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忘 れ な い で …

その日は珍しく、町外れ辺りに会話を楽しむ影があった。

「こうやって集まって話すの、やっぱり楽しいですね」
「本当ですよ。静かに森奥で過ごすのもいいけれど、たまには…皆の顔も見たいですし」

そう話すのは、小さな体つきながらも強いサイコパワーを持つサイガと、どことなく怪獣のような雰囲気を漂わすインフの二匹。

他にもいる皆が、二匹の言葉にうんうんと頷く。
…とはいえ、他にいるのは頭に黒い羽根をつけた少年のフライと、唯一普通のヒトである内気な少女のフレア、それからレフィールだけなのだが。

本当はもう一人フライの双子の姉であるエアがいるのだが、今日はどうやら来られなかったらしい。

「そういえば、サイガとレフィールは前に現役の子に連れられてあそこに行ったんだったよね。どうだった?」
「色々、良くモ悪くモ変わっテタネ」
「そうですね。あの頃と比べたら、まず桁違いに広くなっていましたし」

やはり気になっていたのか、フライがサイガとレフィールの二匹にスマブラ館についてを尋ねだす。
二匹は少し顔を見合わせたと思うと、十数年ぶりに訪れたスマブラ館の様子をぽつりぽつりと話していったのだった。


「…そんな大きな規模にまでなったんですね…」
「デモ、ヤッパリと言うカ…ボクたちは存在スラ知られてイナイミタイだったケドネ。迂闊に口を滑らせナイヨウニ、ホーント気をつけたヨ」

フレアの言葉へ頷きながら、レフィールがどこか寂しそうにそう話す。
その言葉を聞いてか、だと思ってた、とフライが呟いた。


…何を隠そう、彼らは昔スマブラ館へ在籍していた頃があるのだ。

今でこそ行き場を半ば失ったも同然だが、こう見えて現役ファイターたちの大先輩なのである。


そんな中、ふと気になったのかインフがフライへ話しかけた。

「今日はエアさんが来られなかったみたいですけれど…どうしたんです?」
「…実のところ、僕にもさっぱり。ただ…エアは元々、あの場所を新しく来た子達に奪われた意識が強いから…今日の話も嫌なのかもとは思ったりはするね」
「そうでしたね。初めは良かったんですけど、年を追うにつれて段々蔑ろにされている感じもしますから…」
「…悪い結果に、繋がらないといいですが…」

そう不安げに呟くサイガに、そこにいる一同がうんうんと頷く。

元々エアの性格は真っ直ぐで一途だ。ただし、たまに聞く耳を持たなくなる場合があるが。
もし悪い方向で走り出してしまったら…それこそ大変なことになる。

そんな中、偶然近くを通っていった二人組の話が聞こえてきて。

「…が動かなくなってしまったりしているんだって」
「まさか、そうなるってあいつの怒りを買っただけな気もするけど」
「それが違うらしいんだよね、マスターハンドが原因じゃないって…」


『不穏な予感』

その5文字が、その場にいた一同の頭の中を駆け巡る。

実際、いつ爆発してもおかしくはなかったのだ。
そのトリガーが今回の件であった、それだけであって…

「…ボク、先行ってるネ」
「うん。僕らも後で行くよ」
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