文司書
お相手の文豪に♡♡しよと言われた
啄司書
二月ある日の昼下がり。窓からはぽかぽかと日が差して、うららかな日。
俺様は助手であるにもかかわらず、やることがなくて暇だった。逆に司書は机に向かい、もくもくと仕事を続けている。大抵の仕事はこいつが片付けちまう。よくもまあそんなに真面目に取り組める。その生真面目さは見上げたもんだ。
俺様は退屈そうにひとつ欠伸をして司書をちらと見る。
書類に集中して伏し目がちな瞳。万年筆を唇に持っていくしぐさ。無意識に髪をかき上げるしぐさ…そのどれもがどこか官能的に見えた。喉がごくりと鳴る。
「…なぁ…」
「はい」
「…しようぜ」
気が付いた時には言葉がくちをついて出ていた。やっちまった、と思った。
司書は、と言うと。こちらに目もくれずに相変わらず書類仕事をしている。
「お昼から随分と酔っていらっしゃるようで」
「…素面だ」
「そうですか」
素っ気ない返事がくる。…そうだった、こいつはいつだってこういうやつだ。一応は恋仲であるというのに、ドライすぎるこの反応は流石の俺様も傷つくぜ。
「…嫌なのかよ」
ぶっきらぼうにそう言うと、司書は俺様のその発言に目を丸くしてこちらを見た。…かと思うと、すぐまた書類へと目を戻して、小さな声で言った。
「…そんな、好いた相手から求められて…嫌なわけ…」
「じゃあ」
「…つまりは時間帯の問題ですよ…。…なので…夜になったらもう一度言ってください…」
「…!」
まさかそんな言葉が飛び出してくるとは思わなかった。
思わず驚いた顔で司書へ目をやると、相変わらずこちらを見てはいない。
しかし、その頬は淡く赤に色づいていた。
「…ああ、そうさせてもらうぜ」
「…はい。…今夜は寝かせません」
「…それ、俺様の台詞」
【了】