研究者は語る
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一昨日の調査から何の進展もなく二日が経過し、この村への滞在も残すところあと二日となった。今日も含めれば三日だが。
『頼む!どうか私をあの神獣まで連れて行ってくれ!』
兄弟岩の調査を終了してからその後は、ずっとこうして神獣ヴァ•メドーに行くための同志を探しているのだが…返事は決まって
「ひいっ!そんなことしたらリーバル様に怒られてしまいますよ!」
である。
神獣とリーバル殿の相性を高める調整を行うという時も姫は地上で遠隔操作していると言うし、そもそも我々ハイリア人が一度でも神獣に入ったという記録は残っていない。
だがしかし、選ばれた四人の英傑に神獣の操作を託すだけで、我々が神獣内部のことを把握出来ていないのはどうなんだろうか。
厄災ガノンの目覚めを見越して備えるのならば、失敗のリスクは少しでも減らしておきたいものだ。
そういうわけで、こちらとしても諦めるわけにはいかないのである。
「僕の神獣に君を?しかも、君を僕の背に乗せてだって?
フン、絶対嫌に決まってるよね」
仕方がないから、本当は絶っっっっ対に頼りたくなかったリーバル殿に頭を下げてみたが、敢え無く玉砕。
背に乗せろだなんて一言も言っていないが、彼らリト族の手は翼の役目を持っているし、飛んで物を運ぶ際は体にくくりつけるか背に乗せるかしかないのだろうからそんな風に捉えられるのも無理はない。
『貴殿がわざわざ動かずとも、私に神獣へ行く許可さえ与えてくれれば良いのだ!』
「それも含め、どうしてもって言うなら考えないこともないけど、もっと頼み方というものがあるよねえ?」
『なっ…!!』
何という奴だ。全く期待はしていなかったがまさかこんな言葉を返されるとは。
恐ろしい。何故こやつが英傑に選ばれたというのだ。世も末だな。
厄災が目覚めたらこやつの所為にしてくれる。
しかし今は調査が第一優先だ。
そのためなら私のプライドなど…心、など……石にして…。
『神獣を調査する許可を…いただけないでしょうか……』
敬語など、真に尊敬する姫とハイラル王にしかつかったことがないのに……。
このような奴に私は……私は………い、いやでも、これが厄災討伐の成功率を上げることに繋がるのなら私も本望だ!
自分に言い聞かせるように頭の中でそう唱えるも、握りしめられた私の手は食い込んだ爪によって流血事件が起きている。
いやいやでもな、調査が出来るならこんな痛みなど屁でもないさ。
「ま、気が向いたらだけどね」
『はっ……?』
くるりと私に背を向けたリーバル殿は、そのまま羽ばたいてどこかへ飛んでいった。
今夜の夕食が決まった瞬間である。焼き特上トリ肉だ。
*
*
*
『えっ、明日にはここを出る?』
その後、部屋に戻るとリンクにそう告げられた。
徐々に回復してきて、今日の朝なども熱はなかったんだが、姫の容態はそんなに悪いのだろうか。まさか急変でもしたのか?と思いきや、どうやらそうではないらしい。
「熱は下がっているんですが、だるさが体に残るらしくて…城でちゃんと、姫に合った病人食を作ってもらわないとなんです。
俺の雑な料理だと栄養がちょっと……」
『しかし、だるさが残るならば馬での移動など無理ではないか?』
「あ、その点は大丈夫です。
昨日の朝、この村のヒトに城まで手紙を届けてもらったんで、たぶん今日中には着くと思います」
村の者を伝令係のように使うとは…。私が城に伝えに行くという方法もあっただろうに。
それに、明日帰るだなんてそんな大事なこと、何故決めた時点で私に言わないのだ。
「ザクロ……?」
私がどんな顔をしていたのかは知らないが、ゼルダ姫は私の顔を見るなりベッドの中から手を出して私の手を握った。
「あとで迎えを来させます。
父やあなたの隊の者にも私から話しておきます。
…だから、あなたの気が済むまで存分に遺物調査を続けてください」
『……………はい?』
「調査のためにここまで来たのに、私は皆に迷惑をかけただけで何の役にも立ちませんでした…。
私の代わりに…というわけではありませんが、あなたはリーバルとの関係も築けていたようで『姫』、きっとあなたな『姫』獣に赴い『姫』…はい?」
ごほんと咳払いを一つ。
姫の言葉を遮るなんて恐れ多いことだが、これだけははっきりさせておかねば。
『お言葉ですが姫、私はあやつとの関係など何一つ築けておりませんが、…一体何を見てそのように思われたのでしょうか……?』
「リンクがいるにも関わらず、彼ではなくあなたと戯れに行っていたのでもしかしたらと思ったのですが…違いましたか?」
………これは…。
例え真実は違っても、疲れたご様子の姫に心配をかけたくはない。それも、こんな私的なことで。
『いいえ、姫がそう思われたのならそれが真実です。
彼とはとても好ましい仲ですから、安心してください』
無理矢理ひねり出した笑顔は想像以上に私の表情筋を殺していったが、姫が笑ってくれるならばいいか。
翌朝、いつの間にやら到着していた馬車に乗って、ゼルダ姫とリンクは帰って行った。
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