厨二病とか恥ずかしくないんですか
地名やら建造物に偉人や縁のある人物の名前がつけられることはさして珍しいことではない。このハイラル王国にもちらほらそういった、よくよく聞けば元は過去の人物名を元にして付けたとされる名称が多い。
古くから人類が行ってきたことだし、その偉人や彼らの名誉などを広く語り継いでいくためだと考えると合理的だとも言えるだろう。
頭では理解してる。
でも
『ハッ、リーバル広場って…』
「なんだいその顔」
存命中に自分の名前が身近な場所の名前に使われるってどんな気持ち?
少なくともワタシは御免だ。その場所の名前を呼ばれるたびに全身がくすぐったく感じられることだろう。
『よく自分の名前を広場の名前として使うことを許しましたね』
「ああ、なんだそういうこと。
君には分からないだろうけど、自分の名前が後世に語り継がれるのは名誉なことだよ」
君には分からないだろうけど!
リーバルは語気を強めて繰り返した。
私にも分からないことはない。分からないこともないけど身をもって知る機会は無くて良いなと思う。
『後世に名前を語り継ぎたいのなら、あなたが今陰でコソコソ猛練習している技名にも名前を取り入れたらいいのでは?』
「もちろんそうするつもり……ってちょっと待ってなんで君がそんなこと知ってるんだよ」
『疲れてぶっ倒れてたあなたを介抱したのは誰だと思っているんですか?』
リーバルは息を飲んで気まずそうに視線を逸らした。
どうやら思い出したようだ。
ある雪の日、暗くなってもなかなかリーバルの家に火が灯らないことに気付き、飛行訓練場まで様子を見に行ったことがあった。
リト族は他の種族と比べて夜目がきかない。だからどの戦士も暗くなる前には帰ってくるのが常だった。それなのにリーバルは全然帰らなかったため、仕方なく探しに出た私が訓練場…から少し外れた雪の上で倒れているリーバルを発見することになったというわけだ。
あの時は頭を抱えたものだ。
寝るのなら場所を選べと心底思った。あの時リーバルを東屋の中まで運んだのは本当に火事場の馬鹿力というやつだったんだろう。
「はぁ…。その節はドーモ」
リーバルは人に自分の弱みを見せることを良しとしない。それなのに、よりにもよって嫌いな相手に弱みを握られて(握っているつもりはないけど)いただなんて、彼ほどプライドが高ければ到底許せないことだろう。
だからあの時もリーバルが目覚める前に退散したのだから。
『ま、完成したら私にも見せてください?期待はしていませんが』
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