第17幕
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『そんな示し合わせたように一斉に来んでも…』
火影の身内だからか病室は個室で、そして広い。めっちゃ広い。ホテルの一室くらいはある。というか、ソファとかTVとかテーブルがあってもはやホテル。
あの小さな木ノ葉病院にこんな部屋があったとは…。
「たまたま病院の前で会ったから一緒に来ちゃった」
とペロッと舌を出すリン。
その後ろで睨み合…違うな一方的にカカシを睨むオビト。いやお前ら早いな何があったんだ。
どうやらカカシがうっかりオビトの足を踏んでしまっただけらしいが。……いやこれはわざとだな。
この一室に集まったのはミナト班の4人、ミヤビちゃんとミヤビちゃんの班員(彼らとはそんな関わりないのに何故…)、そしてイタチとミコトさんとサスケ、三代目。
クシナは…いないみたい。真っ先に来そうなのに。
みんなそれぞれお花とか果物とか持ってきてくれて、割と大きめのテーブルなのにすぐに置くスペースがなくなった。
三代目とうちは一家、そしてミヤビちゃん達は任務やら仕事やら家事やらがあるからと早々に帰って行ったが、そのほぼ入れ違いでクシナが病室へと入ってきた。
すやすやと眠るナルトを背負い、そしてその綺麗な赤い髪を獣のように逆立てながら。
『あ、クシナさ、ん"ッ"!!!』
目が合った瞬間彼女の姿は消え、目の前にぱっと現れると同時に頭に鋭い衝撃が走った。クモ膜下出血は後頭部を金属バットで殴られたかのような衝撃があるらしいけど、まさにそんな感じ。いや、それ以上。まるでダンプカーが頭に直撃したかのようだ。直撃したことないから知らないけど。
シーツに沈む直前に見たみんなの顔は、同情とか憐憫とかそんなんじゃなく、ただ恐怖一色。
やばい。これはやばい。痛いのに動けない。痛すぎて動けない。オビトは毎度よくこれを食らって生きてられるな。頭凹んでるのでは。
「ク……クシナ…?も、もうその辺にしてあげた方が…はは…。ミノリもまだ病人なわけだし…」
ピクリとも動かない私を見かねてミナトが仲裁に入ってくれたようだ。が、そこはさすがクシナ。見事なまでのスルー!
「この……馬鹿ミノリ!!」
ガバッとクシナは私を抱き上げた。
さっきの拳もこのハグも、私の事を心配してくれたが故の行動であることは分かってはいる。が、先程殴られた頭部の鈍痛にプラスしてこの勢いのハグ。ただでさえ激しく揺れた脳みそがさらに揺れて、もはや追い打ちをかけられているとしか思えない。
「何が"まだ親孝行してない!"よ!
親をこんなに心配させるなんて、親孝行どころかあんたはとんだ親不孝者だってばね!!」
クシナは泣いていた。
本当の親子じゃないのにこんなに愛してくれるなんて、だから私はこの人に死んで欲しくなかったんだ。
きっと、私はクシナやミナト、班の皆にも同じようなことが起こったらまた何度だって同じことをするけれど、それを言ったら今度こそ頭を叩き割られるんだろうな。
『……ごめんなさい』
私は賢い大人だから、素直に謝るよ。
何せ素直に謝らなかった者の末路を知っているから…。言わずもがなオビトの事なんだけど。
「分かればいいわ…。
でも、もっと自分を大事にしなさい!親より先に死ぬなんて、絶っ対に許さないってばね!」
それなら貴女もナルトを遺して死なないでくれと、ナルトの成長を天命を全うするその日まで傍で見守ってあげてくれと、そう思わずにはいられなかったけれど、確実に殴られるのでその本音は飲み込んだ。
「でも…………助けてくれてありがとうね」
クシナは私を抱きしめたまま、私にしか聞こえないくらいの声で呟いた。
『…どういたしまして』
大切な人が生きててくれるなら、頭をかち割られるくらい別にいいかな、なんて思うわけはないんだけど、未来を変えた代償が私にのみ降りかかる火の粉であるなら、きっとこの先も、未来を変えることに対して後悔せずにいられるんじゃないかな。
こんなこと、誰にも言えないけれど。
得にクシナには。