星に願いを
「君は向こうでは幸せにやっているかな」
誰に言うでもなく僕は呟いた。
答えなんて誰にも分からないけれど、せめて、君の選んだ道が茨の道でないことを願うよ。
こっちではいつも悲しそうな顔をしていたね。最近では疲れた笑顔しか見せなくなっていたから、僕はいつも君が心配だったよ。
けど、そんなある日、僕は見てしまったんだ。
夜空を見上げながら、涙を流しているにも関わらず綺麗に微笑む君の姿を。
何故かって聞いたら、君は星が好きなんだと言ったよね。綺麗で、儚くて、それでいて美しいなんて言ってさ。
まるで君みたいだって、柄にもなく僕もそう思ったんだ。
今思えば、あれが君の本当の笑顔だったんだろうね。すごく魅力的に感じたよ。
僕が君のことを好きだったって、君は知ってた?
君はそういうところがすごく鈍かったから、たぶん気付いていなかっただろうね。
でも、そう。ずっと前から僕は君だけを見ていたんだ。
だから、初めて君の本当の笑顔を見た時にはすごく嬉しかったのを覚えてる。
星になりたい。
だなんて君はこぼしていたけれど、君はロマンチストなんだね。星になんてなれっこないのに。
それでも、 僕は君のことが好きだったから、好きで好きでたまらなかったから、君の願いは全て叶えてあげたかったんだ。
そういう意味では、僕も星になりたかったんだろうね。
君がどういう意味で星になりたいと言ったのかは分からないよ。でも、きっと、最期にまたあの綺麗な笑顔を見せてくれたから、僕の行動は君にとっての正解だったんだと思ってる。
思ってるけど…。
やっぱり不安になるんだ。
星になった君は喋らない。だから、僕を、僕の行為を認めてくれる人は誰もいないんだ。
後悔はないよ。
でも、たった一つこれだけが気がかりなんだ。
僕は、君にとっての星になれたかなぁ。
星に願いを