第31幕
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『なるほどね…』
やっぱり暗部って大変なんだな。
基本的に休日というものがなく、招集されたら即仕事、みたいなスタイルらしい。私ならば1週間で辞めてるね。
まぁ今でも火影の身内であるが故に割と休日出勤を強いられてはいるけど、それが毎日になったら……あぁやだやだ、考えたくもないね。
他にも同僚や後輩の愚痴をだらだらと1人で語るカカシ。私はおつまみやらご飯物なんかを食べながら適当に相槌をうっているわけだが、そんな雑な相槌でも聞き手がいるだけマシだとでも言うかのように、どんどんカカシはヒートアップしていく。
さらに言えば、愚痴の勢いが増すのに比例してカカシの酒の減りも早くなってきたため、グラスが空になる度に店員へ新たなアルコールを注文しては飲ませるというようなことを繰り返していた。
「いや〜、でもミノリに聞いてもらえて結構スッキリしたなぁ」
『そう?良かったじゃん』
話している内容は愚痴とか文句でしかないってのに楽しそうに話しなさる。
だいぶ顔が赤い。普段のカカシからは想像もつかないほど陽気になっているところを見ると、相当酔っているようだ。終始にこにこしてるし、なんなら背景に可愛らしい花がぽやや〜んと飛んでいるのが見える気がする。
『そんなに人に聞いてもらいたいなら早く恋人でもなんでも作んなよ』
「え〜、俺だって恋人になってほしいけどさぁ」
『え?ん?何その言い方。既に好きな人がいるみたいな言い方じゃん』
「ふふふふふ」
うふふじゃねえ。
てか初耳なんだが!?誰だ!リンか?!いやでもリンには悪いけど私はカカリンよりオビリン派だからちょっと複雑なんだけど!!
いやもしかしたら紅とかその他の同僚とかかもしれないし、変な憶測はまだ立てるべきではないかもしれな…ってその肘ついて手のひらで頬を包むポーズやめて欲しいな腹立つから。
『なんでそんなにこにこしてんのよ…』
どん引きが顔に出ていた自信があるけれど、カカシは全く笑顔を崩すことなくこちらを見つめる。こわっ。
陽気過ぎて怖い。でも酔いが冷めた後の姿を見たい気持ちもある。でもやっぱ怖いなこのテンションの差。
カカシの笑み…というか視線が気まず過ぎるため、逃れるようにグラスに手を伸ばす。ウーロン茶を飲みながらちらりとカカシを盗み見れば、案の定しっかり目が合ってしまったし、次の瞬間奴はとんでもないことを口走った。
「好きだよ。ミノリのこと」
『……………?
…………ふぅ……。
………は?』
耳を疑ったね。
聞き間違いである線も考慮しつつ、一旦落ち着くためにもう一口ウーロン茶を飲んでからグラスを置き、さらに一息ついてから聞き直した。
「だから、俺はミノリのことが好きなんだって」
『はっは、寝言は寝て言え』
「寝言じゃないから。俺はお前に恋人になってほしいのよ」
聞き間違いじゃなかった。なんなら寝言でもなかったしさらに追い討ちをかけてきた。
ちょっとこの状況が理解できない。というかしたくない。意味が分かんない。誰か助けて…。この状況をどうにかしてくれ…。
『えっと…それ、酔ってるから言ってるだけでしょ…?冗談だよね?』
「冗談でこんなことを言うわけがないでしょーよ。
俺はお前が好きなの。好意を向けてるんだよ。
……お前は俺の事を嫌ってるかもしれないけど」
『うん』
「ねぇちょっとそこは否定しようよ俺泣いちゃうよ」
なんか、こう話してると原作のカカシっぽいかも。てことは根底が陽気なんだなきっと。
って違う違う違う違う。そんな分析している場合じゃないのよ今は。
ずーーっと笑顔を絶やさずに見つめてくる辺り、返事を求めているわけではなさそうだが……。っていうか返事云々の前に、まずこの状況を信じることができないんだけど…。
『自分で言うのもあれだけど、ぶっちゃけ人に好かれるような性格をしてないじゃん?私。今までもこれからも、ずっとそういうのとは無縁だと思ってたし…』
正直な話、これよ。
色々な人と関わってきたし、割と皆とは良い関係を築けていたとは思う。でも、こんな別の世界で恋愛的な意味で好意を持たれるとかさ、なんだか夢小説みたいじゃないか。…まぁそもそもの話、この異世界トリップ自体が夢小説だとか最近流行りのなろう小説みたいだが…。
「ま、なーんでお前なんかに惹かれちゃったんだろうって思うことはあったよ」
『喧嘩売ってんなら買うが??』
「そういうとこ、可愛くないヨ」
ややムッとしながらこちらを指さして奴は言った。人を指さすなこのやろー。
いくら酔って陽気になったとは言え、やはりカカシはカカシのようだ。皮肉の1つや2つ言わないと気が済まないらしい。
『だからなんでお前がそういう風に言ってくるのかが至極謎。冗談にしては面白くないね』
「だから冗談じゃないって」
カカシは何か考えるように視線を斜め下に逸らしながらさらにグラスをあおった。おいおいそれ以上飲むな飲むな。
「んー………ミノリがうちの班に来てすぐは大嫌いだったんだけどなあ」
『あぁ、嫌われてる自覚はあった。
そこから何があったんだろうね??』
「きっかけ………は、オビトと再会した時だったか…。俺の雷切に突っ込んできたあの時」
いや、なんで?
てかなんで皆してそんな痛い記憶を掘り起こしてくんのさ。いや別にもう完璧に完治してるから痛くも痒くもないんだけども。オビトもカカシも引きずりまくりでしょ。いい加減忘れればいいのに。…なんて、きっかけを作った張本人の私が言うことではないのだけど…。
『血塗れの私に惚れたってこと…?何それこっわ』
「少し違うな。
口は悪いけど仲間思いで献身的で、男の俺なんかよりもずっと勇気があるし度胸もある。
あと、たまーに可愛いところがあるとこに、かな」
『っ…、』
カカシの口からまともな褒め言葉が飛び出てくるとは思わず、言葉に詰まってしまった。顔に熱が集中するのが分かったがどうにもならない。
「照れた。そういうとこ」
『お、前っ……!』
なんだかこの状況がとても悔しいから、少しでも凄んでやろうと睨むけれど、今のカカシには全く効果がないようだ。くそ、この酔っ払いめ。
改めて、酒の力は凄いと思う。
シラフだったら絶対こんなこと言わないだろうに。こんなことならあんまり飲ませるんじゃなかった。
『も、もうお開きでいいでしょ!』
愚痴を聞いて欲しいって言われたから聞いてあげてたってのに、話の路線が完全に変わってしまっている。そんなら別にこれ以上聞いてあげる必要も無いだろう。
それに…こんなに酒にのまれた人間の言うことなんて深く聞くべきじゃない。酔いが覚めても同じことを言っていたら真面目に返事しようとは思うけど。
「う〜んふふふふふ」
『だからうふふじゃねえのよ』
さっきまでちゃんと日本語を話していたのに、途端に笑顔で誤魔化すのやめい。
こんな状態になってもまだ酒の入ったグラスを掴もうとするものだから、強引に引ったくってカカシの手の届かない所へと遠ざけた。
愚痴を聞くどころではなくなったため、まぁお腹もいっぱいになっていたしとお会計を済ませて店の外に出る。
さぁ早くカカシと別れて家に帰ろう。
今のこのネジが吹き飛んだ状態のカカシと長居するべきではないと、私の頭の中で警鐘が激しくうち鳴らされている。何かとんでもないことが起こる…そんな嫌な予感がする。
『っておいおいおいおいおい!!お前!何やってんだよもう!』
ガシャンという音でハッと意識を戻された。
音のした方を見ると、カカシがゴミ置き場にぶっ倒れているところが目に入った。
とっとと家に帰って風呂入って寝たかったのに。
嫌な予感…というかもう既に嫌な状況ではあるが、更に酷いことが起こりそうな気はするも、こんな状態のカカシをこのままゴミ置き場に打ち捨てたままにしておくのも気が引ける。
仕方ないので倒れたカカシへと肩を貸し、大変不本意ではあるものの家まで送り届けてやることにした。
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