第26話 自覚
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「ほら、今は他の上忍もいないから好きに見な」
「わーひろーい‼」
待機室に着くと無邪気に探索する彩音が微笑ましくて、クスリと笑ってしまう。
やはりあの時の感情は、幼子を大切に思うものだったんだ。おかしいもんな、14も下の子供のことを……。
「あれ、カカシじゃない!久しぶりねェ!」
「アンコか」
少し考え事をしていたら、いつの間にか待機室にアンコが入って来ていた。
「…?あの子は……?」
待機室に見慣れない子供がいたのを不審に思ったらしい。いかぶしげな顔のアンコに苦笑しつつ、オレは彩音を呼び寄せた。
「オレの教え子だよ。彩音!ちょっとこっち来い!」
「はい!はじめまして!第七班の乱舞彩音です!」
「あらー、礼儀正しくて可愛い子じゃない!私は特別上忍のアンコよ。よろしくね」
意外と和やかに挨拶する二人。しかし二人仲良く話しているだけかと思いきや、アンコの話題が徐々に不穏な方にいく。
「もう、食べたくなるくらい可愛いわねェ!彩音ちゃんも気を付けるのよ。カカシの毒牙にかかんないように!」
「おま……!何言ってんの⁉」
「食べ……?カカシ先生、毒牙なんて持ってるんですか?」
「カカシは昔ね……」
「ギャーーーー‼それ根も葉もない噂だろ⁉彩音も変な事聞いちゃいけません‼」
アンコが余計なことを言う前にさっさと待機室から彩音を抱えて退散する。アイツらは嘘だと知ってるからいいが、何にも知らない子供にオレの変なイメージを植え付けるのはよくない。
「ちょっとカカシ先生!もう帰るんですか⁉アンコさんともまだ話してたかったのに‼」
「アイツだけはやめとけ。人を困らせるのが好きな生粋のサディストだから」
よく意味が分からなかったのか、首を傾げ困惑顔の彩音。ホント、まだそのまま純粋でいてくれ……。
「…ま、もう日も沈んできた。暗くなる前に帰るぞ」
小脇に抱えた彩音を降ろし、オレンジに染まる道を歩く。少し不満気な顔を見せたが、ため息を一つ付くと急にオレの前に飛び出した。
「今日はわがまま聞いてくれてありがとうございました!」
夕日を背に、オレのことを上目使いに見つめる彩音。小さく傾げた顔にかかる髪がサラサラと流れるのを、スローモーションのように見てた。
「また明日!」
浮かべられたのは花が咲くような満面の笑み。途端に上がる心拍数。遠くなる彩音の背に、自身を嘲笑する。
「ハハ……。馬鹿だろ、オレは……」
今まで誰にも惹かれなかったオレが、14も下の、まだ恋のこの字も知らないような子供に心揺さぶられるなんて……。
そして悟る。オレの気持ちは誰にも知られてはならない。彩音のために、オレは隣を望んじゃならないと。
彩音が幸せなら、オレはそれでいい。それくらい望んでも許されるだろ。なぁ、オビト……。