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ネヴァ

「南、この近くにいるみたいだけど、お店が分からないみたいだから、ちょっと迎えに行ってくるね」

 そう云って槙原が席を立って早5分。6人掛けのテーブルでは会話もなくただお互いが食べ物を咀嚼する音だけが響いていた。

「おい、なんか喋れよ」

 さすがに野郎3人で黙って飯を食うという状況は耐え難かった。周りの喧騒がやけに遠く感じる。

「・・・おい、煉慈のやつ、英語はあれで本当に大学に行けるのか」

 俺の正面でチビチビと酒を啜っていた辻村吾郎が急に口を開く。目の前の男は完全に俺に向かって話しかけていたが、その問いが俺に向かって放たれていないことは明白だった。

「落ちるんじゃない」

 俺の隣でスモークサーモンを摘まんでいた神波誠二は飄々とたいして興味のない体で答える。

「お前、英語得意なんだろう。煉慈に英語を教えてやれ」
「嫌だよ。面倒くさい。あなたが教えればいいじゃない。それとも高校英語程度もできないの?」
「俺は仕事が忙しい」
「人を暇人みたいに云わないで」

 どうしてこいつらは俺を跨いで喧嘩なんかしているんだろうか。正直不愉快だ。俺は黙ってグラスに残っていた酒を一気に喉へ注いだ。

「お前、煉慈の兄貴だろ。弟の勉強ぐらいみてやれ」
「俺は正直、あの子の英語の能力を見て本当に血がつながっているのか疑っているよ」

 神波が口元に嘲笑を浮かべながらさらりと云う。俺は段々この席にいない煉慈が可哀想になってきた。まず、どうしてこいつらは煉慈に英語を教えてやることを前提に考えているんだ?

「そういうのは槙原に任せとけばいいんじゃないか。」
「それでもダメだから話してるんじゃない」
「それでもダメだから話してるんだろ」

 このあと白羽の矢が立つだろう英語教師が帰ってくるまであと少し。
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