第30幕
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「監禁されていた薬師達は解放したし、誘拐事件が解決したこともあたしが復帰したことも、真実を全て国中に伝えたからきっと今頃は皆混乱しているかもしれないわね」
と聞いたのが一昨日の話かな。
城のベランダ(イバラ君曰く
「あらやだ、ちょっと待ちなさいな。
貴方達ったら何なのその野暮ったい格好」
木ノ葉に帰る前日、どうせならいつもの花の国を見ていってくれよとイバラ君に誘われ、せっかくだからとカカシと共に出掛けようとしたところをケイキョク様に止められた。
郷に入っては郷に従いなさい?とのケイキョク様の発言後、カカシはケイキョク様に、私は女中さんにとそれぞれドレスルーム的なお部屋に連れていかれ、あれよあれよという間に着物を着付けられ、髪型やら化粧やらも施されてしまった。
聞いていい?何故女物の着物があるんだ。
『おー!カカシ和装似合うじゃーん!ってあれ?どちら様?』
カカシと待ち合わせていた城門の前にはカカシともう1人、和装の可愛らしい女性が立っていた。女中さんにしては服装が豪華な気がするが。
「ははっ!やっぱそういう反応だよなー!オレだよオレ!」
『ん?もしやその声は…我が友、李徴子ではないか?』
「いや誰だよ。オレ!イバラ!」
『嘘嘘、ごめんごめん分かってたよ』
と言いつつも、実は声を聞くまで全く分からなかった。イバラ君だと聞いてしまえばそんな面影もあるようなないような…って感じだけど、昨日までのあんな平民ぽい感じの服装からはとてもじゃないけど連想できないよね。
てかなんで女装してるんだろう。お父さんであるケイキョク様の影響なのかな。似合ってるし人の趣味にとやかく言うつもりはないけど。
なーんて考えてたら、カカシにこっそりと
「気付いていないようだから一応言っておくけど、この子、女の子だからね」
と耳打ちされ、疑問符を浮かべるイバラ君とカカシの顔を交互に見比べてしまった。
だから女性物の浴衣やらなんやらがぽんと用意できたのか…!!金持ちマジックかと思ってた…!!!
声が高めなのもまだ声変わりしてないからなのかと…。
「さっ!じゃあ花の国の観光といこう!」
まずは後ろをご覧下さい、と示されたのは今私達が出てきたお城。確か "枸橘城" だとかいったっけ。もうこの1週間でだいぶ見慣れたものだ。
「正式名称は枸橘城なんだけど、花々が四季問わず咲き乱れる様子から国民には "
父上もオレもそっちの名前の方が気に入ってるから、2人にもそっちで呼んで欲しい」
本当は城の中にも観光スポットがあったらしいが、この間の騒動で焼け野原…とまではいかずとも、ちょっとまだ修復中で人にはお見せできないような状態になってるとかで断念。……焼け野原って、それ主にというか100%私のせいじゃね?
ニコニコと花の国のお話をしてくれるイバラ君を見てると、本当にこの国が大好きなんだなぁと感じる。笑顔が明るくて可愛くて、話を聞く傍らでついカカシと顔を見合わせ笑ってしまった。
「あっ、そうだ。オレちょっと寄りたいとこがあるんだ。悪いけど、あとは2人で適当にやっててくれ」
ある程度の観光を終えるとイバラ君は途中でフェードアウトしてしまった。
今まではケイキョク様の命令で国内の薬屋に更なる薬学の知識を伝授すべくホームステイ(という建前の下身を隠してた)していたようだが、かやつり投獄に伴い身を隠す必要もなくなったとかで、城への帰還前に全ての知識を共有していこうと、そういうことらしい。
……えーっと……。……イバラ君が教える立場だったのね??
私はてっきりイバラ君が……いや、そうだよね、普通に解毒薬とか作ってたもんね…そうだよね…。
「そういえば言い忘れてたけど」
『うん?』
イバラ君と別れて割とすぐ、川沿いを商店街に向かって歩いていると、川の流れをぼーっと見つめながらカカシがふと口を開いた。
「着物似合ってる」
『…………は?』
予想だにしていなかった言葉をかけられたため聞き返してしまった。…というか、聞き返しつつ空気が漏れつつ、みたいな。びっくりして言葉が出なかった。
「いや、は?ってお前さ…」
『え、だってほら……何急に?』
「別に。似合うと思ったから言っただけだけど」
なんだこいつ…とでも言いたげに眉間に皺を寄せながらこっちを見ないでほしい。こっちがその表情をしてやりたいぐらいだわ。
自分がどれだけ似合わないセリフを吐いているかを自覚してほしい。もしかしてあれか?最初会った時に私がカカシの着物姿を褒めたからお返し的な?そうっぽくない?この感じ。
まぁ何にせよ、あんな反応はしてしまったが褒められて悪い気はしないので一応お礼は言っておいた。
「あの…」
大きめのお土産屋さんで皆へのお土産を物色していると、カカシがそれはもう可愛い女の子数人に声をかけられているのが目に入った。これはもしかしてもしかしなくてもナンパというやつでは?
面白いのでそっと距離をとってその様子を観察することにした。にしても、あんなに怪しい風体してるのにナンパだなんてさすがとしか言えないね。
「お1人ですか?」
「あぁ、いや…」
「もし良ければ私達とお茶でも…」
この状況にあったのがオビトだったならば、きっと浮かれるかたじろぐかのどちらかであっただろうけれど、そこはやはりさすがのカカシ。一人一人に紳士的な対応をしている。
まともな人間だったならば1回断られた時点で諦めるだろうが、私は知っている。ぶちギレられるまでしつこく言い寄る人種もいるということを。
ちなみに彼女らは前者でしたとさ。まる。平和的な解決だったね。つまらないの。
彼女達が退散した後でカカシと合流すると、どこ行ってたんだよとただでさえじとっとした目をさらにじと目にされた。連れがいようといなかろうと引っ付いてくるやつは構わず引っ付いてくるのだから、私がどこにいるかなんて関係ないのにさ。私のせいみたいな目で見ないでほしいね。
絶対ないとは思うけど、もしカカシがついて行ってしまっても、ぶっちゃけ私はそれでも構わないし。
「未成年なんだから酒なんて買うんじゃないよ全く」
『私が飲むわけじゃないからいいんだよ』
「ミナト先生?あの人酒なんて飲むんだ」
『いや、三代目にと思って』
ミナトには飲ませちゃいけない絶対に。身内の醜態を広めるのもあれなので敢えて教えはしないけど。あんな悲劇二度と起こってはいけない。
さて、私が先程購入したこのお酒 "
他にも何件か店を回り、髪飾りやお菓子、化粧品などなど、皆へのお土産をたらふく買い込みそろそろ帰路に着こうかというところ。本当はもっと食べ歩きとかしたかったけど、いつでも遊びに来れるようにと城に飛雷神の術式も仕込ませてもらえたし、また今度皆を連れて来ればいいよね。
「お姉さん、もしかして1人?」
『うん?』
カカシが飲み物を買いに行ったからと街路樹の傍で待っていたらふいに声をかけられた。誰のことか分からなかったので最初は無視していたけれど、挙句無理やり顔を合わせるように真正面に回り込んできたためやっと私のことだったのかと気付いた。
もしやこれは…ナンパ!!!うける!!!!
「もし良ければこれからお酒でもどうかな?俺美味しいお店を知ってるんだけど」
『申し訳ないけど私一応未成年なので』
「あっ、そうなんだ!大人びてるからてっきり…。じゃあ一緒にお茶でもどう?」
『帰ったら美味しいご飯が待ってるのでそれもちょっと…』
初めてナンパされたけど……正直うざいな。
断っても断ってもあまりにしつこいものだから、温厚と名高い私もさすがにイラついてきた。カカシへのナンパを面白がって傍観していたツケが回ってきたようだ。
後半は完全に無視していたのだが、 如何せんやめないめげない諦めないんだこの人。顔は………うん、まさにモブ。モブの中のモブ。イケメン達に囲まれ…とか言うと語弊を招きかねないが、とにかく私の周りにはイケメンが多いものだから、とりあえず彼らとは比べてしまうよね。
「っお前!ちょっと可愛いからって調子に乗るなよ!」
『わ、教科書通りの煽り方』
ついには声を荒らげ私の腕を掴もうとするものだから、ついひょいっと避けてしまった。さらに逆上するだけなのにやっちまったぜ。
「この…!!」
「あのさぁ」
私に向かって振り上げられたその腕は、男の背後から伸ばされた腕に捕まれ振り下ろされることはなかった。
気付けば周りにはちょっとした人集りが出来ている。
「まさか大の男が女の子を殴ろうとなんてしてないよねぇ?」
「なッ…んだよお前は!そもそもこの女が先に…!」
『先に何?私何もしてないんだけど?』
圧倒的責任転嫁!強いて言うならめちゃめちゃおっそいその手は避けたけれど。
「だいたい、急に出てきて何なんだよ!」
「別に。あんたこそ俺の彼女に何しようとしたわけ?」
『ん?』
誰がお前の彼女だ。
と出かかったけれど、さすがに私もそこまで空気読めなくはないので黙っておいた。
ただし、さりげなく肩を抱いてきた時にはついカカシを睨みあげてしまったが。
一部始終を見ていた外野の声もあり、男は罰が悪そうに立ち去って行ったが、私の肩を抱く手は未だ離れようとしない。なんならそのまま城に向かって歩き出した。
聞けば、また絡まれるよりかはいいだろってことらしいが…。…まぁ確かに…彼らの相手は正直面倒だったからな。不愉快ではあるが、お互いナンパ避けという利害が一致したためそのまま城までの道のりを歩いていった。
まぁ、漫画だしこういう少女漫画みたいな展開が起こることだって無くはないだろう。仕方がないね少年漫画だけど。
翌日里に戻った時に聞いた話だが、もともと大名同士が友人同士だからと交易はお互い行っていたそうだが、今回のことがあり、更に貴重な薬や素材を卸してくれることになったのだそうだ。それも他国への卸値と比べて格安で。
私には直接関係のないことだが、ミナトが喜んでたし、いつでも遊びに来てくれと大名子息…じゃなくってご令嬢とも友達になれたので良かったと思う。
今度は皆で遊びに行かせて貰おう。