第8幕
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目が覚めると、どこかの家の一室に1人寝かされていた。
暗い部屋の中、窓から差し込む光はもう夕方であることを示していた。
そんなに気を失っていたのか…。
『うっ…』
先程のことを思い出し、堪らず口に手を当てるも出てくるものは何もなかった。
「ミノリ…?大丈夫?」
私の呻き声が聞こえたのか、控えめに襖が開いてリンが顔を覗かせた。ごめんと謝ると中へと入ってきて私の横へと座る。
あの後はミナトとカカシが他の奴らを倒してくれたらしい。そして倒れた私をミナトが担ぎ、ついに波の国に辿り着いたというわけだ。
護衛任務も終わったからと、また私を担いでそのまま里に帰ろうとしたらしいが、セイルさんに引き止められてこうして家にお邪魔しているとのことらしい。
そっか…私足でまといにしかなってないな…。
俯く私の顔をリンは覗き込む。
「どうしたの?……聞いてもいい?」
『………。
さっき…野盗を刺した時の感触が頭から離れなくて…』
「………」
『私……人を殺しちゃったんだなって…』
第三次忍界大戦勃発中の今なら、忍でないただの子どもでさえも人を殺めなくてはいけない時がある。忍である私達は尚更なのだから仕方がない。それも踏まえて生きていかなくてはならないのだ。
そうリンは慰めてくれたけれど、日本という平和ボケした世界で暮らしていた私には大きすぎる壁だった。
テレビや本で紛争地域の話とか、戦争の話とかもよく見たり聞いたりしたけれど、それもどこか遠くのことだと認識していて、結局は他人事でしかなかったのだから。
『リン、ごめんけど1人にして…』
「…うん…」
最後にリンは一度だけこちらを振り返り、そして部屋を後にした。
申し訳ないけど、頭では仕方がないことだと分かってはいるけれど、どうしても簡単に納得できることではないのだ。
がらっ
「ミノリ」
『オビト…』
リンが戻ったと思ったら勢いよくまた襖が開いてオビトが入ってきた。
「お前、さっきのことで落ち込んでるんだってな」
『………何しに来たの?』
「礼を言いに来たんだ」
お礼…ときたか。
リンには1人にしてほしいと頼んだはずだったのに。まあいいや、何のお礼かは知らないけれど、さくっと聞いてご退場いただこうか。
『……聞くよ』
「…後悔してんのか?」
おいお礼が言いたいんじゃないのか。
オビトはどかっと私の隣に胡座をかくと、先程のリンと同様私の顔を覗き込む。
「あの時…目に砂をかけられた上に体勢も崩れてさ、正直死を覚悟しちまったんだよ、俺。
お前がいなかったら……あの時…お前がクナイを振り下ろしていなかったら…俺は死んでた…。だから、その…ありがとう」
『でも…』
「殺したくて殺したんじゃなくて、俺を助けるために仕方なかったんだろ?
救われた人間がここにいるんだから…そいつを目の前にして後悔なんてするなよ」
でも、そうは言っても、もっと他の方法があったのではないか。私がもっと要領良く動けていれば、もしかしたら殺さずに済んでいたのではないか…。…なんて、甘い考えだってことは分かってはいるのだけれど。
「あー!ったく!!」
『ぃでっ!!』
ごんっと項垂れる後頭部に鈍い痛みが走った。言わずもがなオビトである。殴った腕をぶんぶんと上下に振って呆れた顔をしている。いや痛いのはこっちだ馬鹿野郎。
「お前が何考えてんのかは知らねーけど、俺はこれだけは言える。
何かを守るためには何かしらの犠牲は必要なんだ!その犠牲を払う覚悟もないなら忍なんて辞めちまえ!」
『………』
そんなことをオビトに諭されるなんて思いもよらなくて、つい拍子抜けしてしまった。どれだけアホな顔になっていたことだろう。
『ふっ…』
「…なんだよ」
『てっきり慰めに来てくれたのかと思ったのに、ド正論突かれた挙句に怒られるとは思ってなかったから…っくく』
なんだか考えていた私が馬鹿らしくなってきた。
そうだね。私はまだまだ弱いから、殺さないという選択肢を作ることさえも出来ないのだ。
ここはNARUTOの世界。日本じゃない。110番したら警察が駆けつけて助けてくれるような世界じゃないのだから。自分の身を、そして大切な人を守りたいのなら戦わなくてはならないのだから。
『ありがとう、オビト。
私、無駄に人を殺さなくても済むようもっと強くなるよ。
あと、どうしても殺さなくちゃいけない時も、それは誰かを守りたい時だけにする』
「……。
別に!俺を助けたことを後悔されちゃ堪んねーからな!」
『ふふふっ、ありがとね』
今更後悔なんてしても仕方がないと、リンとオビトが教えてくれたから、私は立ち直ることができた。でも、決してこれは敵の命を軽んじているわけではなくて。
私の、新しい決意なんだ。
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