来世ライフ
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最後に見たものは、涙でぐちゃぐちゃの元カノの顔と、自分の腹に深々と刺さった包丁だった。
焼けるような痛みの中で、もう助からないということが本能的に分かった。
元カノは狂ったように笑い、包丁を乱暴に引き抜く。
来世でまた会おうねじゃねえええ。
『はっ!!』
夢か。最近全然見なくなったと思ったんだがなあ。
汗で全身びっしょりだ。まるで悪夢だな。って、自分が死んだ時の夢なんか悪夢と言っても過言じゃないか。
そう。俺はあの時死んだ。
友人達との焼肉の帰り、というか店を出たところで、振られた女に何故か刺されてな。理由なんか考えても、今となっては分からないからもういいけど。
で、次に目覚めた時には元カノとも医者や看護師とも違う誰かが俺を抱き上げていた。ぼやけてよく見えなかったんだが、今思えばたぶん俺をとりあげてくれた産婆さんか何かだと思う。
ま、早い話が転生だよな。
母親らしき人物は、俺に生前と同じ##NAME1##という名をくれた。混乱しなくて済むからラッキーだったぜ。
ある程度生活して、というか成長していくつか気付いたことがある。
一つ目に、ここは日本ではないということ。いや日本どころではない。何と言うか、一言で表すならば「剣と魔法の世界」というのが妥当だろう。
エルフのような耳が両親に、そして自分にもついてると気付いた時には衝撃を受けたものだ。今は慣れたが。
そして二つ目。俺、両親に発達障害か何かだと思われてたっぽい。普通のガキだったら速攻で泣きそうなことにも動じないところでそう思われたらしい。そりゃそうだよな、中身は二十歳も超えたおっさん(と言うのは言い過ぎだが)なんだから。
ま、初の子どもで不安にさせるのは可哀想だし、たまーには子どもらしい反応もしたりしてんだけどな。恥もプライドも捨てて。
で、三つ目に、これは俺が最も衝撃を受けた事実なんだが……どうやら俺は女だったらしい。
なーんかやたら可愛い可愛い言われると思ったぜ。あれ赤ちゃんだから言ってんのかと思ってたわ。
最初はショックだったけど、今はポジティブに捉えられていると思う。ホント、女に生まれて良かったよ。これで女と結ばれることはなくなった。
なんやかんやあったが、今ではもう年齢的にはJKだぜ?びっくりだわ。
「あら?おはよう##NAME1##、早いわね。暇なら店番して頂戴ね」
『ん。あでも私夕方出かけるから』
「なあに?またリンク君のところ?」
「なんだと?父さんは許さないぞ!リンク君は良い子だが、娘が欲しかったら私を倒してもらわねばな!」
『そんなんじゃないって。
なんかさ、今日から訓練兵として本格的に城の兵舎に住むらしいから。その引っ越しの手伝いだよ』
父さんも母さんも、リンクのところへ行くと言うといつもこんな反応だ。男と女の間にだって友情は成り立つんだぞ。って言うか俺心男だし。
『おうリンク待たせたな』
いつもの場所にて空を仰いでぼーっとしている金髪に持っていた袋を投げつけた。おっと、イケメンだからと嫉妬してるわけじゃないぞ。
「なんだ?これ」
『うちの店自慢の逸品 クリームパンだ。晩飯後のデザートにでもしてくれ』
「えっ…もしかして、##NAME1##が作ったのか?」
『中のクリームは俺だけど、生地作ったのも焼いたのも母さんだよ。安心して食え』
「ああ、絶対食う」
あ、今から引っ越しすんのに邪魔か。
とか思ったけど、こいつ俺の見てる目の前で袋開けてパン食いだしたぞ。なんだ話聞いてなかったのか?それとも猛烈に腹減ってたのか?
なんにしても、もうこいつにあげたものだし、俺がとやかく言うことではないが。
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