第19幕
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真っ暗な視界に、もしや私は死んだのではないかと、一瞬本気でそう思った。
右手になんだかとても心地よい温もりを感じて、すぐさま生きているんだと実感したけれど。
目を開けるとそこは村長から借りた一室で、隣にはオビトが壁にもたれ掛かるように座り込み寝息を立てていた。寝ているのに、固く繋がれた右手は振りほどくことができない。
『…ょ、ぃしょ…。……んげッ…!』
無理に手を解いて起こしてしまうのも忍びないしとそのままこっそり起き上がると、手が解かれると同時に全身に衝撃が走った。
ハグなんて生易しいものじゃない。タックルだ。
「お前はこの、馬鹿!
お前はどれだけ俺達に…!!」
オビトはそこまで言うと、さらに力強く私を抱きしめた。
肩と声が震えている。泣いてるのか。
『助けに来てくれてありがとう』
正直このまま潰されるのではと思うほど力強すぎて痛いんだけど、体格差を考えろ馬鹿という本音は飲み込んだ。
たしかに心配をかけたのはこっちだからね。
目が覚めてから1週間が経過した。
心臓の鼓動が落ち着いてはいるがいつ目覚めるかは分からないから…と、報告をしに先に里に帰ったミヤビちゃんは、捕まえた野党の引渡しや、発見された顧客名簿をもとにして、応援を引き連れ売り払われた子どもたちの救出へと向かったりしてくれていたそうだ。
それもこれも、私に回復に専念して欲しいがためのことだそうだ。自分が無力となるタイミングを把握していなかったことといい、何から何まで情けない…。穴があったら埋まりたいとはまさにこのこと。
元々傷は全て治っていたこともあり、寝返りも打たずに寝ていたことで体がバッキバキになったことを除けばもう完全に健康優良児となっていた。そして、深い眠りだったことが幸いし、あの忌まわしい感覚も、記憶に残っているため全てとはいかないが、皮膚に残っていた痺れるようなあの感じは、もう綺麗さっぱりなくなっていた。
「お姉さん、いなくなっちゃったんだ…」
お見舞いに来ていたハクア君がしょんぼりしながらそう言っていた。
オビト曰く、この一連の事件はその隣人お姉さんが野党と組んでやっていたことだったらしい。
人身売買したい野党と、子どもが笑っているのが許せなかったとか、頭おかしい略してあたおかな供述をしている隣人。
どうやら、自分の弟は小さい頃に亡くなっているのに何故お前らは楽しそうに遊んで笑っているんだと、そういう理不尽な理由らしい。
ただ、ハクア君はその弟さんに似ていたとかでつい優しくしていたとのことらしいが…。神隠しの片棒担がせておいてよく言うよ。
でも、私は最後までその人に会うことはなかったため知らないが、木ノ葉に連行される際、その場にいないハクア君にだけはごめんねと謝っていたらしい。
亡くなった弟さんに顔向け出来ないことを仕出かしたんだから、木ノ葉の地下牢でとにかく自分の罪を見つめ直してほしい。
「ミノリ……絶対、また来るんだぞ!」
『機会があったらね』
子どもたちが無事に帰ってきて、村にまたのどかな日々が戻ってきたため私達も里へと戻ることにした。
ハクア君と村長夫婦、そして他数名に見送られて蛍村を後にした。
「随分懐かれてたみたいだな」
『今まで孤独に過ごしてたからだと思うよ』
良くしてくれていた隣人もいなくなり、ハクア君は村長の元へと引き取られることになったそうだ。
仲良くなった子が次々と消えていったり目の前でボコボコにされたりと、多大なトラウマを植え付けられてそうだけれども、どうか健やかに穏やかに、そして真っ直ぐに育って欲しいものだ。
オビトと2人里に帰る道中、今回私が拷問紛いのことを受けたということは報告しないでくれと頼んでおいた。今回のことがミナトとクシナの耳に入ったら今度こそ家から出してもらえなくなる。
先に帰ったミヤビちゃんも私の意を汲んで何も言わないでおいてくれるといいんだけど…。
『あ、それと…』
オビトには新月の日のことを説明しておいた。
陽動だったミヤビちゃんはあの場にいなかったけれど、オビトにはボコボコにされる様をばっちり見られていたからね。
一通り説明すると、なるほど、とオビトは呟いた。
「でも、それを俺に言って良かったのか?」
『オビトは信頼出来るから』
他に知っているのはミナトだけだ。
リンやカカシ、ミヤビちゃんとかも信用はできるが、弱点を知る人はできるだけ少ない方がいい。
私の言葉に、オビトは照れるように頬をかいた。
里に帰ると髪を逆立てお怒りモードのクシナが待っていた…ということはなかったが、顔の穴という穴から水を吹き出してるのではと思うほど派手に泣きじゃくったミヤビちゃんがいてとてもビビったんだけど、本人の名誉のためにもここはあまり掘り下げないでおく。
私の所為で任務の難易度がおもっくそ跳ね上がったけれど、とにかくみんなは無事で良かった。
里で合流した私達は報酬を受け取りに火影邸へと向かった。