第9幕
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一日経つのはあっという間で、ついに中忍試験最終日となった。
再度ルールの確認をした後、初っ端から私の試合である。
VSモブ。
ちょっと試してみたいことがあったのでちょっくら行ってみよー。
『お願いしまーす』
たぶん……これまでの試験でほぼほぼ接点はなかったと思うこのモブ。かなり油断してくれている。何故ならこの私を超見下した姿勢をしているからだ。
なんなら超スーパーウェルカ〜ムみたいな、そのぐらい隙だらけ。
実は私、NARUTOもそうだけど結構少年誌を読むのだが、その中で見た、本来ならただのお遊びまたはいたずらに対して、うおおおかっけええええ!!!!と感動したあの瞬間を忘れられないでいる。
一生それを使う機会なんてないだろうと諦めていたが、今、丁度目の前にはこちらを油断しきった敵がいて、こちらも複数の武器を持っている。
クナイを1本取り出し、そのままホルスターの留め具は外したままにしておいた。
そもそも殺すつもりがないから、隠さなくてはいけない殺意なんてない。
最初の位置からてくてくと相手に歩み寄り、胸の前までクナイを持ち上げそして
「ッ!!???」
目の前にそっと放り投げた。
相手の視線はその宙を舞うクナイを追っているため、すかさず相手の顔の前で
パァンッ
手を叩く。
さすがに原作のように麻痺するまでには至らないものの、驚いて後ろによろめいただけでも上々。ホルスターから新たなクナイを取り出すと同時に、相手の足に自らの足を引っ掛け、かつ服の裾を後ろに引っ張りそのまま床に倒しそのままクナイを首に押し当てる。
最初から最後まで1度も盛り上がることはなく、しーんとした空気のまま勝利を告げられた。
オビトに続いて更なるブーイングをもらったが、無視を決め込んで観戦席へと上がった。
なんで盛り上げてやらなきゃいかんのよ。正直私自身中忍自体に興味ないんだ。なれたらラッキー。その程度。
「ミノリ…お前、あれはねえよ…」
観戦席へと上がってもブーイングは収まらない。なんなら班員からも言われる始末。なんで!!
ねこだましで倒されたなんて恥ずかしすぎるだろ、相手の気持ちに立ってやれよ、と、つまりそういうことらしいが…。
一理なくはないけど…。
でもそれ、そもそも遥か年下とは言え3次試験まで残った班の人間に対してあんなに余裕ぶっこいていたのが悪いと思うんだ。つまり私は悪くない。
「すごいね…ミノリちゃんには驚かされてばっかりだなぁ」
『いや〜…』
まぁ技に関しては普通に暗●教室のパクリ技なんだけどねっ!!
「おっ、次は俺の番だな!」
そんなオビトの声に、あれ?またオビト?早いなー、なーんてトーナメント表に視線を向けたことで重大な事実に気が付いた。
なんと…次の試合で私とミヤビちゃんが戦わなくてはならないのだ。トーナメント表なんてほぼほぼ見ていなかったため失念していた。そしてさらに、この試合でもしもオビトが勝ったなら、まさに我が班によるバトルロワイヤル!!決勝で私かミヤビちゃんは否が応でも同じ班同士争わなくてはいけないのだ。オーマイゴッドネス!!!!
冗談は程々にしておいてと。
オビト対モブによる準決勝戦。なかなか白熱したものとなっていて、原作での少年時代、ダサいとこしか描かれていなかったオビトが今、目の前で大したドジも踏まずに勝ち抜いたことに私は感動しかなかったよ。
ミヤビちゃんもそうだけど、これから戦うまたは戦うかもしれない元仲間である彼の成長を喜ばずにはいられなかった。この気持ちを母性と名付けよう。
「棄権します」
『へっ…?』
7回戦目となる私とミヤビちゃんとの試合は一瞬で片がついた。
闘技場の中心で向かい合い、開始の合図を落とされる直前のことだった。
私も仲間とは戦いたくないし、ついでに中忍の座に興味はないからと同じく棄権するつもりでいたのだが、出遅れてしまったがためにまた不戦勝になってしまった。
『なんで…』
「ミノリちゃんは優しいから…私のために棄権するんじゃないかって思ったから…」
うわー!!あなたのためって言うか私のためって言うかうわー!!ここはあえて何も言わないでおこう。
「なんてね。本当は、昨日の試合で今の私に出せるものは全て出し切っちゃったから、もういいかなぁって」
ミヤビちゃんは照れたように微笑み頬をかいた。
オビトや私のようにあからさまなブーイングが起こらなかったのはさすがと言わざるを得ない。キャラクターの為せる技ってやつか。
図らずも本日ただの1度さえも術を使わず決勝まで勝ち上がってしまったわけだが、オビトの連戦は不利だろうという三代目達の計らいで、決勝戦は午後に行われることとなった。
まあそりゃそうよね。昨日はシード枠だからと一切試合がなく、今日もねこだましと不戦勝ということで私にはチャクラが有り余っているのだから。
とは言え、決勝を午後に回したところで回復するチャクラの量なんてたかが知れているのでは?と思ったら、私とオビトの両方に三代目から兵糧丸が支給された。これは…前に聞いたことがあるぞ。1粒食えば三日三晩寝ずに動けるほどの興奮作用があるとかいう通称ドーピング丸だ。もちろん私はこっそり捨てた。
にしても…戦いたくないなぁ…でもオビトが中忍になるためには見せ場は作った方がいいんだろうけど…なんと言っても決勝だし。
うーんうーんと皆の輪から外れて1人唸っていると、オビトも抜け出してきて私の隣へと座った。
「絶対棄権なんかすんなよ」
じろりと横目で睨み上げられる。ななっ、な、なっ、なんでバレた!
『しないよ。ちょっとは考えたけど』
嘘です大分悩んでました。動揺を表に出さないよう冷静を装う。が、ちょっとそれもすぐに破綻しそうで、オビトの顔もまともに見られない。
すると、おいこっちを見ろよとガッと肩を捕まれ無理矢理視線を合わされた。
「俺は…本気のお前と戦ってみたい」
未だかつて見た事ないほど真剣な目をするオビト。
こいつ…こんな表情出来たんだな…。柄にもなく少しときめいてしまった。
『…分かった、約束するよ』
何があっても全力でお前と戦うことを。
試合開始の合図と共に目と全身にチャクラを流した。本気の私と戦いたいと言われたからには最初から気合いを入れていかなければ。
とは言ったものの、出来るだけ近接戦闘は避けたかった。回避だけなら得意中の得意だが、何せこの私、体術ホントだめなのよ。ましてや体術大得意のオビト相手だ。何度も言うが回避だけならできるが、そんなことをしていてもこの試験に時間制限などないのだからやっても時間の無駄なのだよ。
ミナト班での鈴取り演習の際にその事はオビト含む皆に知られているから、やはりここでも執拗に近接戦を狙われていた。
…仕方ないから、しばらく避け続けて体術は無駄ってことを理解してもらうしかないかな?
クナイを取り出しひたすら応戦する。やはりオビトの攻撃は当たらない。でも油断はしない。本気でって約束したから。
オビトがクナイを下から切り上げたため、上半身を逸らして避けた。はずなのに
ズバッ
『はえっ……』
Tシャツの前がぱっくりと切り裂かれてしまったのだ。服のはためき分も考慮して避けているのにも関わらず、だ。
油断はしていなかった。それなのに、一体何故?上半身と共に顔も後ろに逸らしてしまったため見えなかったが、腕が伸びたとしか思えない。
ともかく、今のは危なかった。紙一重ならぬ服一重だ。ちょっと回避が遅れていたら、腹から胸にかけて大きな傷ができるところだった。治るから別にいいけど。
「ちょっと待て」
『あん?』
一旦距離を置き今度はこちらから仕掛けようとすると、急にオビトからストップがかけられ出鼻をくじかれた。
「待ってやるからその格好どうにかしろよ」
『あ?いいよ別に、減るもんでもないし』
「お前忍である前に嫁入り前の女だろ!いいからどうにかしろって!」
嫁入り前て。嫁入り後もあかんだろ。
Tシャツがぱっくりいったものだから、動けばそりゃあ服がたなびいて中身が見えるわけで。でも言うて我が身は7歳児。別に見られたところでどうでもいいのだが、あまりにもオビトがうるさいので大人しくパーカーのチャックを閉じてあげた。
『はぁ…これでいいね?
今度はこっちから行くよ』
『土遁 岩石柱!!』
フィールドに柱状の岩を何本か隆起させ死角を増やす。そしてさらに
『多重影分身の術!』
オビトを囲むようにして大量の影分身を出現させ一斉に殴りかからせた。が、ひしめき合っているため一人一人がろくに避けれもしないためことごとく蹴散らされている。うーん、かませ犬と言うに相応しい散り具合。が、そのお陰でさっきのカラクリが解けた。なんてことはなく、ただクナイを持つその手の袖から仕込み刀を出していただけだった。
『火遁 火雨』
影分身の相手をしながら避けられるかな?
印を組み、オビト目掛けて火の雨を降らせた。さらに、念の為にと手裏剣影分身により追い打ちをかける。
が、そう上手くはいかないよね…。オビトも印を組み、手裏剣諸共豪火球の術で分身を吹っ飛ばされてしまった。
まあそもそも、あんな後のビジョンもない雑な技が通用するなんて思ってないよ。
「ッ…何!?」
『風遁 風刃円舞』
だから幾重も策を練っておくんだ。
影分身を出した時に、どさくさに紛れて何人かを瓦礫に変化させていた。
そいつらに羽交い締めにされるオビトに向けて風の刃を飛ばす。逃げられると面倒なのでもちろん分身体諸共攻撃をした。
「くッ……」
『…もう降参したら?』
その場に膝を着くオビトに少し申し訳なさを感じる。死なないよう術の威力は多少調整したものの、手加減と言っても所詮はその程度。服は所々焦げたり破れたりしていて、傷も決して浅くはないため周りは血塗れで見ていて痛々しい。
「ちっくしょッ…………ぜってー、嫌だ!!」
『ッ、ぅああぁっ!!!!!』
何が起きた??
何をされても避ける自信があったのは確かだ。オビトの前までのこのこと出て行ったら急に目の前で何かが弾け、眩い閃光と共に視界を失った。
閃光玉か。
かつて私が行ったことをまさか本人である私相手にやってくるとは。
ちょっとこれ今後は味方にするのは演習でもやめておこう。目にチャクラを集めて視力を底上げしていたとは言え、普通の人でもこれは失明しかねないわ。カカシ、本当にごめん。
「へへっ…形勢逆転だな…」
『つっ……へっ、どーだか。
水遁 雨乞い!』
「くっそ!
お前こそもう降参しろよ!」
『何があっても全力でお前と戦うって、約束したでしょ』
「っ……。そうだったな」
闘技場に雨が降る。
乾燥した室内のためチャクラの消費が激しいが問題は無い。
なかなか視力が回復しないため、目は瞑ったまま耳に集中する。
観客席が沸き立っておりうるさい。いや、そこまで範囲を広げなくていい。もっと近くの音に集中しろ。
ぱしゃっ
乾いた地面と違い、水溜まりなら足音を消すのも容易ではないでしょう?
17時の方向から水の跳ねる音が聞こえた。
それと同時にゴオッという先程も聞いた音が同じ方向から近づいてきたため、バックステップで避けると同時にさらに印を組んだ。
『雷遁 青天の霹靂!!!!!』
「ぉあっぶねっ!!!!」
オビトを狙って放ったもはや青天でもなんでもないただの雷も、あいつの声を聞く限り当たらなかったみたい。当たってたらたぶん立てなくなっていただろうと思うけど、当たらなかったものはしゃーない。
あとは試作段階の術だけど、丁度いいから試してみようか。
雨を止ませ、自分の巻き込みを防止するためにと足にチャクラを集めて、思い切り跳躍した。
『氷遁 絶対零度』
濡れてるものを対象に凍らせて動きを止められればと思って作ったのだが、使う機会がなくてあんまりよく性能を把握していないんだよね。
さていかに。
『…………』
周りが静かに凍りついていく音が聞こえる中で、自分が着地する音が響いた。
そんな中でオビトの気配を探るも一向に見つからない。
気配を消すのも上手くなったなぁオビト…。
これ以上粘っても膠着状態が続くだけ、か。
『はぁ…仕方ない…。
降参します』
手を挙げて降参を宣言するも、如何せん目が見えないためキョロキョロと審判を探してしまう。
「長谷部ミノリの降参により…………うちはオビトの勝利!!」
『はー…強くなったねオビト』
正直めっちゃ悔しい。もっと圧倒的な勝利を収められると思っていたのに、まさかこんなにも苦戦を強いられるとは。
でも、仲間の成長を身をもって実感することが出来たんだからイーブンってとこかな。
何となく少年漫画よろしく熱い握手をしたくて出した手をさ迷わせていると、オビトではない別の声が近寄ってきた。
「ミノリ、今すぐその術を解かないとオビトが死んでしまうよ」
『オビトが死んっ……へ?』
「君が最後に使った術で、今オビトは生きたまま氷漬けになっている。早く術を解くんだ」
『あっ、はい!!』
慌てて術を解くと、パンッと一斉に氷が砕け散る音が聞こえた。
後から聞いた話だが、私の術によりオビトが完全に氷に飲まれるにはやや時間があったらしい。必死で抜け出そうともがくオビトに、もしかしたら脱出できるのではないかという空気に会場全体が包まれていたとかでストップが遅れ、結果的にオビトは生き埋めになってしまった上に私が降参をしたのだと。
オビトは全身に火傷を負った上に皮膚を切り刻まれ、そして氷漬けにされたことによる凍傷もプラスされ、何気に結構重症らしく木ノ葉病院へ入院となった。
ちなみに私の視力はその日の夕方には元通りになった。
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