第30話 試験会場へ
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次の日、約束の場所にはすでにみんなが集まっていた。
「みんな!遅れてごめん!」
「彩音が遅れるなんて珍しいな!」
「アハハ……」
あれから、ここ最近の出来事やサクラのことを考えてしまい、夜寝付けなかった。
チラリとサクラを横目で盗み見るも、やはり元気がない。隈もうっすら出ている。
「…揃ったんなら行くぞ」
無愛想なサスケにつられ、アカデミーを目指す。アカデミー敷地内の庭には、中忍選抜試験のためか数多くの忍が体をほぐしていた。
その隣を通り抜け、階段を上がると人だかりができているのに気付く。何やら人が言い争っているような声が聞こえる。内容的に、誰かが扉の前で立ち塞がっているみたい。
「そこを通してください!」
全身緑の人が一歩前へ出る。しかし、扉の前の二人に顔面を蹴られ、後方へふっ飛んでしまった。
「なんてことしてるんですか⁉酷すぎます‼」
思わず声を上げてしまうような蹴りだった。私は人だかりを押し退け、その人に近付きしゃがみこむ。
「大丈夫ですか?」
「あ…いえ、こんなもの……」
大した傷はなさそうだが、口を切ったのか少し血が滲んでいる。私は懐からハンカチを取り出し、そっと口元に当てた。
「大したこと出来ないんですが、よかったら使ってください」
「あ…ありがとうございます……」
相手は戸惑いながらも笑顔で受け取ってくれた。しかし、そのことに安心する間もなく、立ち塞がる二人はニヤニヤと嗤う。
「酷すぎるって?甘ちゃんだなァ」
「こんなことして何になるっていうんですか!」
「これはオレ達の優しさだぜ?中忍試験は難関だ。オレ達も三回落ちている。中忍となれば隊長クラスだしな。それをこんなガキが……。オレ達に勝てないような奴、合格できる訳ないだろ。それをふるい落として何が悪い!」
男の声に周りの下忍達も黙る。確かにこの人達に敵わないなら合格できる訳がない。“三回も落ちている下忍”なら……。
「正論だな。…だが、オレは通してもらう。そして、この幻術でできた結界を解いてもらおうか。用があるのは“三階”なんでな」
サスケの言葉に何を言っているんだという声が上がる。そう、私達の目的地はここじゃない。
「サクラ!お前なら一番に気付いてるはずだ。お前の分析力と、幻術に対するノウハウは……オレ達の班で一番伸びてるからな」
ニッと笑ってサクラを見やるサスケ。サクラは少し気恥ずかしそうに笑って、何か吹っ切れたような顔になる。…なんだ、サスケもやっぱりサクラのこと、ちゃんと見てたんじゃない。
「えぇ、もちろん気付いてるわよ……。だって、ここは“二階”だもの!」
途端空間が歪み、プレートが301から201に変わる。幻術が解かれた。
「ふーん…なかなかやるねェ。でも、見破っただけじゃあ……ねぇっ‼」
突然塞いでいた一人が、サスケに向けて鋭い蹴りを放とうとする。気付いたサスケがそれに応戦しようと足を上げた。しかし……。
バシッ
「なっ⁉」
間一髪のところで、両者の間に入り込んだ人に足を掴まれ止められる。それは先程殴られていた、全身緑の服の人……。殴られていた時とはまるで別人の身のこなしとスピードだ。
その人はチラリとこちらを見て、向かって来た。
「ボクの名前はロック・リー。先程はありがとうございました。ですが、ハンカチを汚してしまいまして……どうお返しすれば……」
リーさんはとても申し訳なさそうに血の滲んだハンカチを握りしめる。その様子が少し可愛くて、クスリと笑ってしまう。
「ハンカチくらい、気にしないでください。私の名前は乱舞彩音。それは差し上げます。また汚れた時にでも使ってください」
にっこりと笑って言えば、リーさんは嬉しそうに頬を緩ませる。
「なんと心優しいのか!彩音さんと言うのですね!」
しかし、次に放たれた言葉は、私に衝撃を与えるには充分なものだった。
「ボクとお付き合いしましょう!死ぬまでアナタを守りますから‼」