第24話 橋の完成
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サスケの心臓が止まっている。息もない。まだ温かいのに……。
目の前が真っ赤に染まる。未だかつてない禍々しいチャクラが、私の全身を覆い尽くす。でも大丈夫。“これ”は私を傷付けない。
体中の傷が“それ”によって治っていくのを感じながら、私は思いっきり息を吸い込み、そして叫んだ。
“ーーーーーーーーーっっっ!!!!!”
およそこの世の音とは思えない声を発した瞬間、禍々しいチャクラが一段と溢れ出し、氷が音をたてて崩れる。
逃げ場を失った敵に、私は“それ”へと命令する。“奴を殺せ”……と。
それは面をめがけて鋭いパンチを打ち込み、粉々に崩れ去る。現れたのは一昨日の男の子のそれ。
『君には大切な人がいるんですね』
“それ”は止まらず、立て続けに爪を突き立てようとする。
『人は…大切な何かを守りたいと思った時、本当に“強くなれる”ものです』
その子の瞳に浮かぶ涙を見て我に帰った。
「っダメーーーーーー!!!!」
間一髪、その子の目と鼻の先で爪は止まり、“それ”……うずまきナルトも我に帰る。
「お前は、あん時の……」
「何故、止めるのですか……?」
やっぱり白は一昨日の男の子だった。優しげな瞳に光は無く、絶望しか映ってなかった。
「なんで…なんであいつのためなんかに‼お前の大切な人って、あんな悪人しかいねぇのかよ‼」
「…ボクにも昔、大切な人がいました。…ボクの両親。しかし、父はボクが血継限界を持つ者だと知ると殺そうとしたのです」
まるで日常会話をしているような声。内容と表情が噛み合わず困惑する。
「血継限界は強過ぎるが故、忌み嫌われるもの」
淡々と語り出す白の表情は変わらず、ただ無機質に言葉を紡ぐ。
「でも、再不斬さんは…再不斬さんだけはこの血を必要としてくれた。…嬉しかった……!」
心底嬉しそうに涙を流す白。誰にも必要とされない孤独とはどういうものなのか。私には分からない。
「ボクを殺してください。…君の手を汚すことになってすみません……」
「それしか…それしか方法がないの⁉だって、そんなの……‼」
そんな私の叫びにも白はにっこりと微笑むだけで、考えを変えようとはしない。
「…分かったってばよ……」
ナルトは決意してクナイを構え、静止の声を上げる間もなく走り出した。しかし、ナルトのクナイが白を貫こうとした瞬間、白は血相を変えて避ける。ナルトも急な出来事に目を剥く。
「ごめんなさい!ナルト君‼…ボクにやらなければならないことができました‼」
そのまま私達の前から姿も気配も消してしまった。
「アイツはどこ行ったってばよ‼」
白がいなくなったことにより、サスケの死が急に現実味を帯びて私を襲う。ナルトの喚きも聞こえないかのように、私はサスケの側に座り込んだ。
「…オレはアイツを探す!彩音!お前はここにいろよ‼」
ナルトが白を探しにいなくなると私とサスケだになる。さっきまでの煩さが嘘のように静かで、私の心も静まり返る。まるでただ寝ているだけのような顔をしているのに、触れると冷たくて……。
いつの間にかサクラとタズナさんが隣に来ていたようだ。大量の涙を流すサクラが綺麗で、私は無言でサクラを抱きしめる。サクラの泣き声が一層大きくなるのを、どこか他人事のように感じた。
全てが遠くなる。痛いも辛いも感じず、ただただやり場のない空虚感を持て余していた。