名前呼びが嫌な場合は、マスターなど何らかの呼称でおkです
作曲拒否のマスターとルカの日常
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「…あれ、ルカ…?」
結局あれからもう一度眠り、まともに体を動かし始めたのが夜の9時前。気持ちの沈みもある程度マシになり、ついでにいつの間にか溜まっていた睡眠負債も軽くなったからなのか、普段よりも全体的に身も心も軽く感じる。
そんな中でとりあえずリビングへと向かってみたはいいものの、何故かルカの姿が見えず。お風呂にでも入っているのか、別室で何かやっているのか…そのあたりは何でも構わないが、まあどこかにいるだろうと、昼前の出来事での気まずさも重なり、今はひとまず探すのをやめておいた。
「…しかしまあ、喉乾いた…」
水…でもいいけど、なんかなあ…
そんな事をぶつぶつと言いながら、とりあえずお湯でも沸かそうとやかんをコンロにかけた。
暗がりの中で蒼くぼうっと灯るガスの炎を見つめながら、特に何もせずその場にぼやっと立ち尽くす。…時折ガスの勢いによるものか、炎がゆらりと小さく揺れる。その動きがつまらないような楽しいような、不思議な心境になりながら、いつしか無心に近い状況で眺めはじめる。
…どのくらい経った頃か、不意にパチッという音が聞こえてきたと同時に、キッチンの電気がつけられた。びっくりして音のした方を向けば、少し呆れ気味なルカの姿が目に入った。
「…もう、暗がりで何してるんですか」
「あれ、ルカ」
「まあ何であれ、元気そうならいいですけど…」
突然の出来事に少しポカンとしている私とは反対に、困り気味に微笑みながらルカが私のことを見つめてくる。が、それもつかの間、お湯が沸き始めた音がして、吹きこぼれたり空焚きになったりされても困るからと、とりあえずコンロの火を止めた。
途端、無音の空間が私とルカの間に広がる。いつもなら嫌ではないそれも、気まずさのある今はただただ気持ち悪くて、目を逸らしながら言葉を捻り出そうと考え出す。
「えっと…」
「あの言葉は気にしてませんよ。かなり驚きはしましたけど」
「怒ってる…?」
「…怒ってない、といえば嘘になりますね」
そう言って短くため息をつきながら、ルカが正面で腕を組み顔を曇らせる。やはり気にしていないというのは建前で、本当は言葉にせよ態度にせよ、私にかなり怒っていたのだろう。
が、ごめん、という言葉が私から出るよりも早く、ルカの方から言葉には怒ってません、と否定されてしまった。
「絵兎、そういう事は全く話してくれなかったでしょう?」
「…あ」
やんわりと、でも怒りを感じるような強さを含んだ言い方。優しい言い回しだからそれなりなのかもしれないが、それでも十分にルカが怒っていることは分かる。
そんな中で私が何も言えずにいると、やっぱり話してくれないと言いたげなため息を漏らすのが聞こえてくる。とはいえ、私としてもどうすれば、と戸惑いきっていると、ルカも私の考えていることに感づいたのだろう。寂しそうな、悲しそうな顔をして、私へ言い聞かせるように話し出すのが見えた。
「…その漠然とした思いを持つな、とは言いません」
「…」
「でも、限界ならきちんと言ってください!言わないにしろ、せめて絵兎一人で抱えようとしないで…」
あの状況は怖かったです、から…
そう言い切ると、珍しくルカが静かに抱きついてくる。…やや震えてしがみつくように私を抱きしめるルカは、私よりも余程壊れそうに感じてしまった。
そんなルカを大丈夫だと安心させるように、また自分自身がルカの存在をしっかりと感じていたくて、抱きつくルカの背中へ手を回して、私からも抱きしめ返す。そのままゆっくり背中を撫でれば、甘えと怯えが混ざったように、さらにぎゅっと抱きしめてくる。
「本当、いなくなるんじゃないかって…怖かったんですよ…」
「…うん」
「あなたがいなくなったりしたら…私は…」
珍しく、ルカの方が泣きそうな声で話すのが聞こえる。…私が想像していたよりも、ずっとずっと苦しめてしまったのだろうか。
「…大丈夫。まあ…絶対に、とは言えないけど…」
「…」
「今日は、その…ごめんなさい…」
せめて、不安で揺れる気持ちを少しでも宥めようと、ぽつりぽつりとルカへ話しかける。ルカは暫く静かに私の話を聞いていたと思うと、話し終えて少ししてから、ゆっくり頭を撫でてきた。
かと思うと、優しく言い聞かせるように私へ話しかけてきてくれるのが聞こえてくる。
「…もう、怒ってないですよ。取り敢えず、あなたがこうして元気になったのなら…それが一番ですから。でも、約束はしてほしいです」
「…ん?」
「一人で背負い込みすぎない、って。愚痴でもいいですから、重荷になりすぎる前に私にも分けてください。力になれるかは…分からないですけど、それでも話を聞くくらいはできるんですから…」
…仄暗く淀んで固まった私の心に、そんなルカの優しさがゆっくりと入り込んでくる。思わず涙が出そうになって、そんな私の姿を見せないようにと顔を逸らしながら、さらにルカへともたれ寄った。
こんな私がマスターでごめんね、と呟くと、何も言わずに首を振って返事をくれた。
結局あれからもう一度眠り、まともに体を動かし始めたのが夜の9時前。気持ちの沈みもある程度マシになり、ついでにいつの間にか溜まっていた睡眠負債も軽くなったからなのか、普段よりも全体的に身も心も軽く感じる。
そんな中でとりあえずリビングへと向かってみたはいいものの、何故かルカの姿が見えず。お風呂にでも入っているのか、別室で何かやっているのか…そのあたりは何でも構わないが、まあどこかにいるだろうと、昼前の出来事での気まずさも重なり、今はひとまず探すのをやめておいた。
「…しかしまあ、喉乾いた…」
水…でもいいけど、なんかなあ…
そんな事をぶつぶつと言いながら、とりあえずお湯でも沸かそうとやかんをコンロにかけた。
暗がりの中で蒼くぼうっと灯るガスの炎を見つめながら、特に何もせずその場にぼやっと立ち尽くす。…時折ガスの勢いによるものか、炎がゆらりと小さく揺れる。その動きがつまらないような楽しいような、不思議な心境になりながら、いつしか無心に近い状況で眺めはじめる。
…どのくらい経った頃か、不意にパチッという音が聞こえてきたと同時に、キッチンの電気がつけられた。びっくりして音のした方を向けば、少し呆れ気味なルカの姿が目に入った。
「…もう、暗がりで何してるんですか」
「あれ、ルカ」
「まあ何であれ、元気そうならいいですけど…」
突然の出来事に少しポカンとしている私とは反対に、困り気味に微笑みながらルカが私のことを見つめてくる。が、それもつかの間、お湯が沸き始めた音がして、吹きこぼれたり空焚きになったりされても困るからと、とりあえずコンロの火を止めた。
途端、無音の空間が私とルカの間に広がる。いつもなら嫌ではないそれも、気まずさのある今はただただ気持ち悪くて、目を逸らしながら言葉を捻り出そうと考え出す。
「えっと…」
「あの言葉は気にしてませんよ。かなり驚きはしましたけど」
「怒ってる…?」
「…怒ってない、といえば嘘になりますね」
そう言って短くため息をつきながら、ルカが正面で腕を組み顔を曇らせる。やはり気にしていないというのは建前で、本当は言葉にせよ態度にせよ、私にかなり怒っていたのだろう。
が、ごめん、という言葉が私から出るよりも早く、ルカの方から言葉には怒ってません、と否定されてしまった。
「絵兎、そういう事は全く話してくれなかったでしょう?」
「…あ」
やんわりと、でも怒りを感じるような強さを含んだ言い方。優しい言い回しだからそれなりなのかもしれないが、それでも十分にルカが怒っていることは分かる。
そんな中で私が何も言えずにいると、やっぱり話してくれないと言いたげなため息を漏らすのが聞こえてくる。とはいえ、私としてもどうすれば、と戸惑いきっていると、ルカも私の考えていることに感づいたのだろう。寂しそうな、悲しそうな顔をして、私へ言い聞かせるように話し出すのが見えた。
「…その漠然とした思いを持つな、とは言いません」
「…」
「でも、限界ならきちんと言ってください!言わないにしろ、せめて絵兎一人で抱えようとしないで…」
あの状況は怖かったです、から…
そう言い切ると、珍しくルカが静かに抱きついてくる。…やや震えてしがみつくように私を抱きしめるルカは、私よりも余程壊れそうに感じてしまった。
そんなルカを大丈夫だと安心させるように、また自分自身がルカの存在をしっかりと感じていたくて、抱きつくルカの背中へ手を回して、私からも抱きしめ返す。そのままゆっくり背中を撫でれば、甘えと怯えが混ざったように、さらにぎゅっと抱きしめてくる。
「本当、いなくなるんじゃないかって…怖かったんですよ…」
「…うん」
「あなたがいなくなったりしたら…私は…」
珍しく、ルカの方が泣きそうな声で話すのが聞こえる。…私が想像していたよりも、ずっとずっと苦しめてしまったのだろうか。
「…大丈夫。まあ…絶対に、とは言えないけど…」
「…」
「今日は、その…ごめんなさい…」
せめて、不安で揺れる気持ちを少しでも宥めようと、ぽつりぽつりとルカへ話しかける。ルカは暫く静かに私の話を聞いていたと思うと、話し終えて少ししてから、ゆっくり頭を撫でてきた。
かと思うと、優しく言い聞かせるように私へ話しかけてきてくれるのが聞こえてくる。
「…もう、怒ってないですよ。取り敢えず、あなたがこうして元気になったのなら…それが一番ですから。でも、約束はしてほしいです」
「…ん?」
「一人で背負い込みすぎない、って。愚痴でもいいですから、重荷になりすぎる前に私にも分けてください。力になれるかは…分からないですけど、それでも話を聞くくらいはできるんですから…」
…仄暗く淀んで固まった私の心に、そんなルカの優しさがゆっくりと入り込んでくる。思わず涙が出そうになって、そんな私の姿を見せないようにと顔を逸らしながら、さらにルカへともたれ寄った。
こんな私がマスターでごめんね、と呟くと、何も言わずに首を振って返事をくれた。
13/13ページ