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忘 れ な い で …

ある某日。今日もまた、ピンク玉に振り回される少年が町を駆ける。
今日はさらにその影も一緒だから、実質振り回され具合は二倍だ。

「もーっ、あんまり食べ物につられて走んないで!」
「だって、きになるんだもん!」
「ねっ!おいしそうなにおい…きになる!」
「だからって…あっ!」

その時、少年の目にある存在が目に留まった。

「…サイガっ、カービィたちを止めて!!」
「えっ!?ま、待ってください…」
「たべもの…っわあ!!ういてる!?」
「なんでなんで、えーっ!?」
「ごめんねサイガ、助かったよ…」

慌てふためき、じたばたする二人を横目に、少年とサイガが話す。
サイガはそんな少年…ネスへなんてことないと返すと、カービィたちをとらえていたサイコパワーをゆっくり弱め、解放してあげた。

「あれ、あとのみんなは?」
「うーん、分からないですね。レフィールさんは姿を消しちゃうし、インフさんはそもそもあんまり人前に出るようなタイプじゃあないですから…」
「そっかあ。フレアとサイガ以外、滅多に会えないね…」

あの日、騒動が終結した後。
フライからの言葉もあって、二人を除いて皆、思い思いにこの世界で生きていくことを選んだのだ。

フレアはその器用さからスマブラ館でお手伝いとして過ごし、サイガたちはその日その日をのんびり気ままに暮らしている。
そんな四人だが、中でもレフィールやインフはほとんど皆の前には姿を現すことがない。

存在を風の噂程度に聞くだけ。寂しいけれど、それが結局の現実に違いなかった。

「…レフィールとインフ、げんきかなあ」

さっきまで追いかけていた食べ物のお店が近くにあったこともあり、買ってから近くのベンチへ座って食べ始める。
そんな中、ぽつりとカービィが呟いた。

「うーん…元気なんじゃない?ほら、便りがないのはいい便りだ、ってよく言うじゃん」
「そうですねえ…心配するほど弱ったりはしていませんよ?会わないのはもう本当たまたまだと思います」

そう話しながら、ネスとサイガはカービィたちが食べ終わるのを待つ。

…ネスたちファイターこそ会わないが、フレアやサイガは昔からの仲間だからか割と会っているらしい。
おかげでどうにか、ネスたちファイターもその近況を知ることができている。

本当は、会って話したり遊んだりしたいのだけど。

「…何辛気臭い空気にナッテルノ?」
「えっ?」
「ご無沙汰してます。ネスさん、カービィさん、シャドーさん」

急に視界の外から聞こえてきた声に、そこにいた皆が一斉に顔を上げる。
そこには至って不思議そうに首をかしげるレフィールと、ボールに座りながらこちらを見つめるインフの姿があった。

「何って…二人にあんまりにも会わないから何してるのかな、って…!」
「…ボクはともかく、インフは書庫で本を読んデル時が多いと思うケド」
「レフィールさん、森の中にいたと思えば街を走り回っていたり、はたまた屋根のてっぺん近くで日向ぼっこしていたり…いろいろですもんね」
「レフィールはせめて、ステルスじゃないでいてほしいなあ…」

急な事実の判明に、ネスが脱力しながらそう呟く。
そんな傍ら、カービィたちはやっとの再会に何をしようか、とわくわくした様子で考えていた。

その後、レフィールたちはなんやかんや振り回された挙句、半ば強制でスマブラ館へと連行された。

久しぶりに会ったんだもん、もっといっしょにいたい!という、カービィたち至っての要望からだ。

「はやくはやく!」
「そうだ、いっしょにらんとうしてみたい!きりふだとかいろいろなしにしたら、レフィールたちもできるでしょ?」
「できるカモ知れナイケド、ブランクがあり過ぎて正直分かるモノもワカンナイヨ」
「まあ、やってみるだけ面白いかもしれませんし…」

そう言うインフにやや渋い顔をしつつ、レフィールが仕方ナイなあ、と頷くのが見える。
そんなレフィールへ、カービィたちは本当に嬉しそうに喜び出した。


…またスマブラ館のある部屋の奥では、ガラスケース越しに座っている一対の人形が置いてあるのだという。
今日もまた微笑みながら、仲良さそうに寄り添いあっているのかもしれない。
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