第35話 担当上忍同士
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「…そういえば……カカシ、彩音ってどうなの?」
「……は?どうって……何が?」
「そりゃアンタに対してよ!あの子のこと助けたのアンタなんでしょ?」
教え子の下忍達が中忍試験を受けている間、俺達担当上忍は待機命令を出され、待機室で暇を潰していた。ついさっきまでイビキについて話してたのに、何故急に彩音の話題になったのか……。できることなら、彩音について話題に出したくない。…ついこの間自覚してしまったばかりだし……。
「いや、あの時はお面を被ってたし……。第一、アイツは七歳くらいまでの記憶が曖昧だからね」
彩音に関して、表向きはオレが任務帰りに助けた旅商人の子供ということになっている。彩音の記憶が曖昧なのをいいことに、まだ彩音自身にも真実を話してない。
実際は三代目の命令で向かった村の一族の生き残り。今でもあの悲惨さは一、二を争うものだったと思う。
そこそこ大きな村の至るところに血が飛び散り、転がる死体。村の片隅にある屋敷、その居間に転がる男女と幼子の傍らに彩音はいた。あの惨状で傷一つなく死体を見つめる様子は、今思い出しても薄ら寒い。
「えー……。ホントに何もないの?」
「ないない。むしろ初日にチョーク粉塗れにされて大嫌い発言もらった」
もう大嫌いまではいかないと思うけど、遅刻のこともあってあまりいい印象ではないだろう。
「つまんないわねー。なんかこう、熱い展開期待してたんだけど」
「本の読み過ぎだ、紅。つーか、教え子に手を出すとか犯罪だろ」
「あら、アスマは頭が硬いわね。そういうのが燃えるのよ!…私はないけど」
「お前らねェ……」
二人の言葉に、針を刺されるような痛みがはしる。やっぱり普通じゃないよな……。一回り以上も年下の、まだ13歳の子供に想いを寄せるなんて……。
「女の噂も聞かなくなったし……丸くなったわねぇ……」
「20歳くらいまでのコイツの噂、ヤバイのばっかだったからな」
「…お前ら、噂が全部嘘って知っときながらイジるからタチ悪い……」
若い頃は色々嫉妬や逆恨みで噂を流されることはしょっちゅうだった。主に女関係の……。っていうか、そういうのほぼ断ってたし。…まあ、あの頃は生意気だったからな……。
「…ねぇ、本当に誰か好きな人やいい人いないの?」
急に真面目な顔になる紅。アスマまで真剣にこちらを見る目付きに、少々居心地が悪くなる。いかにも『心配しています』という顔だ。
これはこれまでも同期やらに聞かれた質問。本気で冷やかしなく心配されるので、こちらも無下にはできないが、やはり自分が人を幸せにしたり暖かな家庭をつくることができる気がしない。
「……いなーいよ。そもそも、オレは一人でも大丈夫だしね」
オレは悲しげに眉をひそめる紅とアスマから目を逸らし、自分の気持ちからも目を逸らした。