第1幕
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「ん、着いたよ」
『あ、はい』
顔岩を見るにここは木ノ葉の里だろう。
アニメや漫画での里とは建物の雰囲気とか様子がだいぶ違うけどそれは間違いない。…はず。
ミナトは移動中一切喋らなかった。
移動と言っても、飛雷神でぴょんぴょん飛んでただけだけど。
本当は色々聞きたかったけれど、私から話しかけるのがなんだか癪だったため、入れ替わり立ち替わり変わる景色に目を奪われているフリをただひたすらしていた。
少し歩くからついてきてね、とミナトは微笑んで、私のこの短くなった歩幅に合わせて歩いてくれた。
あぁ、なんて紳士なのだろうか。
どうせなら目的地まで飛雷神使えばいいのにとか思ったけど言わないであげよう。
―コンコンコン
建物の最上階の部屋をノックしたと思えば、返事が返って来るや否や背中を押され中に入れられた。
閉まりゆく扉の隙間から、無情にも綺麗な笑顔で手を振っていたミナトの姿を私は一生忘れない。忘れない。
『ちょ、待っ…!』
「そんなに堅くならずともよい。
お主が長谷部 ミノリじゃな?」
『ぅおわぁ!…あ、すみません…。そうです…』
完全に意識をミナトと扉に向けていたため、中にいる人物に全く気がつかなかった。
窓際に立って外を眺めているその人は、ゆっくりこちらを振り返り微笑む。
「いきなり連れて来てすまなかったのぅ。
ワシは三代目火影、猿飛ヒルゼンじゃ」
『…ほ、ほかっ…火影…』
「一応保護ということになっておるんじゃが、怖がらせてしまってすまんのぅ」
『あ、いえ、そんなことは…。
…えっと‥あのっ、』
口を開いておいてなんだけど、聞きたいことが沢山ありすぎてうまく言葉が纏まらない。
なんで私のことを知ってるのかとか、ミナトが私を連れて来た理由とか、そもそもなんで存在しない漫画の人物と話をしているのか、とか。
聞いていいこと悪いことが分からないから開けた口を閉じる他ないけれど。
『ぃえ、なんでもない…です…』
三代目はそんな私を見てふぉっふぉっふぉと笑う。
何故だか、たったそれだけなのに安心出来る。これが火影のなせる技…か。ってやかましいわ私。
「今日は夜も遅い。話はまた明日、日が昇ってからにするとしよう」
『あ、でも…』
「落ち着くまではワシの家にいなさい。
着るものも食べるものも、必要なものは全て用意させる。
それがお主をここへ連れて来たワシ達大人の責任じゃ」
『…あ、の…ありがとう…ございます…』
もう色々とわけがわからないので、適当に相槌をうって後は全部三代目に任せることにしよう。
とんでもなくでっかい屋敷に連れて行かれると、速攻でお風呂場に連れて行かれた。
どこの温泉旅館だよと思うほど馬鹿でかい湯船に驚いたけど、火影の家ならそりゃ当たり前だと一人納得。
『お湯………普通だ…』
てっきり、シャワーとかはなくて桶で自分ですくって使わなくてはいけないとか思っていたけれど、全然そんなことはなかった。
どでかい湯船を全力で堪能してから上がると、脱衣所には先ほど脱いだミナトのベストの代わりに子ども用のパジャマが置いてあったのでそれを着る。
てか、何で新品の子ども服をポンと用意出来るのかな。火影の権力ってやつか、すげえや。
脱衣所から出て廊下を少しさ迷っていたら、偶然出会った女中さん的な人が、一人部屋とは思えないくらい大きな部屋まで案内してくれた。
「すぐに料理をお持ちしますので、座ってお待ちください」
『あ…いえ…すごく眠いのでご飯はいいです。すみません…』
「分かりました。ではそのように致します」
早く布団に入りたかったので助かった。
眠いとか言ったけど実際はそうじゃなく、この現象についての説明が欲しいからとっとと朝になってほしいだけなんだけど。
電気を消しながら、今日は色々あって疲れたなぁ…なんて呟き、既に敷かれていた布団に潜り込んだ。
異世界トリップだなんて今まで何度想像したかももう分からないけどさ、ちっちゃくなってだなんて聞いてない。どこの名探偵だよ。
高そうな布団に包まれ、すんなりと安らかな眠りにつけそう。
微かに残った意識の向こうから「ぜひ楽しんでね」なーんて声が聞こえた気がするけど、きっとそれは夢の中でのお話なんだ。