第11話 最悪の依頼人
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「…ナルト、景気よく血を抜くのはいいが……それ以上は出血多量で死ぬぞ♡…マジで」
「ギャーーーーー‼ダメダメ‼こんなとこで死ねるかってばよ‼」
「ナルト!あんたって自虐的性格ね。それってマゾよ!」
カカシ先生が笑顔で言うとナルトはいつものように戻り、カカシ先生に手当てを願い出る。それを見て少し安心する。
「もう、ナルト‼ビックリしたよ‼」
「アハハ……。すまねェってばよ」
ナルトの血が頬に付くほど至近距離にいた私は、ナルトがクナイを手の甲に突き刺した瞬間、心臓が止まるかと思った。
ナルトの傷口を見て黙ったカカシ先生には少しヒヤッとしたが、もう大丈夫みたい。
「…先生さんよ、ちょっと話したいことがある」
タズナさんは真剣な顔でカカシ先生を呼ぶ。ついに本当のことを話してくれる気になったらしい。
「あんたの言う通り、これは“任務外”じゃろう……。実はわし、超恐ろしい男に命を狙われている」
「超恐ろしい男……?」
「嬢ちゃん達も聞いたことくらいはあるじゃろう。…海運会社の大富豪、ガトーという男だ!」
ガトー…、世界有数の大金持ちのガトーカンパニーの社長。話によると、裏では麻薬や密売など、かなり悪どい商売を行っているらしい。
「一年前にガトーが波の国に目をつけてな、あっという間に海上交通・運搬を牛耳り、富を独占している。そのなかで唯一、ガトーが恐れているものが橋の建設じゃ」
「なるほどね!だから橋を作っているオジサンが邪魔って訳ね…」
「じゃあ…あの忍達はガトーの手の者…」
「………?」
二人が推察するなか、ナルトだけ目を半開きになっている。…絶対分かってないな……。
「ナルト…絶対分かってないよね……?」
「うぇ⁉や、もちろん分かってるってばよ‼えーとー…つまりー、そのー……」
「はぁ……。つまりね、ガトーって悪者が波の国の船を独り占めしてるの。波の国は島国だから、どこへ行くにしても船が必要になるしね。だけど、今おじさんが作っている橋は誰でも自由に、好きな時に波の国と他国に行けちゃうの。そうなるとガトーが独り占めしている船があまり意味なくなっちゃうでしょ?だから橋を作らせないよう、おじさんを狙っているの」
「なるほど……。ガトーって奴め……。そんな卑怯なこと許せないってばよ‼」
ようやく意味の分かったナルトは、許せないと豪語している。
「…しかし、忍に狙われていると分かっているなら何故高額なBランクにしなかったんですか?嘘までついて…」
「波の国は超貧しい国で、大名すら金を持ってない。もちろんワシらにもそんな金はない!高額なBランク以上の依頼をするような……」
カカシ先生の問いに眉をひそめて答えるタズナさん。なんて声をかけたらいいのか分からず、誰も口を開けない。
しかしタズナさんは急に笑顔になり、陽気に話し始めた。
「なーーに!お前らが任務をやめても気にすることはない!ワシが死んでも十歳になる可愛い孫が一日中泣くだけじゃ‼それにワシの娘が木の葉の忍を一生恨んで寂しく生きていくだけじゃ‼お前らのせいじゃ全くないからなァ‼」
語られた内容に頬を引きつらせる。これは暗に『断わったらお前ら人でなしじゃ‼』と訴えている。お前らのせいじゃないなんて全く思ってない……。
「せ、先生ェ……。とりあえず波の国まで送っていってあげません……?」
「………ま!仕方ないですね。国へ帰る間だけでも護衛をつづけましょう」
私の問いかけにカカシ先生も頷く。流石にここまで言われてやめられるメンタルは持ち合わせていない。
なんだか腑に落ちない部分もあるが、私達は任務を続行し、タズナさんを波の国まで送り届けることになった。