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忘 れ な い で …

「ええっ!?聞いたことなかったけど」

そう言って驚くフォックス。
周りにいる皆も、信じられないというような顔をしてこちらを見る。


…別に信じるだとか、信じないだとか、そういう話がしたいわけではない。
けれど、流石にここまでの反応をされるのは3匹にとってもショックでしかなく。

…エアがブチ切れるのも致し方ないのかもしれない。

少し言葉は汚いが、サイガもそんな感情をひしひしと感じた。

「…マア、ダヨネ。過去は過去ダシ。ソウナンダッテコト、頭の片隅にデモ入れておいテくれタラ嬉しい…カナ」
「しっかし、そんな話誰からも聞いたことなんか…」
「そりゃあ、無いだろうね」

扉側から聞こえてきた、少年の声。
皆が一斉に向いた先には、フライの姿があった。

まるで冷たくあしらうかのような言い草にむっとしたのか、ポポが知らなくてわるかったね!と不機嫌さを全面に押し出し始める。

しかし、そんなポポなどそもそも眼中にないのか、フライはレフィールへサッと見回ってきてほしいと言うことを頼みだした。
もうずっと一緒だからか言わんとすることを察したレフィールは、すぐさま頷き部屋の外へと駆けていった。

「で、昔話をしてたの?」
「そ、そうだけど…」
「…そう」

短くそれだけ返事を返すと、フライは昔のことを語り始めた。
「僕らは元々、試験人形〈テスト・フィギュア〉と呼ばれる人形なんだ。だからある程度乱闘の仕組みは把握しているよ」
「てすと・ふぃぎゅあ…?」
「要は、仕組みや乱闘についてを試すための存在、ってとこ」

フライは中でも、エアと共に一番にこの世界へ作り出された存在である。
つまり現状の仕組み全ては分からずとも、すべての根源がどこにあるかぐらいは容易に分かってしまうのだ。

最初にマスターハンドを狙いに行ったのも、主にそれが原因である。

「なら、ぼくたちといればよかったのに…」
「…できるのなら、僕らもそうしたかったです…」
「その言い方はつまり、追い出されたってことか?」
「…まあ、うん。そんなところ」

歯切れ悪く、フライがフォックスからの問いかけに頷く。
直後、でも、と否定するように続けて話しだした。

「君たちは悪くないよ。悪いとすれば…マスハンだから」
「動かないでいいなら、始めっから僕らの命を奪ってもらったほうが良かったんです。急に行き場を失って、こうなるくらいだったら」
「…そんなのやだ!」

甲高い声が急に部屋中に響き渡る。
皆が一斉にそちらを向けば、駄々をこねるようにカービィがやだやだと喚いているのが見えて。

フライとサイガ、インフがそんなカービィを不思議がるように見つめていると、だって…!とさらに話し出す。

「もしほんとにそうだったら、ぼくたちであうこともなかったってことでしょ?そんなの…ぼくいやだ…!」
「確かにそうですが…」
「そもそも、こうならなければ会うはずもなかったんですし…」

インフとサイガが、そう困り果てたように呟く。
また何も言わないが、フライもやや困惑した様子を見せていた。

…フライたちは今までにそんな言葉をかけられた経験など、全くなかったからに他ならない。

「せっかく会えたんだ、そんな悲しいこと言うなよ!」
「そうですよ。今回起きてしまったことは仕方ありませんし…ムリして気に病む必要などないんですから」

しかし、そんな彼らを皆は肯定的に受け止めてくれている。
…それも会ってから、まだせいぜい1〜2時間ほどしか経っていないにもかかわらず、だ。

…確かにマスターやクレイジーは悪かったかもしれないけれど、ここの皆は寧ろいい人達ばかりなのだろう。
なら余計に、これ以上自分たちのごたごたへ巻き込むのはできる限り避けたい。

そんな思いを抱えながら、インフは静かな口調でありがとうございます、と告げた。

「いくらか、気持ちが救われます…」
「そう言えば、レフィールはだいじょうぶなの?」

ふと気になったのか、ナナが不安そうにしながらそう尋ねる。
そんなナナへ、サイガがこの中では1番無難ですよ?と返事をした。


その頃、当の本人はというと…。
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