狩人
…ちょっとした運動と気分転換を兼ねて、張り出されていた依頼を受ける。これが私の、モンスターを討伐しに行く時のいつもの流れ。
「ありがとうございます、本当に助かりました!」
「いえ、これくらい良いんですよ」
今日は、前衛向きな戦い方を好む方の援護。援護といっても私にできるのは攻撃ではなく、回復やバフステータスを付与する、いわゆる後衛に当たる動きが主だ。攻撃もできるが、一時的な補助として役立つ程度の力しか持たないので、基本的に使い道がない。
今目の前で頭を下げてくる彼は、私の受けた依頼を出した本人の方。基本的に私はモンスター討伐の依頼、というよりも応援の依頼を受けることが専らであり、私から依頼を出すのはかなり稀だ。今回の彼も、そんな経緯で一時的にチームを組んだに過ぎず、とりわけ興味はない。
「あの、もし良かったらお礼にお茶とかどうですか」
「お茶、ですか…。構いませんよ」
「じゃあ、街の方へ行きましょうか!」
どこか冷めた目で俯瞰する私などつゆ知らず、目の前の彼が嬉しさを隠しきれないという様子で歩きだすのが見える。正直、彼の名も覚えていないわけではないが興味がなく、忘れようがどうだって良いと思っている節がある。
どこへ行こう、と嬉々として考える彼の姿が私には初々しく映り、そこは素直に可愛いなと思う。のだが、結局それ以上も以下もない。ただ、それだけ。
前に友人へ「依頼を受けるとかなりの頻度でお茶に誘われる」なんてことをぽろっと話したが、やっぱりモテるんだね、と言われて終わった記憶がある。
「あ、そうだ。お茶の後、良かったら…」
「いえ、お茶だけで大丈夫ですよ。お気遣いなさらず」
…ぼんやりしていたら、照れくさそうにしてさらに誘われてしまった。が、正直そこから先は興味がないので、いつものようにバッサリと断る。彼からすれば、ちょっとした提案を装えているつもりだったのだろう。断った途端、残念そうにしながら目線を逸らされた。
「…舐めてもらっては困りますよ。ましてや下心なんて、すぐ分かりますから」
微笑みを浮かべながら、釘を差すように彼へそう告げる。図星だったのだろう、彼からは特に答えが返ってくる様子はない。
そういう目を私へ向けるのは、別に個人の問題だから勝手にすれば良いと思うが、私がその手に乗るかと言われれば違う。むしろそういう関係を嫌っている自覚があるので、問答無用で断っているばかりだ。加えて、過去にも同じような目を向けられた経験が度々あるので、仕草や態度、言葉の端々から下心を察することなど、私には容易い。…要は、私に伝えるだけ無駄なのである。
彼もあわよくば、を狙っていたのだろう。私が断ってから、分かりやすく意気消沈しているように見える。とはいえ先の約束を反故にするような人ではないようで、お茶をしようという言葉はしっかりと守られた。
「…たまには、同性と組んでみたいものですね」
彼と別れた帰り道、不意にそんな事が思い浮かぶ。
同性、といえば友人とたまにチームを組むが、それとは違って見ず知らずの相手と組んでみたくなったのだ。たまには、私からそういう依頼を出すのも面白いかもしれない…なんてことをふと考えながら、家までの道をゆっくりと歩いた。
「ありがとうございます、本当に助かりました!」
「いえ、これくらい良いんですよ」
今日は、前衛向きな戦い方を好む方の援護。援護といっても私にできるのは攻撃ではなく、回復やバフステータスを付与する、いわゆる後衛に当たる動きが主だ。攻撃もできるが、一時的な補助として役立つ程度の力しか持たないので、基本的に使い道がない。
今目の前で頭を下げてくる彼は、私の受けた依頼を出した本人の方。基本的に私はモンスター討伐の依頼、というよりも応援の依頼を受けることが専らであり、私から依頼を出すのはかなり稀だ。今回の彼も、そんな経緯で一時的にチームを組んだに過ぎず、とりわけ興味はない。
「あの、もし良かったらお礼にお茶とかどうですか」
「お茶、ですか…。構いませんよ」
「じゃあ、街の方へ行きましょうか!」
どこか冷めた目で俯瞰する私などつゆ知らず、目の前の彼が嬉しさを隠しきれないという様子で歩きだすのが見える。正直、彼の名も覚えていないわけではないが興味がなく、忘れようがどうだって良いと思っている節がある。
どこへ行こう、と嬉々として考える彼の姿が私には初々しく映り、そこは素直に可愛いなと思う。のだが、結局それ以上も以下もない。ただ、それだけ。
前に友人へ「依頼を受けるとかなりの頻度でお茶に誘われる」なんてことをぽろっと話したが、やっぱりモテるんだね、と言われて終わった記憶がある。
「あ、そうだ。お茶の後、良かったら…」
「いえ、お茶だけで大丈夫ですよ。お気遣いなさらず」
…ぼんやりしていたら、照れくさそうにしてさらに誘われてしまった。が、正直そこから先は興味がないので、いつものようにバッサリと断る。彼からすれば、ちょっとした提案を装えているつもりだったのだろう。断った途端、残念そうにしながら目線を逸らされた。
「…舐めてもらっては困りますよ。ましてや下心なんて、すぐ分かりますから」
微笑みを浮かべながら、釘を差すように彼へそう告げる。図星だったのだろう、彼からは特に答えが返ってくる様子はない。
そういう目を私へ向けるのは、別に個人の問題だから勝手にすれば良いと思うが、私がその手に乗るかと言われれば違う。むしろそういう関係を嫌っている自覚があるので、問答無用で断っているばかりだ。加えて、過去にも同じような目を向けられた経験が度々あるので、仕草や態度、言葉の端々から下心を察することなど、私には容易い。…要は、私に伝えるだけ無駄なのである。
彼もあわよくば、を狙っていたのだろう。私が断ってから、分かりやすく意気消沈しているように見える。とはいえ先の約束を反故にするような人ではないようで、お茶をしようという言葉はしっかりと守られた。
「…たまには、同性と組んでみたいものですね」
彼と別れた帰り道、不意にそんな事が思い浮かぶ。
同性、といえば友人とたまにチームを組むが、それとは違って見ず知らずの相手と組んでみたくなったのだ。たまには、私からそういう依頼を出すのも面白いかもしれない…なんてことをふと考えながら、家までの道をゆっくりと歩いた。
1/4ページ