現十二番隊の元鬼殺隊は
あれから、さらに一年ほどの時が経った。黒崎一護、ならびに彼の仲間たちや勇慈もまた高校三年生になり、勉学に勤しむ毎日を送っている。あの戦いから一年と五か月。初夏の日差しがじりじりとアスファルトを焼き、うだるような暑さになったそれが陽炎を生み出している。その帰り道、土曜の補講を終えた二人が並んで連れ歩きながら帰途についていた。
「進路…進路なぁ……勇慈、お前そういや進路どうするんだ?」
「実際に修学するわけにはいかないから……そうだな…浦原さんのとこで働く、と適当に言い訳しようと思っている」
「ああ、そっか。今親戚だったな」
「体裁はそうだな…。とりあえず明日は、尸魂界に一度戻る。来週は義魂が代わりに授業に出ることになる」
「ン、分かった。なら後でノート見せてやるよ」
「助かる」
俺はどうするかなぁ。なんて呟きながら一護は空を仰ぐ。そうしている間に、分かれ道だ。それじゃあ、俺はここで、と手を振って一護と別れる。気を付けて帰れよ。と言い残して一護もまた歩き出す。それに背を向けて勇慈は浦原商店の方へと歩き出した。
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浦原商店に帰ってくると、商店のガラス戸には”店休日”と張り紙が貼りだされていた。今朝出るときにあっただろうか。記憶がない。ともかく帰る家はここなのだからと、気にすることもなくガラリとガラス戸を開けた。
「ただいま」
しん、と。駄菓子の並ぶ棚の奥、居間と店舗を区切る障子もぴしゃりと締め切られ、店内は薄暗かった。そして、人の気配もない。さては勉強部屋か、研究室か。いずれかだろうと気配を集中させ、霊圧を辿ると意外な人物の気配を察知した。
「……?マユリと、これは……朽木…か?」
浦原、そして鉄裁の側に見知った霊圧が二つ、一つは間違いなくマユリのものだった。もう一つは恐らく、朽木ルキア。店舗より下層のフロアから察知したそれに、マユリはともかく何故朽木がここに?と訝し気な顔を浮かべながら、ひとまず鞄を置いて向かってみる。店舗に仕込まれている隠し扉からはしごを降りて、まずは地下空間へと歩みを進める。その広大な空間の中に片隅から霊圧は発せられていた。瞬歩を用い軽やかに駆け抜けると、あっという間に目的地にはたどり着ける。
そこにあったのは、白い建物だった。扉は開け放たれていたので遠慮なく中を覗き込むと、部屋の中のいたるところに機械が並び立っており、地面には乱雑なコードが張り巡らされている。[[rb:技術開発局 > ウチ]]でこのような粗雑な配線をしようものなら隊長から小言の一つや二つ(で済めば優しいが)当然飛んでくるので、なんだか新鮮な心持がする。
「来たかネ。待ちくたびれたヨ」
部屋の奥から歩いてくる猫のように丸まった背中をした影が現れる。マユリの声だ。心なしか疲れているように感じるのは気のせいかと思っていたが、姿が露わになるにつれてそれは正しいと思えた。少し見ない間に、僅かだが目元に疲労が滲んでいるようだった。
「お前、疲れているのなら寝ろ」
「そうもいくまい。いよいよ完成したんだヨ」
「何が」
「黒崎一護に霊力を取り戻させる為の道具がだヨ」
「! 本当か?だからそんなに疲れているのか」
「何?……無様だネ。なら忠告通り、これが終わったら少し休むとしよう。兎も角きたまえ。浦原喜助がお待ちかねだ」
くるりと背を向けて歩き出す。その背について配線を跨ぎながら建物の奥へ奥へと歩いていく。奥へと進むにつれ、機械の駆動音と、淡く瞬いているランプに目がちかちかとする。なんとか躓かずに配線の海を越えると、浦原はモニターの前にいた。そして、やはりそこにいたのは朽木ルキアだった。
「いやぁ、待っていましたよ冨岡サン!おかえりなさい」
「ただいま」
「久しいな、冨岡!」
「朽木も。久しぶり。お前がここにいるという事は…一護絡みか?」
「ああ、そうなのだ。浦原から連絡が入ってな……浦原、これで揃っただろう。本題に入ってくれ」
「ハイハイ早速。鉄裁サンお願いします」
「承知!」
浦原に促された鉄裁が部屋の隅にあった台車を押してきた。その台車の上には、透明の円筒が乗せられている。その中に、光る刀が浮かんでいた。
「これが…?」
「ええ。これが、黒崎サンに力を注ぎこむ為の刀です」
「力を注ぎこむという事は……これは、斬魄刀なのか?」
「斬魄刀とは異なるモノだヨ。参考にしたのは、志波一心……黒崎一心の剡月だがネ。奴の斬魄刀と近しい性質を黒崎一護の斬魄刀は有しているのだから、利用する以外ないだろう」
「てことで、試しにこれに霊圧を込めてみてくださいよ。ホラ、ぎゅっとぱっと一瞬で凝縮する感じっス!」
「ぎゅっとぱっと……」
わざとだろうが、要領を得ない説明に背中を押されながら刀の前に出る。手を翳して、霊圧を操作して手のひらに圧縮させていく。鬼道は不得意な方だが、霊圧の操作自体はある程度は出来るのだ。
「(ぎゅっと…ぱっと……)」
指の先から手のひら、手のひらから腕、腕から上半身、上半身から全身にとだんだんと血が巡り熱くなり始める。ヒュウウウ……と無意識に呼吸をし、じわりと頬に痣が浮かび上がっていた。それを細い目で見守る視線にも気づかず、手のひらに集まった焼けるように熱い力の塊が、均衡を破ってすぅと一瞬で抜けていく。
「!?」
かくん、と膝が抜けた。それをおっと危ないと危なげない様子で支えた浦原に目を白黒させながら、何があった…?と困惑する。
「いやぎゅっとぱっとて言ったのはボクですけど、ちょっとごっそり持っていかれすぎてません??立てます?」
「あ、あぁ……」
「お前が態とそんな雑な説明をするからだろう。浦原喜助」
「いやぁ、理詰めで説明するよりいっかなーって思っちゃって…アハハ」
ふら、と傾いた姿勢を正すと、確かに自分の内側から熱はごっそり抜け落ちていた。その代わり、目の前の刀に暖かな灯が宿ったような心地がする。
「そんな感じで、霊圧を込めてもらうんスよ。見てもらったら分かりましたかね?朽木サンも」
「あ、あぁ……では早速私も…!」
「ア、待ってください。朽木サンには最後に霊圧を込めてもらいたいんスよ」
「最後に?何故だ?」
「えぇとですね。この刀に込められた霊圧はそれぞれは混ざりあうことなく独立した状態で、核である一心サンの霊圧の周囲に蓄積されていく仕組みなんスよ。アタシや涅サン。今手伝ってもらった冨岡サンに、現世にいる皆さんたちにもね。木の年輪みたいな感じっスね」
で、ここからが肝心。ぴ、と指を一つ立てて浦原は続ける。
「朽木サン。貴方は一度黒崎サンに霊圧を譲渡している。つまり、他の霊圧よりも馴染みやすいんですよ。だから、最後のコーティングをお願いする事で、黒崎サンは他の大勢の霊圧にも馴染む事が出来るって寸法です。その最後の一仕事を、貴方にはお願いしたい」
「なるほど……そういう事なら、わかった。最後に込める役目、確かに引き受けたぞ!」
「では早速。この刀を尸魂界に運ぶ段取りをするとしましょうか!西流魂街の空鶴サンのお宅に運んでおくんで、朽木サン、冨岡サン。貴方達は戻って協力をお願いできそうな方に連絡をお願いしてもいいですか?」
「わかった」
「うむ!まかせておけ!」
「普通なら、死神能力の譲渡などの法を犯す愚者を検知するために、技術開発局ではある仕掛けを施しているんだがネ……事をさっさと済ませる為だ。明日一日、その機能を開放しておく。君たちはさっさと伝令神機を用いて連絡をいれ給え」
「なんと……涅隊長、ありがとうございます……!」
「フン、その代わり。黒崎一護が霊力を取り戻したらその暁には霊圧収束に関しての実験とデータ収集に駆り出すから覚悟して置く事だヨ。わかったらさっさといけ」
しっしっと追い払う仕草にもひるまず、ルキアは深く深く一礼をして部屋を後にする。その途中、派手に転んだのはルキアの名誉のためにも触れずにおくべきであろう。浦原は配線どうにかしよ……とひっそりと思っていたとのことだが。
「さて、では私たちも帰るとするヨ。勇慈。……勇慈?」
振り返ると、勇慈が真剣な顔をして伝令神機を見つめていた。何をしているんだとそちらに寄ると、マユリ…と真剣な声色で名を呼ばれる。それにぴり、と気を引き締めて、なんだネと問い返す。
「重大な事に気づいてしまった」
「言い給え」
「お前以外、友達がいない」
「……」
「どうしよう。阿近と鵯州に連絡を入れておけばいいか……?」
浦原が扇子で口元を隠しながら、ちら、と何か言いたげな顔でマユリを見つめる。
フーーーッ、と大きなため息をつきながら、マユリは頭を抱えて声を絞り出した。
「……男性死神協会にでも当たり給え…」
「! その手があったか。感謝する」
いそいそと伝令神機に文面を綴りだす友人と、頭を抱えている元部下のやりとりと、元十二番隊隊長はそれはそれは微笑ましいモノを見る目で見つめていたという。
その日の事であった。石田が、何者かに襲撃をされて入院したという話が舞い込んできたのは。
黒崎一護が、何か追い詰められたような顔をするようになったのは。
時は流れて尸魂界、朽木ルキアからの電子書簡が尸魂界を駆け巡るその中。ルキアから貰った文面を、勇慈は男性死神協会の中でも、最も親しみやすかった檜佐木修兵ただ一人に書簡を飛ばしていた。余談だが、檜佐木は何かと不憫な役回りを引き受ける事が多いため、彼と吉良イヅルから書簡が送られてきた時には涙を流して喜んだという。それほど喜ばれているとは露知らず。
計画は順調に進んでいた。銀城空吾が、黒崎一護に接触した徴候在りという緊急の入電が入るまでは。
「これは緊急の案件だ。お前には現世に向かってもらうヨ。任務内容は、黒崎一護及び銀城空吾の監視だヨ」
技術開発局の隊首室に呼び出され、モニターに銀城の映像を流しながらマユリは語る。
「現世の滅却師がこいつにやられている。今のところ、銀城空吾は黒崎一護に死神の力を取り戻させるだか甘言で言い包めて引き入れているようだからネ。それと、こいつの側にいる細面の男。これが銀城空吾を斬った後で、どういう理屈か完全に敵対しているようだがネ」
実に興味深い。にたりと笑いながら話すマユリは上機嫌で、まだ見ぬ未知を見つけた喜びに彩られている。
「一護が、敵の誘いに乗るとは思わない」
「銀城空吾が黒崎一護に接触する事は想定済だったろう?そして黒崎一護を餌として銀城空吾をおびき寄せ、両者ともども抹殺するという計画も。まァ……昨今の尸魂界は、その気風ではないのは事実だがネ。……とはいえ、念には念を入れるとするヨ」
モニターを消したマユリが指令を下す。
「勇慈、お前の仕事はただ一つ。この細面の……月島という男に”斬られる”事だヨ。私の推測が正しければ、この術は何らかの催眠、ないし、暗示の一種だ。そうでなくては、銀城空吾がまるで仇を見るような目で月島を警戒する理由もない。演技でない事は、あの滅却師を斬り捨てた時の台詞でわかるだろう。であるからして、種が分かれば恐るるに足らん。いかな暗示を受けようとも、お前が私を裏切る事などありえようはずもないからネ。続く任務とお前の為の実験台となり給え」
「わかった」
決まり切った言葉を返す。そしていくつか打ち合わせをしたのち、十二番隊が管理する穿界門へと足を運ぶ。断界を超え、現世へ。浦原商店のすぐそばに門を開いて現世に降り立ち。さて、どう探したものかと思案する。
「………出汁にするようで悪いが、学校で一護か皆に接触してみるか…」
よし、と方針を固めて義魂の帰りを待つ。石田にも接触せず、一人でやられるべきだろう。そう考えて、浦原商店の屋根の上で日が傾くのをぼう、と見つめて待ち続けていた。
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後日。学校で一護に顔を合わせる事はなかった。ここ最近休んでいるらしい。井上に、しばらく居ない間に変わりはなかったか?とそれとなく話題を振るも、一護については分からず終い。ただやはり、石田がやられたというのは大きかったらしい。不安げな様子を浮かべていた。そんな井上に、勇慈はもう一つの本題を振った。
「井上、ところで話が変わるんだが……細面で黒髪の…月島、という男を知ってるか?」
「え?!月島さん?月島さんならついこの前会ったばっかりだよ。どうしたの?それに、変な言い方しちゃって」
「いや。何でもないんだが…ここ最近、尸魂界に引っ込んでいたから……そうだな……久々に顔を合わせたくなって」
「えー、絶対喜んでくれるよ!一年とちょっと前に助けてくれてっきりだっけ。勇慈くんが会うの。きっと喜ぶよ!」
「……ああ。喜んでくれると、嬉しい」
映像庁から技術開発局に引っ張ってきたデータによれば、井上もまた月島に斬られていた。そして、この言動で仮説を立てられた。藍染との戦いの最中、”月島という男は存在していない”のにも関わらず、井上は月島さんのおかげで勇慈が助かったと話していた。
つまり、暗示の中でも過去に関わるものだ。ならば、銀城空吾もまた過去を改変する暗示を受けて今ひと時は一護の味方になっていると思われる。
「……」
「冨岡くん?」
「いや、何でもない。この街にいるのなら…そうだな、探してみるよ。放課後にでも。一護もいないか探してくる」
「うん、お願いね。…あ!そうだ、あたし月島くんのケータイの番号知ってるよ。電話しよっか?」
「…!いいのか?」
「うん、もちろん!」
にこりと笑う井上の笑顔には嘘偽りなく、月島という男を慕う色が浮かんでいる。月島という男の影が、井上の中にある。一護を追い詰めるための策か。ならば、その術中に自らも嵌ろうではないか。一護はきっと悲しむだろうが、待っていろ。尸魂界の皆が、お前を助けに行く。
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深夜。ちょうど日付を跨ぐ半刻ほど前。義骸を纏ったまま人気のない廃工場付近を指定して、待ち合わせていた。腕を組みフェンスに寄り掛かって待っていると、こつこつと靴の響く音が木霊する。
目を開ける。はたしてそこにいたのは、映像で見た通りの知らない男——月島だった。
「やぁ、井上さんから聞いたよ。久しぶりだね。勇慈」
「……俺はお前を知らない。だが、銀城と仲間なのは知っている」
「おや、そうかい。それで?僕と彼が仲間なのを知らしめて、織姫たちを混乱させたいのかい?」
「何が目的だ」
わかりきった事を聞く。それに肩をすくめて、わかっているのだろう?と月島は返事を返す。
「…まぁ、ちょうど尸魂界側の人にも”挟めたら”いいなと思っていたんだ。せっかくだ、君も一緒においでよ」
「……断る!」
ソウル・キャンディを口に含み義骸を脱いで抜刀する。それに月島が剣を以て応じる。刀と剣の交わる音が工場に響き、ぎりぎりと鍔迫り合いの音が響く。打ち払い、横薙ぎに切り払うのを月島は後ろに下がって躱し、剣の刺突を刀で受け流す。剣戟は、勇慈の方に圧倒的に分があった。痣を開放し、最初から月島を殺す勢いで怒涛の呼吸を繰り出す。月島は少し険しい顔で、何とか刀を捌いていく。
「っ…流石、だね……君の『呼吸』も『痣』も、やっぱり君は強いよ」
「…何故、お前がそれを知っている」
上段から振り下ろした刀を両手で構えた剣で受け止めながら、月島は笑う。
「だって、”彼岸花”に話してもらったからね」
「!?」
「なにしてんの!二人とも!?」
その時、ここにあるはずのない声が響き渡る。虚を突かれた勇慈が弾くようにそちらを見ると、黒崎一護の妹たちが、遊子と夏梨が、不安に揺れた目でこちらを見つめていた。
「冨岡さん!シュウちゃん!やめてよぉ!」
自分の姿が見えていないはずの遊子が、悲痛な声を上げる。まさか、この二人にまで手を掛けていたのか、そう思う本心と好機だと思う本能に呆けている間に、すぱ、と至極あっさりと斬られる。
「————っ……あ」
その時、脳裏に過った月島の影に、頽れそうになったのを月島本人に支えられる。そしてそっと、耳元に顔を寄せた月島が囁くように過去を挟み始める。
「……ごめんね。喧嘩なんかして。もう怒っていないよ。……あぁ、そういう事。尸魂界の連中が何か企んでいるのを、どうにか脱出して僕たちに知らせに来てくれたんだね」
「……は…」
「大丈夫。怒ってないよ。ほら、立って。遊子も夏梨も、心配しているよ」
そうだったか。そうだった
「……あ」
視界が揺れる。ダメだ、考えるな。月島
「二人とも、怪我してない?!」
ばっと側に走り寄ってきた遊子と夏梨に気を取られ、揺れるその思考もどこかへ消えてしまった。まずは、二人を落ち着かせねば。義骸を呼び寄せ纏いながら、二人と自分に謝る勇慈の姿を、うっそりとした笑みで月島は迎えていた。
「……一先ず、帰ろうか。そろそろ一護も帰ってくるだろうしね」
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一護は目の前の光景を信じられないものを見た衝撃に動揺していた。
招かれた屋敷で月島に月島を護るように背に守る井上とチャド、そして勇慈と相対したからだった。
「——『双天帰盾』 私は拒絶する」
月島の左腕が事象の拒絶を受け、元に戻り始める。それを絶望した顔で、震える声で一護が止める。
「やめろ…井上……そいつの腕を治すなよ…!」
それを悲し気な瞳で見つめ返す井上に、元通りになった腕を軽く慣らして、ありがとうと声をかけると井上の悲し気な表情は柔らかく綻んだ。その月島の前にチャドと勇慈が立つ。
「チャド…勇慈…!やっぱりお前らも同じなのかよ…!」
「…”同じ”の意味が分からない…。俺はむしろ、”違う”から戸惑っている…。一護、どうしてお前はこんな事をしているんだ…!」
「……俺は刀を抜く気はない。一護。俺の刀は、お前を斬る為のものじゃない」
刀の柄にすら手を掛ける事なく勇慈は答える。だが一護に与するわけでもないその態度に、一護の顔はますます悲壮なものになる。
「黒崎くん…今まで、月島さんに助けてもらってきた事忘れちゃったの?」
「朽木を助けられたのも、藍染を倒す事が出来たのも、全部、月島さんがいたからじゃないか…!」
「………っ…!」
「理解、できているかい?」
いつの間にか背後に居た月島に、一護が衝動的に完現術の刃を振るう。その衝撃で屋敷の壁に孔が空き、轟音と共に屋敷が揺れる。階下から子供たちの悲鳴が聞こえた。ここで戦うつもりなのか、と見つめながら、井上とチャドに声をかける。
「井上、茶渡。俺は下に降りて皆を逃がしてくる。一護は頭に血がのぼっているらしいからな」
「…!下には遊子ちゃんや夏梨ちゃんもいるのに…!」
「わかった…皆を、頼む」
こくり、と頷いて瞬歩で立ち去る。崩れた階段を飛び降りてみると、案の定そこには先ほどの轟音に震えていた遊子や夏梨、彼女たちを庇って共に身をかがめていた有沢、そしてその周りに浅野と小島、さらにその側には一護のバイト先の店長と聞いていた鰻屋育美の姿もあった。
「皆、逃げるぞ。上で一護が月島さんと喧嘩している」
「! シュウちゃんと一兄が!?」
「大変、冨岡さんお兄ちゃんを止めて!」
「あいつまた喧嘩してんの!?月島さんは無事なの?」
「無事だ。井上や茶渡もいる。先に屋敷から出る」
扉はやや歪んでいたが、全集中の呼吸を用いれば蹴破ることなど造作もない。ひと思いに扉を蹴破って外への脱出口を作ると、有沢と育美を先頭に子供たちを先に逃がし、小島、浅野、そして殿に勇慈がついて屋敷から脱出した。そのまま庭を通り過ぎ森の中を通って、最寄の公園までみんなで歩いていく。遠く離れた所で、霊圧同士のぶつかり合う気配がした。夏梨もそれを感じ取っているのだろう。特に不安げにちらちらと後ろを見るものだから、大丈夫だと宥めすかしながら森の中を歩いて行った。
「一護のヤツ、ホントどうしちゃったんだ…月島さんって一護の親戚だったよな?なんであんな剣幕で怒ってるんだ…?」
「さぁ。…ったく、ホントあいつ何やってんだよ…!」
浅野と有沢がぎり、と歯を噛みしめながら一護にバカとぼやく。その二人を見つめながら、ふと見知った霊圧に気付く。これは、石田のものだ。石田が、一護の側にいる。殿を務めていた勇慈が足を止めると、すぐ隣を歩いていた浅野が冨岡…?と声をかけて立ち止まってくれた。
「どうしたんだ、急に立ち止まって」
「……ここまで来れば、もう大丈夫だ。だが念には念を入れて、公園まで避難していてくれ。俺は…月島さんの様子を見に行く」
「お前も戦えたもんな…。わかった、気を付けていけよ」
「ああ」
ぱくりとソウル・キャンディを口に含んで義骸を脱ぎ捨て、瞬歩を用いて一足飛びに駆け戻る。屋敷の元まで戻ってきて、屋根の上に飛び上がる。とん、と降り立った時。そこに在ったのは
「……!」
「貰うぜ、お前の
銀城に刺し貫かれて力を根こそぎ奪われた、一護の姿だった。
「おかえり、勇慈。みんなを巻き込んでしまってごめんね」
「構わない。次は気を付けてくれ」
「ふふ、分かっているよ」
ぽたり、雨が降り始めた。天を仰ぐと雨足は段々と強くなっていく。その雨の中、一護の慟哭が響き渡る。
「泣いているのかい。可哀想に」
「好きに泣かせといてやれ。そいつにもう用は無え。そして恐らく…もう会う事も無え」
ぎり、と一護が拳を握り締める。
「返せ…返せよ銀城…俺の力を、返せ…!」
「何言ってんだ?お前。元々俺のおかげで取り戻した力だろうが。俺が貰って何が悪い?」
は、と鼻で嗤って銀城は嘲り、背を向けた。
「用済みの癖に。命もとらねぇんだ。礼のひとつでも言ってくれよ」
「銀城…!銀城!!!——————ッ!!」
一護を刺し貫く影がもう一つあったからだ。それは背後からだった。一護が震える顔で振り向くと、そこに居たのは
「親父…浦原さん……!」
震える手で自分を貫いている刀に手を添える。泣き出しそうな瞳で。涙が雨に濡れて零れていくのを拭うこともできずに、絞り出す。
「親父たちまで…
「……馬鹿野郎。俺じゃねぇよ」
「よく見てみろ。もう見えてるはずだ。その刀を握ってるのが、誰なのか」
目を見開く。そこに在ったのは、
「——————ルキア…」
瞬間。爆発的な霊圧の暴風が吹き荒れる。背を向けていた銀城と月島はその煽りに目を見開き、馬鹿な…と呟いていた。
ぐるぐる巡る霊力の風が竜巻のように渦を成し、ぐるぐる巡る霊圧がひとところに収束されていく。徐々に徐々に小さくなるそれが収まった時、そこに在ったのは死覇装を纏った一護の姿だった。一護の霊圧がする。一年と五か月前。無くしたあの強い力の波が伝わってくる。勇慈は目を伏せてルキアが間に合った事に安堵していた。
「久しぶりだ…一護……暫く見ぬ間に随分逞しく……なってないわたわけ!!!」
「痛え!!!」
ルキアの蹴りが炸裂する。派手に回転し転がる一護にルキアがすごい剣幕でまくし立ててゆく。
「貴様という奴はだらしなくピィピィと泣き腐りおって!!私が見張っておらぬとす~~ぐ腑抜けるな貴様は!!あぁ情けない!!」
「そんな言わなくてもいいじゃねぇか……」
一護は涙目であった。ただし悲嘆ではなく痛みでだが。
「————月島とやらの能力は浦原から聞いた。”過去を塗り替える”とは、成程。想像するだに恐ろしい能力だ……」
「だが、それがなんだというのだ」
「いくら貴様の過去を塗り替えようと、貴様の未来を変えられはせぬ!」
「失った絆ならば、もう一度築き直せば良いだけの事だ!!」
「違うか!一護!!」
「……ルキア、一つだけいいか?」
「む?」
「俺の過去は、別に変えられてねぇ…!」
「いい顔して茶々を入れるな!!」
「危ねぇ!!」
賑やかしいことである。それを他所に黙したまま立っていると、月島と銀城が傍に立つ。
「馬鹿やってんのはいいけどよ。死神の見た目だけなぞって”死神の力を戻した”つもりか?今のそいつに死神の力なんざ残っちゃいねぇよ。俺が根こそぎ、奪い取ってやったんだからな。その全くのゼロからてめえ一人の霊圧を注いだくらいで、黒崎の力が戻るはずが無え!」
「馬鹿野郎。ルキア一人じゃねぇよ!!」
空間が裂ける。銀城がそちらに目を向けると、穿界門が開く。宙に生じた門が開いて中から現れたのは、朽木白哉。阿散井恋次。日番谷冬獅郎。更木剣八。斑目一角。隊長副隊長の面々だった。
「恋次、白哉…冬獅郎に剣八、一角まで…!」
「その刀には俺達全員の霊圧が込めてあるんだぜ?一護一人の霊圧くらい戻せねぇ訳がねぇだろ!!」
「無論、俺も込めている」
銀城と月島が、それまで黙っていた勇慈に目を向ける。
「勇慈それは……酷いな。君の命を救ったのは僕だろう。それなのに、僕たちを裏切るのかい?」
月島が過去を撫ぜるように語り掛ける。月島との記憶が訴えている。大恩ある月島を裏切るのか、と。ぐわんと脳が揺れる。なるほど、強い能力だ。過去は”変えられない”。ならば、俺を救ってくれた友人との友情も想いも、”変えられない”
「……俺は、確かに月島さんに恩がある。お前のおかげで、俺は藍染から救われて生きている。……だが、いつだって、俺の意志を汲んでくれたのはマユリの方だった。痣で死ぬことを許してくれて、怒ってくれた。お前は何も言わなかった。そのマユリが一護につくのなら、俺はお前に刃を向ける」
そう言い切ると、月島は絶句して目を見開く。そのまま横をすり抜けて一護の側まで歩み寄ると、くるりと向き直って刃を月島に向けて抜き放った。
「勇慈……君は本当に、それでいいのかい?心は痛まないのかい?」
「痛む心も、俺の本心だ。
「勇慈…!お前…!」
ちら、と一護の方を向くと、くしゃりと顔を歪めていた。斬られたというのに、月島を仲間だと思っているのに、味方してくれるのかと熱くなった胸の内からの言葉が漏れる。不安にさせてしまったらしい。だが一護には悪いが、今でも”一護の為に”月島を裏切ったわけではない。
そういう手筈だと計画して、その計画すら月島に知られていたというのに、ただ一つ、友情だけで裏切られたのは月島にとって誤算だったらしい。過去を挟むだけで、無二の友との絆が切れようはずもないのだ。マユリがこの場に居たら当然だろうとせせら笑っていただろう。そしてその百余年の絆に、ただの寿命しか持たない若造が立ち入れるはずもないのだ。
「一護…見せてやれ!貴様がどれほどの絶望を潜り抜けてきたのかという事を!絶望では貴様の足を止められぬと!!」
「ああ……」
ルキアの言葉に一護がヒュウウと一つ呼吸をする。そして全集中の呼吸を乗せて斬月を振り抜いた。暴力的な霊圧と刃風が銀城を襲い、雨を切り裂いて雲が裂ける。
「はっ…確かに月牙天衝の威力は上がったが、その程度か!そんなもんじゃあ俺は殺せねぇぞ!黒崎!!」
「馬鹿野郎、今のは月牙天衝じゃねぇ」
「……は?」
「今のは、剣圧だ」
「なんだ…なんなんだ、この霊圧は!!」
「————月牙天衝」
天が割れ、月が顔を覗かせる。雨はもうやんでいた。
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——————
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井上は走っていた。森の中を。茶渡と共に。
泣き腫らして鼻水まで垂れた顔で、走っていた。どうしてこんなことになってしまったんだろう。黒崎くんと月島さんは親友なのに。あたしが好きなのは月島さんで。ずっと小さい頃から護ってくれて、優しくしてくれて、ずっと憧れていて、月島さんの為ならなんでも犠牲にできるって思っていて。なのに
「どうして、黒崎くんが泣いてると、あたしこんなに苦しいの……」
泣かないで、黒崎くん。見上げたそこに居たのは雨上がりの空に立つ一護の姿だった。泣いていない。それに安堵した。
そしてその後ろに控えるように、朽木、阿散井、冬獅郎がいることに井上は笑みを浮かべる。
「おかしい…皆、どうして一護の側についているんだ…!?一護を止めに来たんじゃないのか…!?」
「えっ…」
「これじゃあまるで、銀城を倒しに来たみたいじゃないか…!」
「どうしたんだい。二人とも」
井上と茶渡が振り向く。そこに立つ月島の姿を見咎めて、目を見開く。
「何か。過去に疑問があるのかい?」
「つ、月島さん…」
「おかしいな。僕との思い出が信じられないのかい?君を守って育てたのは誰だ?織姫。そのペンダントをあげたのは誰だ?チャド。僕だろう。その僕を疑うのかい——_?」
「月島!!後から過去をねじ込むな!何人壊したと思ってんだ!!」
井上と茶渡の身体が震えだす。譫言のように月島さんのおかげを口走り、焦点は定まらずガクガクと壊れて糸の断裂したマリオネットのようにガクガクと。
その二人の首筋を狙って手刀を送る者がいた。月島の目論見は外れ、意識を失った二人を抱える一心と浦原、そして側に控える勇慈の姿を捉え、冷たい視線を送る。
「イヤァ、迂闊に揺さぶってくれたおかげで簡単に意識を飛ばすことができましたよ。これで、二人はこれ以上苦しまずに済む……どうも、ありがとうございます」
「あぁ……そう。勇慈。ねぇ、忘れてしまったのかい?君が痣で苦しんでいた時側にいたのは誰だい?藍染から救っただけじゃない。そうだ……過去を話してくれたね。ねぇ、君の孤独を癒したのは誰だい?僕には打ち明けてくれただろう?鬼殺隊の事を」
「……僕には、じゃない。お前とマユリだ。履き違えるな」
「…その割には、苦しんでいないね。僕との思い出を疑うのかい?」
「お前との過去は俺の中で歴とした事実だ。疑いようもない」
「それなら——」
「随分と長生きなんだな。その話をしたのは百年以上前だ」
「……!」
そう。勇慈がその話をしたのは大正時代。喫茶店での事だ。ライスカレーを食べながら、マユリと月島を前に話した記憶がある。
……百年以上前に?
「ならば、この思い出もお前の完現術で付け加えられたものなのだろう。お前の事を知っているから、お前の術も知っている」
「そう……それなら、
「っ!」
「錆兎くんが亡くなったのは悲しかったね。けど、その時君の弟を支えたのは誰だった?呼吸の修行を一緒にしたのは?」
「……ぐ…!」
「冨岡サン!」
ぐわんと脳が揺れる。挟めるだけの過去を挟んで壊す気なのだ。過去が書き換わっていく。男の影が脳裏をちらつく。頭を抱えてよろけ、力の抜けそうになる下肢を踏ん張って耐える。月島を疑うな。全て月島さんのおかげなのに。なら何故月島さんは今まで生きているんだ。俺は一人じゃないのか。月島さんを疑うな。全て月島さんのおかげなら——
「全部…」
「ん?」
「全部、月島さんが助けてくれた…の、なら……」
「なんで、上弦の壱の戦いのときだけ、見殺したんだ」
「————!」
そう。上弦の壱に殺されたという過去は変えられない。そして、アレと戦って生きて居られる人間はいない。そこに介入して生きているのだとすれば、それは見殺しにされた以外に他ならない。ギリ、と血が滲むほどに歯を食いしばって、くしゃりと髪を鷲掴みにして、その一点で過去改変を耐えきる。
「……参ったな。その過去を持ち出されるとどうしようもない」
「……は、」
脳が痛む。ズキズキと。だがその切り替えしは月島にとって覆せないモノであったらしい。肩をすくめて、仕方ないと呟いた。
月島が少し銀城の方へと下がると、そこに集うようにギリコ・リルカ・雪緒・ジャッキーが駆け寄る。
「なんと!狡いじゃありませんか!銀城さんだけ一護さんの能力を手に入れるなんて!!」
「ちょっとギリコ…」
「そうだよ、皆で分けるって約束だったろ!」
「うるっせぇな…言われなくても、てめえら全員に一護の能力は分けてやるよ」
銀城はそう言って、完現術者たちを斬り伏せる。そこから力が流れ込み、変容する。
「おお…これが、一護さんの完現術の力…!まるで体の中から若さが溢れてくるような…!」
「感想がジイさんだよ、ギリコ」
「獅子河原くんは仲間外れかい?」
「あいつの能力は強化すると面倒そうだからな。この戦いが終わったら、殺しておけよ」
「……ちぇっ」
すっかりこちらには興味を無くして一護へと関心を向けている相手に、少しだけ息を吐く。相手は人間とはいえ、痣すら見切られている状況、そして立て続けに挟み込まれて痛む脳を抱えてまで戦う気はあまりなかった。仮に戦えと言われたら刃を交えたが、そこまでする必要は、もうない。マユリの興味関心を満たすに足る十分なデータは採れただろう。その為の実験台だった。
だから雪緒の能力で散り散りに分断された時も、追いかけなどしなかったのだ。
「さて、アタシたちは撤収しますか。井上サンたちも治療しなくちゃですし…」
「おう、浦原商店いくぞ」
「冨岡サン。貴方もですよ。今さっきすごい量の過去を挟まれたでショ?正直なんで立ってられんのか不思議なくらいなんスけど————」
「……俺はいい。ここで帰りを待つ」
浦原と視線が交差する。じっと見つめて、仕方ないっスねぇだなんて呟いて。一心に声をかける。
「冨岡サンは平気らしいんで。アタシたちだけで行きますか。一心さん。茶渡サンの事お願いしますよ」
「へいへい。……お前ちょっとズルいぞ…」
茶渡を背負った一心と、井上を横抱きにした浦原がこの場を去る。その間もなく、更木が隔絶された空間の中から帰ってきた。
「あ?」
きょろきょろと辺りを見回して、小さく舌打ちをする。
「なんだよ、まだ誰も出てきてねぇじゃねえか。ったくどいつもこいつもトロトロしやがって…。オイ、冨岡。暇なら暇つぶしに付き合え」
「……今はご遠慮願えると助かります。更木隊長」
「あぁ?んだよ十二番隊一の剣の腕ってヤツも気になってたんだ。暇だろてめぇも」
「いえ、俺は暇では……」
「隊長命令だ。付き合え」
「………」
隊長命令とあらば、仕方ない。違う意味で痛む頭を抑えながら、刀を抜く。だが確かに、頭をからっぽにして剣を振っていた方がいいかもしれない。そう言い訳して、走り出した。
黒崎一護は選んだ。真実を知り、そのうえで、死神たちが信じる黒崎一護の決断を貫き通した。
そして勇慈が命を受け持ち帰った銀城の死体を現世に埋めてやりたいという願いも。
「お前が更木と遊び出した時には頭が痛くなったモノだが、マァそのおかげでついでに更木の今の霊圧も測定できたからネ。次の眼帯の
「そうしてくれ」
技術開発局に戻って今回の任務の報告書を纏めているその横で、試薬の調合をしているマユリから声を掛けられる。
「で、どうだった。完現術はお前の好奇心を満たすには足りたか?」
「ふむ……個人個人で能力が違う事は興味をそそられるし、いずれは研究したいテーマではあるがネ。今欲しい延命のための手がかり足りえるものは無いと見ていい。過去を挟んだところで、慰められるのは心だけとなら当然だヨ」
「そうか」
やはり、鬼の細胞がもっと必要だネ……と、シャーレに垂らした上弦の弐の血(疋殺地蔵に付着したモノを持ち帰ったらしい。マユリらしいと思わず感心してしまった)を顕微鏡で観察し、一部をピペットで抽出すると、先ほど調合した試薬を垂らして培養を試みる。今度の試薬には勇慈から抜いた血が使われている。今の友人の一番の興味は、どうやら鬼らしい。それにやや顔を顰めながら、口を開く。
「俺は、お前はいつだって俺の意志を汲んでくれたと語ったが」
「ン?」
「殊これに関しては、俺の意志を無視するな」
「当たり前だヨ。お前の意志など尊重するはずがない」
というか、私がいつお前の意志を尊重したと…?と疑問符を浮かべているマユリに、いい。と返す。
俺の友人は、そういう奴なのだから。
護廷十三隊コソコソ噂話
勇慈は十二番隊一の剣の腕と自他共に認めらる程度には、研究素材捕獲科としてフィジカル担当として、隊の内外で仕事をしています。その腕を買われて実は何度か十一番隊に誘われてはいたのですが、全部固辞しています。
ただし今回、更木隊長を通して腕がある程度知れ渡ってしまったので、やはりもう一度くらい検討しないかと誘われる未来が待っています。
