第16幕
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『ここは……』
暗い。
水浸しの細い通路がどこまでも続いている。
九尾は…クシナや他の皆はどうなったのだろうか。
考えても仕方がない。ここがどこだかはわからないけれど、とりあえず出なければ。
ひたすら通路を進む。
歩く度に跳ねる水の音だけが通路に響いた。
どれだけ歩いたか。
道のずっと先に、ここよりも暗い空間が広がっているのが見えた。
ずっと同じ景色ばかり見ていたから、新しい空間が見えたことが嬉しくて、疲れも忘れて走った。
通路を抜けるとそこには巨大な檻があり、錠のところには何やら仰々しい札が2枚も貼られていた。
もうここまで来たら全て理解した。
ここは九尾の精神世界だ。
ってことは、私も九尾の人柱力となることに成功したみたい。
檻の奥にいた大きな影がこちらへと姿を現す。
「小娘…お前、零尾じゃないな?」
ナルトの九尾よりも幾分か濃い体色は、紛れもなく陰のチャクラを持つ九尾だということを物語っていた。
さすがミナト。あの土壇場で成功させられるとは。
『私は長谷部 ミノリ。よろしくね、九喇嘛』
「貴様ッ!何故ワシの名を知っている?!」
あっ。
うっかり呼んでしまった。
狼狽えた九尾はぶつぶつと「零尾だから知っているのか?」「いや、ならば何故ワシがわからない?」「ワシをおちょくっているのか?」とかなんかめっちゃ呟いている。
いやおちょくってないから。
『あなたの知ってる零尾ではないよ。でも名前は知ってるから呼んだ。だって九尾って名前じゃないのに本人をそう呼ぶわけがないじゃん?』
私も「人間」とか「零尾」とか呼ばれるの嫌だし。みんなには伝わらないから九尾って言うけど。
だから私のことも名前で呼んでとお願いするも、華麗にスルーされた。
「小娘、ワシの知る零尾はどうした?」
『知らない。なんか平和な世界に行ったとは聞いたけど…』
「平和な世界だぁ?………フン。ワシら尾獣を捨てたようだな」
『捨てた…?待って、零尾って何なの?尾獣達と何か関係があるの?』
オリキャラだから原作には出てこないし、あの謎の声も詳しくは教えてくれなかった
自分のことなのに、別名が氷結の獣ってことしか知らないのはいかがなことか。
問い詰めたことは悪かったとは思うけど、九喇嘛は意地の悪い顔をして口を閉ざした。
『ちょっとさぁ…そこは教えてくれよ…。いいじゃん減るもんじゃないし』
「ワシに得がないな。この忌々しい札を剥がしてくれるってんなら話は別だがなぁ?」
『えー、まあ確かにこんな環境は嫌だろうけどさぁ。ダメだよミナトに殺されちゃうよ私』
というかせっかくなら仲良くやろうよ。
檻に近づいても威嚇とか攻撃をして来ない辺り、私のことを敵視してないのは分かるんだけど。
仲良くしようと伝えると、九喇嘛はその大きな口をさらに大きく開けて豪快に笑った。
「仲良くしようだと?一方的にこんな檻にワシを閉じ込めて言うセリフか?」
『何が一方的にだよ。写輪眼で操られていたとは言え、解放された後にも里の人間がどれだけ死んだと思う?
まあそいつらはどうでもいいんだけどさ、嫌いだし。でも、もし私が封印を解除したら早々に乗っ取ってナルトを殺しに行っちゃうでしょ?』
まぁ、敵意を感じないから大丈夫な気はするけど、言い淀む九喇嘛を前にすると些か不安で簡単にOKは出せない。
「…何故だ。零尾の体ではワシのチャクラを扱えぬというのに」
『えっ、そうなの?別にいいけどなんで?』
「なんだ、知らんでワシを受け入れたのか。お前は零尾よりも頭が悪いな」
『うっさいな。その零尾よりも頭の悪い私にも分かるように簡単に説明してよ』
意地の悪い笑みは相変わらずで、そのまま九喇嘛は説明してくれた。時々私をディスりながら。おぅこら絶対札剥がしてやらんからなこのやろう。
簡単に言えば、人柱力というのはその名の通り人に封じるもので、そもそも人外の零尾を人柱力にすることはできないのだそうだ。だから、これはただ零尾の体を器として九喇嘛を封印しているだけで、九尾のチャクラを自分のものとして扱うことはできないのだそう。
おそらく、ミナトもそのことは知っているっぽい?確かナルトは九尾の力を抑えるための四象封印と九尾チャクラを自分のチャクラへ還元するための四象封印の二重で八卦封印となっていたはずだが、私は九尾のチャクラを自分の物としてコントロールすることができないから、九尾の力を抑えるための四象封印を二重にして八卦封印となっているらしい。自分ではよく分からないけれど。
『じゃああなたは本当にただそこから見るだけしかできないんだね。
ごめんね』
「………」
会話するか、腹の中から見ているか。ナルトのようにチャクラの綱引きとか、暇つぶしになりそうなこともできないらしい。
やっぱり、謝らずにはいられない。意思とか人格とかのない化け物だったらまだしも、知能のある生き物なのだから。
九喇嘛は何も返事をしなかったけど、居心地の悪そうな顔をしていたからさらに申し訳なくなった。
「……もう行け。精々ワシを楽しませろよ」
『頑張るよ。これからよろしくね、九喇嘛』
『……………』
目を開けるとそこは真っ白な空間。独特な医薬品の匂いから察するに、ここは病院だろう。
『あ』
急に思い立ち、プチプチと寝衣のボタンを外してシャツを捲り上げた。
うーん。やっぱ封印式って直接書いてあるわけじゃないんだね。
服を整えベッドの脇に置いてあったサンダルをつっかける。窓の傍へと寄り外を見るも、ここからでは夕焼けに染まる空しか見えず、里の状況がよくわからない。やっぱり高いところから見るしかないよねー。
ってことで外へ出ようと窓枠へと手をかけると、バチッという音と共に電気でも流れたかのような衝撃が右腕を弾いた。音の割にそこまで痛くはないけれどとてもデジャブを感じている。
前にもこんなことがあったな。
「どこに行こうとしてるんだい?」
隠そうともせずに背後に現れた気配。何か悪いことをしたわけではないのに背筋が凍ったような気がする。
『っ…と……』
恐る恐る振り向いた瞬間、ふわっと優しい香りが身を包んだ。なんだかとても懐かしい感覚で少しむず痒く感じる。
ちょっと眠ってただけなのにこんなに心配してくれたんだ…。
でも、前よりも力強く抱きしめられてはいるけれど、なんだか少し痩せたような気がする。気のせいかな?
「……君に九尾を封印して、あれから1ヶ月が経ってる」
ミナトは私を抱きしめたままぽつぽつと話し始めた。別にいいけどちょっと恥ずかsぅえっ?!1ヶ月!!??
『わ、わぁ〜…もうなんと反応したら良いのか…』
「全く、君はどれだけオレ達に心配をかければ気が済むんだ。親不孝も大概にしてくれないとそろそろ怒るよ?クシナが」
『ひっ…!!』
その瞬間拳を握りしめるクシナが頭を過ぎった。殺される…!
『って、そうだ母さんは?!生きてる!?』
「ん!君のお陰でね!」
良かった…。感極まってちょっと涙が出た。優しく微笑んでくれるミナトに安心感を覚える。
その勢いで退院を提案したら、スンッて真顔に戻って却下って言われたけどね!
ミナトが呼んできた医者にはまだ一週間は様子見で入院しててくださいって言われたから仕方ないけれど。
「それじゃあ、また来るよ」
里の復興も半ばな上にまだ火影の仕事も山積みだとかでミナトは帰って行った。時間も遅いしまた明日皆と一緒にお見舞いに来るよと言い残して。
あ、結界は外してくれなかったので私はしばらく部屋から1歩も出られないそうです。
腹の奥で九喇嘛がくつくつと笑った気がするけど、腹立つので気づかない振りをした。