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ちょっと待ってよ

試着用に仕切られた教室内の片隅で、保は呆然と立ち尽くす。
周りではスーツや王子様、医者等の服装に身を包んでいく友人、クラスメイト達。
なのに自分だけ、女装。
しかも想定していた衣装とは色々違うのだ。
シスターと言われればシスターだ。それは間違ってはいない。スカートもロングスカートだ。
ベールもある。
がしかし、違うのだ。
あまりにもボディーラインがハッキリとしている。更にロングスカートのサイドは深いスリットが入っている。そこからガッツリ足を見せろよというように、ガーターベルトと黒のニーハイソックスにピンヒールの靴。
女生徒達は、保を徹底的に辱めたいようで女性用アンダーウェア上下、なんなら偽乳まで用意。腰にはレザーのコルセット。そしてブロンドに輝くロングウィッグ。そしてメモ紙、
『 メイクは後でやったげるからとりあえず着ろ!』という指令が記されている。
保は思った…着ない選択肢がないとしても、どこから手をつければいいのだろうかと。
17年間触れてこなかった物を前に茫然自失。
“ブラジャーって何?
答えは、胸を隠してる布!
付け方なんて知りませんが何か?と言いたい。ピンヒールで歩き回れと?
答えは、生まれたての子鹿ごとく震えて立てるかも怪しい。
男の脚が見えて喜ぶ奴いるのか?
答えは、NO!
細すぎるわけでも筋肉質なわけでもない!でも女の子のような柔肌感もない!
どう考えても道化じゃん”
周りからどんどん人が減ってゆく中、途方に暮れる保に1人の生徒が声をかけた。
「柏木、お前大丈夫か?」
背後に立つ声の主を振り返ると、そこにはオシャレなカフェ店員の装いをする友人、田代和樹たしろかずきが心配そうな顔をしていた。
「大丈夫に見えるか?」
「見えないから聞いた。ってかさすがにソレは度が過ぎてるだろアイツら。」
分かるか!分かってくれるか!と田代に縋り付きたくなる保。
「田代、俺こんなの無理だよ。こんなの着たらお嫁に行けない!」
「お婿の間違いな!嫁には行けねーから。」
「揚げ足とんなよー。って冗談はさて置き、マジ勘弁してくれって話な。」
机上に転がる偽乳をつつきながら悪態つく保に悪魔達の声が飛び込む。
「「「かーしーわーぎー!!まだ着れないの?」」」
「まっまだ無理だよ!そもそもコレはシスターじゃないだろ!破廉恥だぁ!」
悪魔達は怖いが屈するものかと意見してみるとすかさず実行委員の女生徒から、
「破廉恥?四の五の言わずにサッサと着ろ!着れないなら着せてやろうか?あぁ?」なんて怒声が飛んできたもんだから、女子ってたまにオッサンになるよね!怖すぎワロタ!と脳内大パニックである。
ちょっと待ってよ、マジで…ほんとに。お願いしますよ。



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