自己中心的愛情
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「リアンー!おーい!どこだー!」
ナビィと僕の双子の妹 リアンと一緒にハイラルを救って子どもの時代に戻り、 そして正しい7年を過ごして僕らは大人になった。
ハイリア人だと、真実を知ってしまった僕らはもう、コキリの森には戻れない。
行く宛のない僕らを迎えてくれたのは、ロンロン牧場のタロンさんとその娘のマロンで、インゴーさんにはあまり良い顔されなかったけど…なんやかんや3人ともまるで本当の家族のように接してくれた。
「あら?リアンならハイリア湖に行くって言ってたわよ?」
「はあっ?!またか!!」
ゼルダから久しぶりに会わないかという手紙が来たから、マロンも誘って3人で城下町に行こうと思えば、あの馬鹿妹はハイリア湖に行っているときた。
別にあいつがどこに行こうとも、あいつには男女差を除けば僕と同じくらいの実力はあるから、魔物に襲われるとかそういう心配はしちゃいない。大抵の魔物ならばあいつ一人でも十分凌げる。
なんだけど…行った場所に問題があるんだよなあ。
ハイリア湖には"あいつ"がいるし、絶対リアンはあいつに会いに行ったに違いない。
「マロンごめん!僕も行ってくる!
エポナ借りるね!」
「あ、エポナならリアンが…」
「あああ!くそっ!馬鹿リアンめっ!」
マロンの愉快そうな笑いを背に受け、僕は他の馬に跨り走り出した。
エポナだったら柵を飛び越えて近道出来たけれど、他の馬は出来るか分からないからちゃんと正規の道を通る。
絶対一人でハイリア湖には行くなよって言ってるのになんで守れないかなあ。
今日こそはがつんと言ってやらないと僕の気が済まないぞ。
「リアンー!!見つけたぞー!!!」
ハイリア湖の中心の島で、仲良さげに談笑する影が2つ。
やっぱりこいつか!
「ダーク!」
「~♪」
『リンク!なんでここに…』
「マロンに教えてもらったんだ。全く、油断もすきもない!」
たじろぐリアンと悪びれもなく寝転がりながら口笛を吹くダークことダークリンク。
ホント、7年後の世界でばっちり倒したはずだったのに、なんでこっちの世界にいるのかなあ。倒したって言っても、最後は水に溶けて消えてしまったから本当に倒せたのかどうかは分からなかったけど。
というか、いつからこの二人はこんなに仲良くなったんだ?ダークと再開を果たした時は僕も一緒にいたし…一体いつなんだ?
「そんな難しい顔してどうしたァ?
「誰がお前の義兄だ!」
『そうだよダーク!気が早いよ!』
そういうことじゃない。
けたけたと楽しそうに腹を抱えるダークの隣で、そんなそいつを愛おしげに見つめる我が妹。僕と同じ顔のはずなんだけど、ダークがいると急に女の子の顔になるんだもんなあ。
僕も誰かを好きになったらこんな顔になるんだろうか。想像すると気持ち悪いな。
「結婚とか、まさかそんな馬鹿なことを考えてはないよね?」
「あ?」
『馬鹿なことって、そんな言い方ないでしょ!』
「いくら人の形とは言えダークは魔物なんだぞ!人と魔物が結ばったとして、お前はそれで幸せになれると思っているのか?!」
ダークのことが嫌いなわけじゃないんだ。
でも、魔物であるダークとただの人であるリアンでは、同じ時間を歩んでいくことは出来ないから。
大切な人を失っても、ダークはただただ、消えることも出来ずにそのまま生き続けることしか出来ないのだ。
あまりにも不憫じゃないか。
『私は!外見でダークを好きになったわけじゃない!』
「そういうことじゃ…!」
「もういいって。
俺は確かに魔物で、お前らみたいに人間じゃない。それは変わらない事実なんだ」
『そんな…!』
リアンは慌ててダークに駆け寄る。
言い方がきつかったか。でも、ダークの言う通りこれは変わらない事実で、認めるしかないことだから。
『リンクの言うことは気にしなく……んッ??!!』
「お、お前ダーク何を!!!」
油断した!
ダークは駆け寄ったリアンの肩を抱き、あろうことか僕の目の前でキ…キスを…!!!
リアンなんか真っ赤な顔で口をぱくぱくさせて、まるで金魚じゃないか!
「リンクよ、俺はお前の影から生まれた言うなれば分身だから、お前の考えは分かるぜ」
「何だって?」
「どうせ、リアンが死んだあとに残される俺のことを心配してくれてんだろ」
『…え…?』
「………」
意外そうな顔をしているね、リアン。僕がただ意地悪をしているだけだとでも思っていたのかな。
そんな、妹の幸せを望まない兄なんてどこにいるんだ。
リアンは僕と目が合うと、そのままバツが悪そうに顔をうつむかせた。
「甘っちょろいこと言ってるってのは分かってんぜ。魔物と人間の結婚なんて、誰も祝福してくれないこともな」
「………」
「でも、こいつはそれも全部含めた上で俺を選んでくれた。あとに俺が一人取り残されることも考えて、嘆いて、それでも今を俺と生きたいと言ってくれた。
だから俺はそれに応える。こいつが生きている間は俺が幸せにしてやるんだ」
ダークは視線を一切外さず言い切った。
悲しみを負うのはダークだって言うのに…リアンときたら…
「………僕に似て自己中な奴」
「いや、こりゃお前よりもひでえよ」
『ちょっと』
「ハハ、冗談だっての」
ダークが頭をぽんと撫でると、リアンの表情はたちまち明るくなり、挙句二人で微笑み合ってさ、そんな二人に僕まで温かい気持ちになる。
行き着く先は悲劇なのに、なんて幸せそうなんだろう。
『先を考えて嘆いても、何にも意味ないって気付いたんだ』
「ああ、俺達は"今"を歩いている」
*
*
*
「おめでとうリアン!幸せにね!」
『ありがとうマロン…!また会いに来るからね』
あらら…マロンもリアンも涙で顔がぐっちゃぐちゃだ。
何気にインゴーさんも端の方で涙ぐんでるし…。
今日はリアン達の結婚式だ。
ゼルダに事情を話して頼み込み、時の神殿を貸し切っての、身内だけでのささやかなものだけれど、二人とも幸せそうで何よりだ。
神父役はゼルダが買って出てくれた。
一国のお姫様が執り行ってくれるだなんて、恵まれてるよね。
結婚式が終了するとすぐ、二人は二人の時間を大切にしたいと馬に跨りどこかへと行ってしまった。馬で新婚旅行ってどういうこと。
マロンもタロンさんもインゴーさんも、泣いて寂しがるかと思いきや、この忙しなさもリアンなら納得だとでも言うようににこやかに見送っていた。
え、もしかしてこの中で1番寂しがってるの僕?
なんか悔しい。
リアンってば、生まれる前から一緒にいたって言うのに、最終的には僕じゃなくて他の人を選ぶんだもんなあ。
あいつが幸せなら文句はないけどね。
ダークのことも結構好きだし信頼してるし、リアンのことを幸せにしてくれるなら、そしてダーク自身も幸せになってくれるなら、こんなに嬉しいことはない。
だからどうか、僕のために
願わくば、君達二人に最上の幸福があらんことを。
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