現十二番隊の元鬼殺隊は
黒崎一護は尸魂界における”客人”であり、空座町の死神代行である。
しかして彼は死神代行であるといえど、人の身である。となれば、行き来するための門たる穿界門を開くのは
尸魂界側の誰かしらであり、地獄蝶を持たぬ彼は死神に同行されなければ安全に断界を通過することは叶わない。
それが、今日はたまたま彼の都合に合った、というところから話は始まる。
「あれ?」
門の前に立つ男が今日の見送りの人だろうか。青みを帯びた黒い髪を無造作に肩の辺りで結び、
死神の死覇装の上から半々で模様の違う羽織りを纏っている。その横顔には感情らしい感情は浮かばず、
無そのもの。髪よりも青みの強い瞳は良く言えば凪の湖面、悪く言えば若干死んでいるようであった。
「……来たか。」
気配か霊圧か。いずれかを察知した青年が一護の方へと顔を向ける。ぱっと見た年齢は一護と同じくらいであろうか。
子供と大人の中間のまろい顔は、女人受けしそうな秀麗さであった。再三言うが、目が若干死んでいる事を除けばである。
「えーと……今日の案内役は、お前であってる…か?」
「ああ。……別件で、俺も現世に一時滞在する予定だ。そのついでに今日の案内役を買って出た。よろしく頼む」
「お、おう。あ、そうだ。あんた、名前は?」
「俺は、とみ————」
「勇慈ーっ!」
うん?と後ろを振り向いてみると、白衣を纏った男がこちらに向かって走ってきていた。青年は片手をあげながら、
阿近、と呟くと、続けてどうしてここに?という表情を浮かべた。
「はぁ……間に合ったか。これも持っていけ。涅隊長と鵯州からだ」
「マユリ達から?……なんだ?」
ぐねぐねとうねりながら嫌だ嫌だと歪んだ顔で唸る男の顔がついた、ダウジングマシンのような機械を取り出さる。、
一護はウワ……と思わず引いた声を上げた。そんな一護をよそ目に青年が無造作に掴み上げると、機械(?)の顔がヒィッ!と歪んだ。
「これ持って、空座町内の心霊スポットを回ってこいってお達しだ」
「何故」
「俺は詳しいことは知らん。通信技術研究科の方が絡んでるんだろ」
「そうか」
「ついでに、お前の現世の霊圧測定用の計測器も兼ねてるんだとさ」
「それは持っている」
「いや、隊長のが性能いいだろ」
「……それもそうだな。」
納得。という様子で羽織りの下に隠れていたポーチの中から従来の測定機器を返却しながら、未だに悲鳴を上げ続ける顔をずぼっとポーチに押し込む。容赦がない。用はすんだと男は手をあげる。
「邪魔したな。それじゃ、行ってこい」
「あぁ」
とてとて、と足音を響かせながら門の方へと歩いていく男の後ろで、一護は置いてけぼりを喰らっていた。
「ん、どうした黒崎一護。置いていかれるぞ」
「あ、あぁ。いやその……名前、聞きそびれたんだけどアイツなんて名前なんだ?」
「あー…名乗っているところだったのか。悪かったな。」
後でアイツ名乗るの忘れ…は、しないと思いたいが、念のため伝えておいてやるか
「アイツの名前は、『冨岡 勇慈』」
「十二番隊…ウチの四席で、現世任務から虚捕縛任務、その他解剖なんかもまぁ多少は出来る。」
「まぁ言ってしまえば…ウチの、フィジカル担当だな」
元鬼殺隊の甲は現十二番隊のフィジカル担当である。
おまけ
「そういや、あいつフツーに涅マユリの事を呼び捨てにしてたけど、怒られねーの?」
「うん?あぁ、それか。問題ない。涅隊長公認だからな。」
「へぇ……友達いたんだな……」
「おや、私には友達の一人や二人もいないと?これは寂しい事を言う。私ほど慈愛が自我を持って動き回るような男はいないというのに」
「ゲッ」
「まァ馬鹿にもわかりやすく言ってやろう。アレは、私にとって”良い”研究材料なのだヨ。素晴らしい!まだまだ、解析し足りないうえに進化を続けている。これが楽しくないワケがない!」
「あ~……そんな感じで、涅隊長のお気に入りの被検体も兼ねてるな」
「大丈夫なのか?それ」
「安心しろ。死ぬような事と手足が使えなくなるような実験はしてない…はず」
「失礼な奴らだネ。ふん、まぁいい。私は慈悲深いからネ、今なら———」
「マユリ。」
「……なんだね勇慈」
「見送りに来るほどヒマなのか。俺はヒマじゃない」
「そんなモノ、あっちに行って瞬歩すればいい話だろう。君の足ならすぐだろう」
「鵯州が困る」
「……仕方ないネ。出直してやるから、さっさと行き給え」
「おぉ……あの涅マユリが譲った……。あいつほんとに友達なんだな……。」
「友達…まぁ、友達…か?」
「あれ、一体どういう流れで仲良くなったんだ?」
「涅隊長と冨岡?そうだな……あれは、去る年の忘年会だったか。ウチから一発芸を出し物にしなきゃいけなくなったんだが、アイツがやったんだよ。」
「何をだ?」
「肺活量だけでバカでかい瓢箪をぶち壊した」
「は??」
「それを見ていた涅隊長……いや、まだ隊長じゃなかったか…。ともかく、それで冨岡の身体能力に目をつけてな。
あれこれと会話したり構ったり、たまに研究に手伝ってもらったりとかで今に至ってるってワケだ。」
「へぇ~……」
しかして彼は死神代行であるといえど、人の身である。となれば、行き来するための門たる穿界門を開くのは
尸魂界側の誰かしらであり、地獄蝶を持たぬ彼は死神に同行されなければ安全に断界を通過することは叶わない。
それが、今日はたまたま彼の都合に合った、というところから話は始まる。
「あれ?」
門の前に立つ男が今日の見送りの人だろうか。青みを帯びた黒い髪を無造作に肩の辺りで結び、
死神の死覇装の上から半々で模様の違う羽織りを纏っている。その横顔には感情らしい感情は浮かばず、
無そのもの。髪よりも青みの強い瞳は良く言えば凪の湖面、悪く言えば若干死んでいるようであった。
「……来たか。」
気配か霊圧か。いずれかを察知した青年が一護の方へと顔を向ける。ぱっと見た年齢は一護と同じくらいであろうか。
子供と大人の中間のまろい顔は、女人受けしそうな秀麗さであった。再三言うが、目が若干死んでいる事を除けばである。
「えーと……今日の案内役は、お前であってる…か?」
「ああ。……別件で、俺も現世に一時滞在する予定だ。そのついでに今日の案内役を買って出た。よろしく頼む」
「お、おう。あ、そうだ。あんた、名前は?」
「俺は、とみ————」
「勇慈ーっ!」
うん?と後ろを振り向いてみると、白衣を纏った男がこちらに向かって走ってきていた。青年は片手をあげながら、
阿近、と呟くと、続けてどうしてここに?という表情を浮かべた。
「はぁ……間に合ったか。これも持っていけ。涅隊長と鵯州からだ」
「マユリ達から?……なんだ?」
ぐねぐねとうねりながら嫌だ嫌だと歪んだ顔で唸る男の顔がついた、ダウジングマシンのような機械を取り出さる。、
一護はウワ……と思わず引いた声を上げた。そんな一護をよそ目に青年が無造作に掴み上げると、機械(?)の顔がヒィッ!と歪んだ。
「これ持って、空座町内の心霊スポットを回ってこいってお達しだ」
「何故」
「俺は詳しいことは知らん。通信技術研究科の方が絡んでるんだろ」
「そうか」
「ついでに、お前の現世の霊圧測定用の計測器も兼ねてるんだとさ」
「それは持っている」
「いや、隊長のが性能いいだろ」
「……それもそうだな。」
納得。という様子で羽織りの下に隠れていたポーチの中から従来の測定機器を返却しながら、未だに悲鳴を上げ続ける顔をずぼっとポーチに押し込む。容赦がない。用はすんだと男は手をあげる。
「邪魔したな。それじゃ、行ってこい」
「あぁ」
とてとて、と足音を響かせながら門の方へと歩いていく男の後ろで、一護は置いてけぼりを喰らっていた。
「ん、どうした黒崎一護。置いていかれるぞ」
「あ、あぁ。いやその……名前、聞きそびれたんだけどアイツなんて名前なんだ?」
「あー…名乗っているところだったのか。悪かったな。」
後でアイツ名乗るの忘れ…は、しないと思いたいが、念のため伝えておいてやるか
「アイツの名前は、『冨岡 勇慈』」
「十二番隊…ウチの四席で、現世任務から虚捕縛任務、その他解剖なんかもまぁ多少は出来る。」
「まぁ言ってしまえば…ウチの、フィジカル担当だな」
元鬼殺隊の甲は現十二番隊のフィジカル担当である。
おまけ
「そういや、あいつフツーに涅マユリの事を呼び捨てにしてたけど、怒られねーの?」
「うん?あぁ、それか。問題ない。涅隊長公認だからな。」
「へぇ……友達いたんだな……」
「おや、私には友達の一人や二人もいないと?これは寂しい事を言う。私ほど慈愛が自我を持って動き回るような男はいないというのに」
「ゲッ」
「まァ馬鹿にもわかりやすく言ってやろう。アレは、私にとって”良い”研究材料なのだヨ。素晴らしい!まだまだ、解析し足りないうえに進化を続けている。これが楽しくないワケがない!」
「あ~……そんな感じで、涅隊長のお気に入りの被検体も兼ねてるな」
「大丈夫なのか?それ」
「安心しろ。死ぬような事と手足が使えなくなるような実験はしてない…はず」
「失礼な奴らだネ。ふん、まぁいい。私は慈悲深いからネ、今なら———」
「マユリ。」
「……なんだね勇慈」
「見送りに来るほどヒマなのか。俺はヒマじゃない」
「そんなモノ、あっちに行って瞬歩すればいい話だろう。君の足ならすぐだろう」
「鵯州が困る」
「……仕方ないネ。出直してやるから、さっさと行き給え」
「おぉ……あの涅マユリが譲った……。あいつほんとに友達なんだな……。」
「友達…まぁ、友達…か?」
「あれ、一体どういう流れで仲良くなったんだ?」
「涅隊長と冨岡?そうだな……あれは、去る年の忘年会だったか。ウチから一発芸を出し物にしなきゃいけなくなったんだが、アイツがやったんだよ。」
「何をだ?」
「肺活量だけでバカでかい瓢箪をぶち壊した」
「は??」
「それを見ていた涅隊長……いや、まだ隊長じゃなかったか…。ともかく、それで冨岡の身体能力に目をつけてな。
あれこれと会話したり構ったり、たまに研究に手伝ってもらったりとかで今に至ってるってワケだ。」
「へぇ~……」
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