ラブストーリーは突然に
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「じゃ、風邪ひかないようにね」
『あ…リーバルさ………いえ、あの……さっきはありがとうございました…』
「ん、おやすみ」
『ということがありまして……』
「なるほどのぅ……で、それがその弁当かい…」
族長さんは私のお弁当を指差し首をかしげた。
お弁当箱には入っているけれど、落っことしたり振ったりしたから中身は色んなところに混ざってしまって美しくない。
悲しくて泣くのは嫌だけれど…作っている時の私を思い出すと涙が出てきた。
『頑張って作ったから…本当は食べて欲しかったです……』
「ほほう………だそうじゃよリーバル?」
『え?』
族長さんの視線を追って振り返ると、入り口にもたれかかれるように立つ愛しのリーバル様が。
まさか全部聞かれていた?
『え…えと、どうしたんですか?』
「別に。お腹が空いたから君を呼びに来ただけ」
『あ………じ、じゃあ私今から何か作りますよ。何か食べたいものはありますか?』
私のご飯なんて後だ!今一番優先すべきことはダーリンのお腹を満たすこと!!
「それ」
『それ?…どれ?』
「それ。それ食べるよ」
リーバル様が長ーい指を向けた先を振り向けば、テーブルの上に広げられたお弁当が………いやいやいや。
『これはもうぐちゃぐちゃになっちゃいましたし、とてもじゃないけど…』
「しつこいな。僕のために作ったんだろ?それなら僕が責任もって食べるよ。
ツバキのくせにごちゃごちゃ言わないでくれる?」
『………』
僕は行ってるよ、と残して彼は踵を返す。残された私の顔と言ったら…ちょっと族長さん、私、あなたが笑いこらえてるの分かってましたからね?
「ほら、お行きよ」
『…はい』
広げたお弁当をまた風呂敷で包み、リーバル様のお家へと急いだ。彼はもうテーブルに向かって座っており、私に気付くと反対側の席を指さしたのでおずおずと席につく。
リーバル様が無言で私の持つ風呂敷を見つめているものだから、いたたまれなくなりテーブルの上にそれを広げた。
「あぁ…これはひどい…」
『す、すみません…』
甘露煮ゾーンに乱入した卵焼きにフォークを突き刺すと、彼は迷わず口に放り込む。
「うん、やっぱり君、料理の腕はあるよ。美味しい」
見た目はひどいけど、と笑いながら彼はどんどん食べ進めていく。
量は結構作ったつもりだけれど、二人で食べるとそれほどでもなかったみたい。…いつもはそんなに食べないのに…やっぱりリーバル様は優しいな…。
「あのさぁ、そんな辛気臭い顔しないでくれる?
不味かったら僕が我慢してでも食べるはずがないだろ?」
『で、でも…』
「はぁ…まあいいや。
それより、食後のデザートが欲しくないかい?」
『あ、それならこれを…』
風呂敷の中に未だ隠れていたケースを取り出し蓋を開けると、中身を見てリーバル様は苦笑した。
馬宿のところになっていた、彼の大好きなイチゴ。他のお弁当とは入れ物が別だったし、特に加工…というか料理していたわけでもないからこれだけは無事だったみたい。
「なんだよ、君も採ってたんだね」
リーバル様は、ごそごそと取り出した袋をテーブルに乗せ、しゅるりと紐をほどくと中から大量のイチゴが出てきた。
『あれ?えっと…え?』
「君が喜ぶかと思って今日はこれを採りに行っていたんだ。
……訓練場に行くなんて嘘ついて悪かったよ。まさか君が追ってくるなんて……」
私を喜ばせるためにイチゴを採りに行っており、今日は飛行訓練場には行っていなかった……なるほどなるほど。
リーバル様の言葉の続きを静かに待っていると、
ごめん。
小さかったが確実にそう呟いたのがわかった。
『大丈夫ですよ。結局怪我とかはしてませんし』
「違う、そういう問題じゃない。君を危険な目に合わせた。ここらの魔物は掃討したつもりになっていたんだ」
『それでも魔物が一匹しかいなかったのはリーバル様のおかげじゃないですか』
リーバル様は何も悪くない。のに、私がそう言っても当の本人が納得する様子はない。
これでは埒が明かないと思ったので、左手でリーバル様のスカーフ、右手で袋に入っていたイチゴを無雑作に掴み、まだ口を開こうとするリーバル様の口の中へと押し込んだ。口移しでも私は構わnいや構うね刺さるね。
そして彼がもぐもぐしている間に私もお一ついただく。うん、甘酸っぱい。
「むぐっ!ぐむむっ…!……………ッ何するんだいきなり!!」
『はい、美味しいですね。
いいですか?リーバル様。私を喜ばせようとしたその気持ちが私はすごく嬉しいんです。だから自分を卑下しないでください』
「……分かったよ」
『ありがとうございます。さ、じゃあ気持ちを切り替えて結婚でもしましょっか!』
「なんでだよ族長の部屋に戻りなよ!」
『ふふ、今日こそ布団に潜り込んでみせますよ!』
「やめろ!!!」
良かった…また冗談を言えるような関係に戻れたみたい。あ、私からしたら本気だけどね?
今日のように何か小さな問題ならば起きてもいい。けれど、どうかこんなものでは済まないような大きな出来事は起きないで、ずっと同じ日常を送っていられると嬉しいな。
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