「勝った…？何言ってるの？負けたんだよ…？」

訳が分からない、という表情をしながらそう反論すれば、そうだな、とあっさりと返事が来た。

かと思うと、レティはまるで憑き物がとれたかのような様子になりながら、ゆっくりと話し始めた。

「そうさ、勝負には負けた。けど…読み勝負で言えば勝ったんだよ。
一種の賭けに…勝ったんだ」
「読み勝負で…あっ！」

…少し、思い当たるところがあった。
フランクリンバッヂだ。

さっき反射する前、思わずフランクリンバッヂを握ったままだったことを今思い出した。
つまり…一連の攻撃の動きは…

「僕の動きは…君の思うつぼだった、って事…？」
「…さあな…」
「！」

そんな中、急にレティが限界というように倒れ込んだ。

よく見たら、出血の具合もかなりひどくって。
咄嗟に直そうと体が動いたものの、もういい、と言われてしまった。

「何で…」
「もう…どうせ生きられないから」
「えっ…？」
「あれだけ闇の力を用いて暴れれば、寿命なんてあっという間になくなってしまう。仮に直ったとして…もう命なんて風前の灯火しかないようなものだから…」

本当になんてことない、と言うように、レティは淡々とした調子で話していく。

…君が、死んでしまう。
助けたかったのに。
結局、僕は…何も…

そんなことを考えていくうちに、ぽろぽろと涙が溢れてきて。
急に僕が泣き出したからか、レティは驚きとも困惑とも、どっちともとれるような表情になる。

「何で、お前が…」
「やだっ…死なないでよ…」
「…」
「この先もずっと、一緒にいたかったのに…」

そう僕が駄々をこねるように泣き出すと、しばらくの間があいた後、普段とは打って変わり、一段と柔らかい声で僕の名前を呼んできた。

何だろう、と泣きながらもそちらを向けば、そっと微笑みながら最後に一つ、頼んでもいいか…？と訊ねられた。