ですか?」
「あ……は、はい」
後ろではいきなり抱きつこうとする白澤様を鬼灯さんが抑えてくれている。
「あ、あの……大丈夫ですか……?」
起きたばかりだというのに鬼灯さんに絞められている白澤様を心配してくれている様だ。優しい子なんだな。
「あー、あの人達はいつもああだから気にしないでください。身体は何ともありませんか?」
「……?はい。大丈夫です」
「君、可愛いね!何て名前?」
「この淫獣が。いきなりナンパとは」
鬼灯さんから逃れた白澤様はいつものテンションで女の子に話しかける。つい、いつものノリで会話を続けそうになったが、次のその子の言葉に三人とも固まってしまった。
「あ!えっと、私は……あれ……?名前…私の…なんだろう…」
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身体は何ともないようだった。お腹も空いていたようなので、薬膳を食べながら話を聞いた。
「記憶喪失ってやつですか?」
「すみません……」
女の子は申し訳なさそうに俯く。
「あぁ、ごめんね。気にしなくていいよ。ゆっくりでいいから。僕は白澤。ココで漢方薬局をやってるんだ。」
「俺は助手兼従業員の桃太郎です」
「よろしくお願いします」
女の子は俺たちの後ろの鬼灯さんと目が合うとビクッとした。
「どうしましたか?」
「あ、す、すみませんっ!鬼さんですか……?」
「私は閻魔大王第一補佐官の鬼灯といいます。怖がらせてしまって申し訳ありません。取って食ったりしないので安心して下さい」
女の子は胸の前で両手を振る。
「す、すみません!怖かったんじゃないんです。えっと、わかんないんですけど……なんか……知っていた気がして……でも、思い出せない……から、気のせいですね……。すみません。よろしくお願いします、鬼灯様」
「…よろしくお願いします」
この二人、何かあるんだろうか。先ほどの鬼灯様の様子といい、漠然とそう感じた。
「では貴方は……ふむ…やっぱり名前が無いと困りますね」
「もぐもぐ……っ……そうですね。私も不便だと思います」
「よかった、食べられるね。」
「あっ、ごめんなさい。厚かましかったでしょうか…?」
「いや、僕はよく食べる子好きだよ!ご飯が美味しくなるからね」
白澤様は女の子の頬のご飯粒を摘み、ペロリ。またこの人は……。女の子は顔を赤くする。照れ隠しか、薬膳を掬いもぐっと食べる。
「呼び方……どうしましょうかね」
「んー、ココ桃源郷だし…お花みたいに可愛いから、取りあえず花ちゃんじゃ駄目かな?」
「……貴方はそれでいいんですか?」
「はい、では花とお呼び下さい」
何だかんだ、花ちゃんはココで預かる事になった。かなり不満そうな鬼灯様だったけど、地獄では鬼灯様が四六時中そばに居られない事、地獄より天国の方が安全な事を踏まえ、渋々納得した。鬼灯様の訪問回数が増えそうだ。
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俺が目を覚ますとカチャカチャと食器を洗う音がした。白澤様が起きているのかと、慌てて支度を済ませたが水場にいたのは違う人だった。
「あ、桃タローさん。おはようございます。」
「花さん、おはようございます。すみません、俺の仕事なのに」
「いえいえ、お邪魔させてもらってるんですし当然です。私、お料理出来ませんし…」
照れ臭そうに笑う。なんか擽ったい感覚だ。
「お洗濯干して来ますね」
「俺、朝ご飯作りますよ。リクエストありますか」
「あ、じゃあ卵焼きが食べたいです!」
「分かりました。甘いのが好きなんでしたよね」
「ありがとうございます。桃タローさん」