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ドレスローザ

到着前夜のこと。星が瞬く空を見上げながら甲板の芝生に座り、柵に寄りかかっているロー。サク、サク、と軽い足音が近づく。

「船長」

不安そうな顔をした悠がローを見下ろす。ローは視線を芝生に移した。

「明日にはドレスローザに上陸だ。十分に睡眠をとって体力を温存しておけ」
「はい」

返事はしたが、悠はまだローのそばを離れない。ローはため息をつくと、座れというように自らの隣を指した。悠はローの横に座ると膝を抱えてつま先を見つめた。

「作戦では戦わない予定ですよね」
「あぁ。そう上手くはいかねェだろうが…」

悠が思いきったように口を開いた。

「船長、自分が死ぬ事を視野に入れないでください」

悠がローの目を横目に見る。悠は真っすぐにローを見つめていた。

「何の話だ。今回の目的は工場を…」
「はぐらかさないで」

悠は身を乗り出してローに詰め寄る。

「船長がどれ程のものを抱えてここに挑んでいるか、分からないほど馬鹿ではありません。麦わらさん達にはカイドウを潰す前段階としか言っていませんでしたが、船長とドフラミンゴにただならぬ縁があることは分かっています。ドフラミンゴが一度私に接触してきたのも、私に興味があったのではなく船長の所有物に興味があったのでしょう。」
「だとしたら、何だ」
「お願いですから約束してください。生きて、一緒に仲間の元へ帰るって。船長にとって今回の作戦が命より重いのは重々承知です。でも、麦わらさん達も船長を友人として手助けしてくれます。もちろん私も、私の全ては船長に捧げています。だから……お願いです。絶対に死なないで。絶対に、私を置いていかないでっ……」

悠はそう言いながらポロポロと涙をこぼす。握りしめた手の甲に雫が溜まっては零れ、芝生を濡らしていく。ローは悠の頭にぽんと手を乗せた。

「わかった。わかったよ。だがお前も約束しろ」

ローは悠の涙をぬぐいながらそう言う。

「泣くな。わかったな」

きょとんと目を丸くした後、クスッと吹き出した悠。

「はい。約束です」

悠は笑顔のまま、またポロポロと涙が溢れ出す。弱い月影の中で、悠の瞳は柔らかく溶けだしそうなはちみつ色をしていた。

「おい泣くなって言ってんだろ」

ローは呆れたように笑い、悠を肩に抱き寄せる。

「お前も、死ぬなよ」
「はい。もちろんです」

悠はローの体温を感じながら眠気に身を委ね眠りに落ちていった。その寝顔を見ながらローはまた覚悟を再確認するのだった。
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