美味しく食べる君が好き
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王と料理長である私の父は古い付き合いがあるらしく、幼い頃からその娘同士ということで姫様とは仲良くさせていただいていた。
お互いに母がいなかったから、その寂しさを互いに埋めあっていただけなのかもしれないけれど、今は違う。ずっと一緒だったから、身分は違っても私達は親友同士であると胸を張って言える。
「##NAME1##、今時間ありますか?」
『はい。どうしたんですか?』
姫様が恐る恐る厨房の扉から顔を出してこちらを伺っているので、夕食の後片付けをする手を止めた。
こんな時間に珍しい。どうしたのだろう。
「明日はゲルドの街まで行くのですが…お弁当を作っていただけないでしょうか…?」
『いいですよ。何かリクエストはありますか?』
「あなたの作るものは何でも美味しいですから特には…。
でも、今回はリンクと、ウルボザと一緒に食べられたらいいなと思います」
『リンク様とウルボザ様ですか…。分かりました、考えてみます』
*
*
『リンク様は何でも美味しそうに食べてくださるしなぁ………ウルボザ様は……お酒…?』
後片付けを他の人に頼み、私は食堂にて姫様達のお弁当の品目を考えることに取り掛かることにした。のだが、正直、「なんでもいい」が1番困る。
なんでも美味しいと思ってくれるのはありがたいのだけれど…。
「##NAME1##?」
頭を抱えてテーブルに突っ伏していると、頭上から声がかけられ驚きに肩がはねた。そしてそんな私を見て、声をかけてきた人物はくすりと笑う。
『リンク様…』
「こんな時間にどうしたの?まだ仕事?」
仕事というよりは趣味に近いけれど…間違ってはいないので頷いておく。
『リンク様こそどうされたんですか?』
「剣の鍛錬してたら夕飯逃しちゃって…何かないかなって」
『あ、では今何か簡単に作ってきますね』
「えっ!いやそれは悪いからいいよ!何か、りんごとか食べ物さえもらえれば…」
『行き詰まってたからいいんです。そこにかけて待っててください』
リンク様がイスにかけるのを見て私も食堂をあとにした。
鍛錬に夢中になって食事を逃すなんて、リンク様も可愛らしいところがあるんだなぁ。
何を考えているのか最初は分からなかったけれど、姫様にご紹介いただいたあの時から、少しずつだけれども会話をするようになって、今では多少だけど表情が読めるようになった気がする。
『お待たせしました。サーモンムニエルとキノコおにぎりです』
「おお!」
リンク様の目の前に置くと、彼の目が輝くのが分かった。
食事に関しては本当に分かりやすい人だ。
美味い美味いと幸せそうな顔で食べる彼をずっと見ていたいけれど、私にはやることがあるので返事を返しつつペンをとった。
「………」
ゲルドの街までは馬でどのくらいかかるだろうか。それによって作るものを変えなければいけないし、場合によっては何食分かは作らないと。そうなると保存の効くものにしなければならないし……うーん…。
「それ、もしかして明日の弁当?」
『はい。腕によりをかけるので、楽しみにしていてくださいね』
「…その割にはあまりメニュー決まってなさそうだけど…」
『う……』
やはりバレていた。ずっと視線を感じていたからもしかしたらとは思っていたけれど。
「行き詰まってるって言ってたのはそれのことだったんだ」
『色々考えてしまって…。で、でも明日にはちゃんと間に合わせますから、そこは安心してください!』
「うん。でも俺も手伝うよ。二人の方が早く終わると思うし」
『え…それは悪いです…。リンク様は明日に備えて休んでください』
「さっきのお礼。
それとも、俺じゃ役に立たないかな?」
『そ、そんなことは…!』
「じゃ、いいよね」
『………ありがとうございます…』
優しさが身に沁みる。
ここまでぐいぐいくるリンク様は初めて見たから驚いたけれど、それと同時に惚れ直した。あああ恥ずかしくてお顔が見れない。
*
*
「明日は昼頃城を出て、ゲルドキャニオン馬宿で馬を預けて一泊したら、そこからは徒歩で行こうと思ってる」
『なるほど。じゃあ明日の夕食と明後日の朝食、昼食の計3食作りますね』
「昼食?昼はゲルドの街で食べようと思ってたけど」
『姫様がウルボザ様とも一緒に食べたいと仰っていて…』
「あぁ、なるほど…。ウルボザは酒さえあれば喜ぶよ」
やっぱりか。パーティの時には食事よりもお酒を飲んでいたからまさかとは思っていたけれど。
しかし、真っ昼間からお酒を出すわけにはいかないし、そこは別の何かで代用しよう。
『夜は冷えるから体の暖まるものにして……と、出来た!』
「お疲れ様。俺達のためにありがとうな」
『いえ!手伝ってもらいましたし、好きでやっていることなのでいいんです!』
「そっか…。
じゃあ、俺はもうそろそろ行くけど、##NAME1##ももう休めよ?」
『はい。おやすみなさい、リンク様』
「おやすみ##NAME1##。飯、ありがとう」
こちらに向かって軽く手を上げたリンク様に深々と頭を下げて見送った。
徹夜も覚悟していたけれど、彼のおかげで早く終わったから今夜はゆっくり眠れそうだ。
明日のために下ごしらえだけして、今日はもう休もう。
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