研究者は語る
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『……はぁ…。私にもあの美しい翼があればな…』
あのような奴に頭を下げる必要もなかったのに…。
遺物の資料に目を通しながら、思い出してはため息をついた。
知り合いに代々鳥人間の研究をしている奴がいるし、あやつの羽を全てむしり取って提供したら1ミリくらいは研究の役に立つのではなかろうか。
「何、それって僕のことを言ってる?」
『…………あぁ』
「美しい、ねえ。
当たり前だろ。自分の羽毛を綺麗に保つなんて、英傑として当然のことだよ」
そうかそうか。
ならば次に来るまでに、料理長に鳥の羽の綺麗な毟り方を教えてもらわねばな。
そんなことを考えると、自然と頬が緩むのを感じた。
その美しい紺色の翼も、これで見納めだな…。
「あー…いや、こんなことを話しに来たんじゃないよ。
ほら、メドーへ行くんだろ?あいつが帰った今なら別に連れてってあげてもいいよ」
『本当か!!?』
思いがけない奴の言葉に勢い良く立ち上がってしまい、読んでいた資料を床にぶち撒いてしまった。
これで嘘や冗談だった場合は案山子でぶん殴る。
「疑り深いな。寒さ対策だけしたらすぐ、そこの広場まで来てよね」
『わ、…分かった!』
*
*
「ちょっと!首絞めないでくれるかい!」
『すっ、すすす、す、すまない…!』
拝啓
ゼルダ姫様、私はもう、あの世とやらに行かなくてはならないようです。あなたが仲良くと仰ったリーバル殿は、現在進行形で私を天へと導いてくれていますよ。
あぁ、あなたの笑う姿が思い浮かびます。そうですよね、彼が天からの使いなど、笑えますよね。
「首!絞まってる!」
身支度を整え広場に行くとすでにリーバル殿は待っていて、こちらに気付くとすぐに私に背を向ける形で跪いた。
早くと促されるまま背に体を預ければ、なんと、私が心の準備をするその前にこやつは空へと飛び出したのだ。
飛んですぐは見たこともない景色に感動を覚えたものだが、ぐんぐんと上昇するうちに景色を見る余裕はなくなり、今現在はリーバル殿の後頭部に顔を埋めている。4本の三つ編みがびしばし当たって痛いし怒られたけれど、顔を上げる勇気も言い訳を述べる余裕も、今の私には存在しない。
高いところが苦手だとか、別にそんなことはない。ハイラル城だって本丸まで行けば結構な高さがあるし、知恵の泉に行ったついでに登ったラネール山の頂上もなかなかのものだった。
が、これはレベルが違うだろう。
リーバル殿の首にしがみついて情けない姿を晒すのも頷ける。いや頷いてくれ。
『死ぬかと思った…』
「それは僕のセリフだ!
全く……」
ぶつぶつと文句を垂れるリーバル殿に何も言い返せないほど私は憔悴しきっている。
喋るのも億劫だ。
「中も自由に見てくれて構わないけど、落ちるのだけは勘弁してくれよ」
『あぁ…善処する…』
「善処じゃない!絶対だ!」
『…分かった』
ゆっくりと立ち上がるこの姿に音を付け足すならそう、のっそり。
リーバル殿の眉間にシワが寄るのが見えた。
「…ったく、心配だから僕も着いてくよ」
*
*
『今日は本当にありがとう。
この調査結果は城に持ち帰り、必ずや厄災討伐の成功率を上げると約束しよう』
「何それ。僕がメドーを操るんだから、厄災討伐の成功なんてそんなのは当たり前だろ」
この…。
何故こうもいちいち癇に障る言い方しか出来ないのだこやつは。
「ま、期待してるよ」
『お……………おぉ……。
まっ…任せろ!
そうとなれば今すぐにでも城に戻り研究に取り掛かるとする!
では!姫やリンク共々世話になった!
族長殿にもよろしく言っておいてくれ!』
まくし立てるようにそう言い残して馬に跨がれば、後ろで慌てふためいたような声が聞こえたような気がするが、走り出した今では確認する術はもうない。
リトの村が段々と遠ざかる。
思えば、私も随分と単純な人間になったものだ。
大嫌いな奴に嫌味な言い方をされて苛ついたと思えば、期待されたことについ嬉しくなりその期待に応えようと思ってしまうだなんて。
人間として成長したとも言うのだろうか。あのような奴のおかげでそうなったと言うのならば………少し癪だ。
とりあえず、暗くなって魔物が現れる前にはタバンタ大橋馬宿には辿り着きたいため、余計な考えは捨て、馬を走らせることに集中するとしよう。
帰ったら研究が待っている。
あ、迎えの者を待つのを忘れた……。……姫への言い訳を考えよう。
研究者は語る
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