第21話 修行最終日
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「イナリ君、隣いいかな?」
あの後すぐに立ち去ったイナリ君をこっそり追いかけ、辿り着いたのは家裏の海辺。イナリ君は膝を抱えて海を眺めていた。
私は無言を肯定と受け止め、イナリ君の隣に腰掛ける。
「…ナルトがごめんね?悪気がある訳じゃないんだよ。でも…お父さんが殺されるのは辛いよね……」
「お前に何がーーー」
「私のとと様も殺されちゃったんだ」
突然の告白に目を剥くイナリ。私はそのまま言葉を続けた。
「とと様だけじゃない。かか様も、妹も……。じじ様もばば様も、私以外みんな殺されちゃった」
私の告白に、イナリの顔が段々と下がる。私自身その時のことを覚えている訳じゃない。ただなんとなく、殺されたんだろうな……という記憶だけがある。おじいちゃんも山賊に襲われたって言ってたし。
「でも、私には楽しかった、愛されていたって記憶はあるの。思い出とかは全然思い出せないんだけどね。…イナリ君もお父さんとの記憶、辛いだけじゃないでしょ?」
ついには膝を抱えて顔を埋めてしまった。でも、微かに鼻をすする音がする。楽しい記憶があるから辛いんだろう、悲しんだろう。
「…でも、ナルトにはそれすらないの」
「え?」
思わず、といったふうに上げたイナリの顔は鼻が赤い。私はにっこりと微笑み、言葉を続ける。
「親を知らなくて、友達もいなくて……。何故か里のみんなに嫌われているナルト。でも私、ナルトがいじけたり拗ねたり泣いたりするとこを見たことない。誰かに認めてもらうために一生懸命で、命掛けなの」
いつも邪魔者、除け者扱いされながら絶対に諦めないナルト。一生懸命だけどドジでぬけていて…放っておけなかった。
「ナルトは強いよ。多分、イナリ君のお父さんと同じくらい。…あと、イナリ君のこと一番考えてるのもナルトだと思うよ?アイツ、イナリ君のこと放っておけないみたいだしね!」
言いたいことを伝えると、イナリ君の顔色が元に戻りはじめる。始めのようにまだ海を眺めてはいるがもう大丈夫のはず。そっと隣を立ち、家に戻る。しかし、扉に手をかけたところで全く隠す気のない気配に気付いた。
「…盗み聞きですか、カカシ先生」
「ありゃ、バレちゃった?」
白々しい物言いで物陰から出てきたのはカカシ先生。
「隠す気さらさらないくせに……」
「ハハ、まあ、ありがとな。ナルトのこと」
「ナルトの尻拭いはよくしてましたから!」
胸を張って言えばカカシ先生は少し呆れたように笑った。