第12幕
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本当に。
こんなの所詮言い訳に過ぎないんだけど、私もカカシも、他の誰も油断なんてしていなかった。
それなのにまんまとリンを攫われてしまった。他の忍と話をしていたリンは、目の前でキモい白ゼツもどきのような姿へと形を変え、そしてキモい笑みを浮かべて地中へと消えて行ったのだ。
正直、ゼツのこの能力は原作の第四次忍界大戦の時に初めて使われたような気がするから、こんな初期の段階で使えるなんて思っていなかったというか。なんなら失念していた。
目にして初めてこいつの存在を思い出したと言っても過言ではない。
ゼツがあえてこのタイミングで姿を現したということは、きっともうリンは三尾の人柱力にされていて、私達を迎え入れる準備ももう全て整ったということなのだろう。
カカシと2人、リンの救出に向かうべく最低限の準備をし、今回の任務の隊長であるカカシに頼んでその他の忍達には撤退命令を出してもらった。目的の任務は概ね達成しているし、下手に邪魔をされても困るからね。
それに、この誘拐もわざとリンを奪還させようとしているはずだから、奪還自体はそう難しくはないはず。2人でも何とかなるだろう。
カカシの索敵スキルはさすがなもので、意外と呆気なく霧隠れの忍達の隠れ家を発見することができた。
中へ侵入すると気を失ったリンが捕らえられており、地面へと力なく倒れていた。
「リン!」
「……カカ…シ…」
『よし、とっとと退散しよう』
またすぐに追っ手がくる。
リンを里まで連れていくわけにはいかないから、適当に撒いてミナトか三代目を呼び、三尾も禁個呪の札も何とかしてもらおう。そのついでにオビトを回収出来ればいいけれど、ダメなら後で探しに来るとしようか。
リンに肩を貸しているためスピードを出せないカカシを守りつつ、追っ手を1人ずつ仕留めていくも、どんどん追っ手の数は増えるばかりだった。
あの例のちょっとした広場に出た時には既にかなりの人数に囲まれていて、木ノ葉の里まで誘導したいがために、ここで皆殺しにされることはないとは思いつつも若干冷汗が垂れた。だって三尾を連れ帰るには1人いれば十分なんだから。
となると、やはり敵はこちらに集中するわけで。
『カカシはリンを守って!!』
クナイを片手に走り出し、向かってくる霧隠れの忍の攻撃を捌きながらひたすら急所を切り裂いていく。この戦争で私は何人殺したんだろうなんて、そんなことが一瞬頭をよぎるが、護りたいものがあるから、後悔も同情も湧かなかった。
その時、たくさんの鳥が鳴くような音が耳に入りハッと振り返ると、2人を囲む数人の敵と、雷切を構えて走り出すカカシが目に入った。
『カカシッ!!!』
もう、何か策を講じている場合ではなかった。
まるで走馬灯を見るかのように時間が止まって見え、意外にも頭はクリアだ。
咄嗟に飛雷神の術を使ってリンの元へと飛び、力の限りにそのままリンを突き飛ばした。
『ッ……、…』
「ミノリ…!お前っ、なんで…!」
カカシの右腕は私の胸を貫いていた。
こんな状況でも冷静でいられるのは、きっともう私が死ぬからだろう。
『リ、ン…カカシと一緒に…ゴフッ……逃げ…』
里には行かないように、そしてミナトを頼るようにね。
恐る恐る腕が引き抜かれ、堪らず膝をつく。空いた穴と口からは大量の血が零れた。
血を吐きながらで上手く喋れなかったけれど、上手いこと伝わっただろうか。
涙を飲みながらカカシはリンを抱えて走り去ったため、ちゃんと伝わったかな。そう信じるしかないね。
あぁ、口が鉄臭くて生ぬるくて、とにかく気持ちが悪い。不愉快だ。
息が、上手く吸えない。
胸に穴空いてんだから当たり前か、はは。
リンを守ったのは私のエゴだけれど、頼むから神様、1個だけお願い聞いて。
どうかどうか。
あの3人に。あわよくばミナトとクシナも。
最上の幸福を…。
誰かの咆哮とたくさんの断末魔が、意識が遠くなっていく中で微かに聞こえた。
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