交流
「…ミア、あなた最近変わった?」
資料として使っていた本を図書館へ返しに来た時、丁度カウンターの司書席に座っていたティコから声をかけられた。
ティコは私の数少ない友人の一人で、面倒見の良いお姉さんのような人だ。普段はここの司書として、時折この図書館がある大学の非常勤講師として働いている。
「…そんなに変わったように見えます?」
「何と言うか、とにかく前よりも生き生きしてるのよね」
「生き生きと…」
ティコから突然指摘されて何事かと思ったが、どうやら聞く限りはラビと出会って以降、私が分かりやすく生き生きとし始めたらしい。私自身は無自覚だったこともあり、そんなに変わってたのか、とティコ以上に戸惑いを感じてしまう。
何であなたが戸惑ってるのよ…と呆れ半分に言われたが、分からないものは分からないのだから仕方がない。とりあえず返す本を差し出すと、手続きをして貰う傍らで話を続けた。
「何か、面白いものでも見つけたの?」
「面白いもの…は特に何も」
「じゃ、興味あることがでてきたとか?」
「興味あること…そうですね、興味のある人なら」
「…えっ?あなたが人に興味を?珍しいわね…今年は大きな台風でも来るのかしら…」
「いくら何でも、その言い草は酷くないですか」
ティコからの言い草に思わずムッとして反論すると、ごめんなさい、びっくりして…と言葉が返ってくる。返却処理の完了した本を受け取りながら、興味深そうに笑うティコを見つめる。何かあっただろうか、と思ったもののそういうわけではないようで、ねえ、と楽しそうに声をかけられた。
「その興味を持った人って、どんな人?余程かっこいいとか、面白いとか、そんな感じ?」
「うーん…可愛い、ですかね…」
「可愛い?なるほど、可愛いものが好きなあなたらしいわ。それで、興味っていうのは研究対象として?」
「違います。個人的な興味ですよ」
余程私が他人に興味を持った事が衝撃だったのか、ティコが矢継ぎ早に質問を飛ばしてくる。…今日はこの場に風華がいないから、静止役になり得る人物がいないのもかなり痛い。
そんな中、私が個人的な興味で他人に関心を向けたと言うのが尚の事大きな衝撃だったようで、さらに深掘りするように訊ねられる。
「個人的な…。友達?それともまさか、好きになった、とか?」
「…何でしょう…。まだ良く分からないんですよね…」
ティコからの質問に答える傍ら、ふと自分でも良く分からない感情の部分に触れられた事をきっかけに少し考える。
ラビと出会ってもう二ヶ月が過ぎている訳だか、最近は今日の午前中のように仲良く過ごすことも増えてきたように思う。元々は私が誘ってばかりだったけれど、近頃はたまにラビからどこへ行こうと誘ってきてくれることもある。それだけ気を許せる相手になれたのだろう。
後は、やっぱり戦う時の姿が堪らなく好きだ。時折たがが外れて狂気を滲ませる事があるが、その姿はもっと好き。でも、やっぱり普段のしっかりした優しい彼女も、好きだし捨てがたい。
「…ミア。ミア、すごく頬が緩んでるわよ」
「えっ…?」
「ふふ、その人といるのが余程楽しいのね」
「…ええ。とっても…!」
ティコから声をかけられて、咄嗟に我に返った。が、特にからかうような様子はなく、寧ろニコニコして私の方を見つめてくるから、思わず釣られて私も笑顔を向ける。
…そう、どんな感情が渦巻いているのであれ、私が今一番感じているのは楽しいということ。とりあえずそれだけが分かれば、今はいいのかもしれない…なんて考えながら、本を元々有った場所へ返そうとカウンターを離れた。
「…にしても、頰が緩んでたなんて…」
彼女には、ことごとく私の感情が揺さぶられてしまうらしい。それが嬉しいような、少し照れ臭いような、不思議な心境を抱いてしまう。
何がともあれ、明日は待ちに待ったピクニックである。その辺りのことはまた追々考えればいいや、と保留にしておくことにして、本を元の場所へ戻してから、明日のお弁当に持って行く分の食べ物を買いに行こう、と浮足立ったまま考えていた。
資料として使っていた本を図書館へ返しに来た時、丁度カウンターの司書席に座っていたティコから声をかけられた。
ティコは私の数少ない友人の一人で、面倒見の良いお姉さんのような人だ。普段はここの司書として、時折この図書館がある大学の非常勤講師として働いている。
「…そんなに変わったように見えます?」
「何と言うか、とにかく前よりも生き生きしてるのよね」
「生き生きと…」
ティコから突然指摘されて何事かと思ったが、どうやら聞く限りはラビと出会って以降、私が分かりやすく生き生きとし始めたらしい。私自身は無自覚だったこともあり、そんなに変わってたのか、とティコ以上に戸惑いを感じてしまう。
何であなたが戸惑ってるのよ…と呆れ半分に言われたが、分からないものは分からないのだから仕方がない。とりあえず返す本を差し出すと、手続きをして貰う傍らで話を続けた。
「何か、面白いものでも見つけたの?」
「面白いもの…は特に何も」
「じゃ、興味あることがでてきたとか?」
「興味あること…そうですね、興味のある人なら」
「…えっ?あなたが人に興味を?珍しいわね…今年は大きな台風でも来るのかしら…」
「いくら何でも、その言い草は酷くないですか」
ティコからの言い草に思わずムッとして反論すると、ごめんなさい、びっくりして…と言葉が返ってくる。返却処理の完了した本を受け取りながら、興味深そうに笑うティコを見つめる。何かあっただろうか、と思ったもののそういうわけではないようで、ねえ、と楽しそうに声をかけられた。
「その興味を持った人って、どんな人?余程かっこいいとか、面白いとか、そんな感じ?」
「うーん…可愛い、ですかね…」
「可愛い?なるほど、可愛いものが好きなあなたらしいわ。それで、興味っていうのは研究対象として?」
「違います。個人的な興味ですよ」
余程私が他人に興味を持った事が衝撃だったのか、ティコが矢継ぎ早に質問を飛ばしてくる。…今日はこの場に風華がいないから、静止役になり得る人物がいないのもかなり痛い。
そんな中、私が個人的な興味で他人に関心を向けたと言うのが尚の事大きな衝撃だったようで、さらに深掘りするように訊ねられる。
「個人的な…。友達?それともまさか、好きになった、とか?」
「…何でしょう…。まだ良く分からないんですよね…」
ティコからの質問に答える傍ら、ふと自分でも良く分からない感情の部分に触れられた事をきっかけに少し考える。
ラビと出会ってもう二ヶ月が過ぎている訳だか、最近は今日の午前中のように仲良く過ごすことも増えてきたように思う。元々は私が誘ってばかりだったけれど、近頃はたまにラビからどこへ行こうと誘ってきてくれることもある。それだけ気を許せる相手になれたのだろう。
後は、やっぱり戦う時の姿が堪らなく好きだ。時折たがが外れて狂気を滲ませる事があるが、その姿はもっと好き。でも、やっぱり普段のしっかりした優しい彼女も、好きだし捨てがたい。
「…ミア。ミア、すごく頬が緩んでるわよ」
「えっ…?」
「ふふ、その人といるのが余程楽しいのね」
「…ええ。とっても…!」
ティコから声をかけられて、咄嗟に我に返った。が、特にからかうような様子はなく、寧ろニコニコして私の方を見つめてくるから、思わず釣られて私も笑顔を向ける。
…そう、どんな感情が渦巻いているのであれ、私が今一番感じているのは楽しいということ。とりあえずそれだけが分かれば、今はいいのかもしれない…なんて考えながら、本を元々有った場所へ返そうとカウンターを離れた。
「…にしても、頰が緩んでたなんて…」
彼女には、ことごとく私の感情が揺さぶられてしまうらしい。それが嬉しいような、少し照れ臭いような、不思議な心境を抱いてしまう。
何がともあれ、明日は待ちに待ったピクニックである。その辺りのことはまた追々考えればいいや、と保留にしておくことにして、本を元の場所へ戻してから、明日のお弁当に持って行く分の食べ物を買いに行こう、と浮足立ったまま考えていた。
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