いつもながらメールされてきたセールの謳い文句に踊らされ、スマホで通販サイトをなんとなくで見つめる。
まあ、なんとなくと言っても、基本的には必要なものや欲しいものを中心にして、そこからセールしているものがあるかどうかを確認するのが主だ。ちなみに、今見ているのはAma〇onである。

「んー、これか…微妙…」
「何見てるんです…？」

私があまりにもスマホと睨めっこを続けていたからか、隣で色々と動画を見ていたルカが怪訝そうな表情をして尋ねてきた。…ただ、あまりにも怪訝そうすぎるものだから、却って私が不思議そうな顔をしてしまったが。

「セールの内容を見てただけだけど…どうしたの、そんな怪訝そうにして」
「いや、あまりに絵兎が画面を険しい顔で見つめていたものですから…」
「あ、それはごめん」

…自覚は特になかったが、傍から見るとさっきまで余程表情が険しかったのか、困惑をにじませてルカがこちらを見つめてくる。
とりあえず変な誤解をされても困るので、えっと、と画面を分かりやすいと思われるところまでスワイプさせると、見せながら何となくだけでも説明してみる。ある程度話してみればルカもどうやら理解してくれたようで、表情の険しさはだいぶ和らいだように見えた。

「あまりにまじまじ見ているから、何事かと思いましたよ…」
「ごめんて…」
「で、何か買うんですか？」

理由が分かって今度は興味が出てきたのか、間を置かずにルカがさらに訊ねてくる。私自身もまだ見始めてそれなりだったこともあり、特に決めてないよと返せば、そうですか、と思っていたよりあっさり目に言葉が返ってきた。

「そうだ、ルカを買ったとこもセールやってるって来てたし、一緒に見る？」

忙しなくスワイプさせていく中で、ルカを買ったサイトからも同様のセール通知があったことをふと思い出し、なんとなくそう声をかけてみる。どうやらルカの方もそこそこ興味があるらしく、ぜひ！と勢いよく食いついてきた。

「というか、やってるんですね」
「不定期にね。今回は他と偶然重なっただけじゃないかなー」
「…その言い方からすると、絵兎…そこそこ頻繁に見てます？」
「…まあ、興味はあるし…うん…」

見せたはいいものの、何気ない会話の中からルカから予想の斜め上からの詰め方をされ、やや驚きつつも画面を眺める。まあ、ああ言った当の本人も画面をじっと見ているので、極端に不満だったと言う訳ではなさそうだと思う。
そのまま画面を動かしていけば、ルカはもちろんのこと、ミクやリン、レンとなど言った名の知れた顔ぶれのモデル、そのほか多数の既存・新規モデル、またカスタムモデルへ誘導するバナーなど、とりあえずいろいろと現れる。
最中は特に話すことも無いまま一緒に眺めていると、ふとルカが神妙な顔でポツリと言葉を零すのが聞こえた。

「…いつか、うちも私以外のモデルが来るのでしょうか」

…かれこれ、ルカが来てからそれなりの時間は経っている。さらに私がこのサイトを眺めていることがあると知ったら、そういう考えに行きつくのも自然なことかもしれない。
その言葉が自分の居場所を脅かされるのではと思ってなのか、新しい仲間が増えるのが楽しみと思ってなのか、その真意は私では量り切れないけれど。

「まあいつか、ね」

私だって、安直に決断できるほど懐に余裕があるわけでもない。はっきりと答えを出すことはできないけれど、いずれはそうしたい思いもある。
そんな色々な思いをひっくるめて、ルカの呟きへそっと言葉を返した。