ラブストーリーは突然に
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「ツバキ、いる?」
『はい!ここに!』
彼が私を探すなんてなかなか珍しい行動だなぁ…。どうしたんだろう…。
「僕今から飛行訓練場行って来るからさ、夜ご飯は一人で食べててよ」
『それなら私お弁当作りま……わーお早~い』
私が言い終える前に我が旦那様おっと間違った、リーバル様は飛び立ってしまった。
リーバル様と食べるからこそ意味があるのになぁ…。
何の用があって彼が訓練場に行くのかは分からないけれど、やっぱり諦めきれないし、お弁当持って行って一緒に食べよう。
君、料理の腕だけはあるんだねってお褒めの言葉もいただいたし、一人で食べててって言われたけどきっと怒られない!はず!
もしも怒られたらそれはそれでご褒美だけどさっき採ったばかりの彼の好物を差し出して許してもらおう。
*
*
『リーバル様ー?』
…………
おかしい。遥々訓練場までお弁当担いでやって来たけれども紺色の彼の姿は見えない。名前を呼んでも返事もない。というか、灯りすら灯されていない。
つまるところ、誰もいない。
『行き違いかな…?』
場内の焚き火は冷え切っており、今まで使っていたとは思えないけれど、ぶっちゃけそんなことはどうでもいい。
ここにいないという事実は変わらないし。
かーえろ。
日はほぼ沈んでしまったようで、辺りはもう真っ暗だ。
時折雲の隙間から顔を出す月明かりを頼りに、雪に足を取られて転ばないよう足を進める。
こういう時、リト族はいいなぁ…なんて思う。
めんどうな道をショートカットしたり、リーバル様の隣を飛んだりすることだって出来るのだから。
………まぁ、飛べていたらリーバル様に助けられることもなかっただろうけれども。
「ギャッ!」
『ッ…!』
しまった…!
雪の中から飛び出してきたリザルフォスがものすごい勢いで間合いを詰めてくる。突然のことに驚き、足を滑らせ尻もちをついてしまったが、そのおかげでリザルフォスに串刺しにされずに済んだ。
が、安心するのはまだ早い。
振り下ろされる槍を横に転がり回避しそのまま態勢を整え走り出したが、今まで手に持っていたものが無くなっていることに気が付いた。
『お、お弁当…!!』
あれはリーバル様のためにと心を込めて作った、自分で言うのも何だが愛妻弁当。こんな魔物になんて絶対に取られてなるものか。
幸いにも、振り下ろした槍は地面へと深く突き刺さり、抜くのを苦戦しているようだ。
今のうちに拾っ……
ズボッ
『えっ……』
奴の足元に転がる弁当を拾おうと腰を屈めた丁度その時、地面から槍先がぬける音がした。
走れる態勢ではない。
あ…これは死ん――
「ツバキ!!伏せろ!!!」
『…!』
――ヒュッ
――ボンッ!!!
「ギヤッ!!」
小さな爆発音と共にリザルフォスは溶けて消えた。
し…死ぬかと思った……。
お弁当は…包みは汚れてるけど蓋はあいてないみたい。こんなのリーバル様には食べさせられないけど、私のご飯にはなるかな…せっかく頑張って作ったし、無駄にはならないから良かった…。
ほっと息をついているとふわっと空からリーバル様が降りてきた。
すごい…ご立腹なのが見て分かる…!
「君さぁ……馬鹿なの?」
『う"……』
「なんでこんなところにこんな時間に武器も持たずに一人でいるのさ」
『そ…れは……えっと…』
あなたと一緒にお弁当が食べたかった、なんて言ったらリーバル様に責任を押し付けてるみたいになってしまうよね…。
「……まあいいけど。ほら、帰るよ」
何と言おうか考えていると、しびれを切らしたリーバル様は私の手を取り立ち上がらせてくれた。
彼が自ら私の手をとってくれるのは初めてで、とても嬉しいけれど、どこか乱暴で、きっと理由を言わずに黙っていたから怒っているんだろうなって。
村までの帰り道、リーバル様も私と一緒に歩いてくれたけれど、どちらから話しかけることもなく、無言のままただただ歩くだけとなった。
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