だいぶ慣れてきたのか、器用に弓を引く。
だいたい一か月、ほとんど毎日練習してきたおかげだろうか。

「だいぶ良くなったんじゃない？姉さん」
「そ、そうかしら？」

でもタクミが言うんだし、そうなのかも。
そう言って姉さんは、はにかんだような、照れ笑いを見せた。

「そんなに褒めたつもりないけど」
「あら、そう？」

今度はどこか残念そうにする。
その表情の変化が面白くて、ついついいじりたくなる。

「まあ、いずれにしてもタクミには敵わないわ」

そう言って、姉さんは僕の頭を撫でてきた。
だいぶ打ち解けてきたとはいえ、そんな風にされると恥ずかしさがある。
照れ隠しも含め、手を払いのけた。

もうすっかり日常茶飯事だからか、姉さんから反応が特にあるわけでもない。
案の定、寂しそうな表情を浮かべて終わりだ。

…なんか、可愛い。
ってあれ？なんか余計なことが入ってきたような。

「ほ、ほら練習する！何のためにここへ来てると思ってるの」

気を紛らわすのも兼ねて、強めに言ってみる。

「ふふ、そうね。えっと、まずはこうして、それから…っ！？」
「どうしたの、姉さん！」

急に、姉さんがひざまずく。
様子がおかしいのは明らかで、どうしたのか見てみる。

手をすりむいたようだった。

しかし、今また弓を練習したところで、普段くらいできるわけがない。

「その怪我じゃあ、今日はもう終わりだね。というか、しばらくはなしだ」
「えっ？」

何が何だか分からないような顔を向けられる。

「だから、弓の練習」
「でも…」
「怪我がすっかり治るまではダメだ。第一、そんな状態でやったところで当たりやしないよ」
「…そう」

すっかりしおれているようだ。
そんなにショックだったのか。

「別に、怪我が治ってからもしないとは言ってないでしょ？」

半ば呆れ気味にそう言う。

「えっ、じゃあ…？」
「…べ、別に姉さんが望むならしてもいいけど」
「じゃあ、お願いしてもいい？」

僕がいいとだけ返事をすると、安堵したかのような表情を浮かべて戻っていった。