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いちゃいちゃするおはなし


無自覚の当たり前。


僕、島崎藤村は最近あることに気が付いた。
司書さんが食堂や図書室で座っているとき、国木田は挨拶して、何食わぬ顔で必ず隣に座るのだ。
そのまた逆もしかり…つまり、司書さんもそうだ。当然のように国木田の隣に座り、談笑する。まるで片時も離れたくないと言うように、お互いに隣に居るのだ。
二人はもしかしたら恋仲なのかな?そんな噂は聞かないけど…もしあったとしても、僕が聞き逃すわけない…はず。
何にせよ、このままでは気になって仕方がない。それとなく取材してみよう。まずは…食堂にいる国木田から。

「国木田、ちょっといいかい?」
「お、島崎。何だ?」
「国木田はいつも司書さんの隣に座るよね。他に空いてる席はあるのに、どうして?」
「え?だって当然だろ?あいつの隣は俺の場所だからな」
「じゃあ国木田の目の前で、司書さんの隣に知らない男の人が座ろうとしたら…どう思う?」
「そりゃ嫌だろ」
「…そう。ありがとう。参考になったよ」

僕は国木田にお礼をひとつ言うと、司書さんがいるであろう司書室へ向かうことにした。
後ろからかすかに「何の参考だ…?」と聞こえたけれど、聞こえないフリをした。

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司書室に入ると、司書さんは少し休憩をしていたようで、コーヒーを飲みながら窓の外を眺めていた。
仕事をしてたら話しかけにくかったから、タイミングが良かったのかも。早速質問を投げかける。

「司書さん、少し時間いいかな?」
「島崎先生。いいですよ」
「司書さん、いつも国木田の隣に座るよね。空いてる席もあるのに…どうして?」
「えっ?…んー…何て言うんでしょうね、わたしの隣に国木田先生がいるのが当たり前になってるから…」
「じゃあ…知らない女の人が国木田の隣に座ろうとしたら、どう思う?」
「ええっ…それは嫌…」
「…そっか。ありがとう。話が聞けて良かったよ」

僕は司書さんにお礼を言う。逆に「もういいんですか?」と聞かれたけど、「うん、充分だよ。じゃあ僕はこれで」と答えて司書室をあとにした。

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僕の取材によると、二人はお互いに意識しあっていると思うんだ。あれで恋仲じゃないんだから、無自覚って罪深いよね。まあ、男女間の単なる友情…と、言ってしまえばそれまでだけど。
二人が抱いてる本当の気持ちに気がつくまで、しばらく見ていることにしようかな。


【了】
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